御前報告
意識が朦朧としたが怪我も幸いに命に別状無しとの診断が下されたイグサです。(気を失った記憶はないのですがそう言う事にしておきます)ただし、裂傷多数凄い痣になった打ち身、着地時に手首を捻って(無意識)着いてしまっていた為の捻挫、頭にも少し傷があったので(反動で階段に当たった?)包帯を巻いて手も吊っている(こちらに三角巾は無かったので大判の布をもらい自力で製作)見るからに満身創痍である。(血でも滲めばもっと悲惨に見えて同情票が増したのに逆巻け毟って血でも出してやろうか!)
しかしこの姿で王の御前に引き摺り出されるとはちょっと予想外。
立てないので(大怪我装ってますので)エリオット君に抱っこされて移動する事はもっと予想外。(誰か助けて恥ずかしい)歩けるのホントは歩けるの〜!
誰が私を王の執務室迄運ぶのかという段階で、何故かビシビシと火花が散ってボルゾイ達はある圧に負け早々に撤退を余儀なくされた。
その圧を出していたエリオット君と、総団長様の一騎打ちで双方一歩も引かず時間が流れた。
王に呼ばれているのに膠着状態長い!
もう私歩きますと叫ぼうとした時に
痺れを切らしたアンナちゃんが恐れながらとズイっと出て、
「イグサ様の護衛はエリオット様なので」
とやんわり総団長様を退け、私のお姫様抱っこ移動はエリオット君になり、先導を総団長様がする事にどうにか落ち着きました。先導ってねぇ‥いや本来なら別の誰かにおんぶしてもらいエリオット君が警護しながら先頭を総団長に移動が正解では?という疑問は言う間も無く気付いたら抱っこされておりまして‥(本城までは馬車です)降りてからずっと抱っこで…いたたまれないヨォ〜重いよねここで降ろしてー。
未だ憮然としている総団長様は私の部下の失態だからと馬車を降りた時点でもゴネたけど、アンナちゃんがキリリとした態度で理路整然と担当者に護衛任務を遂行させてくれ、護れなかった悔いはエリオット君が一番感じているのだと言って、私もお側にいたのに何も出来ず悔しかったのですとさめざめと泣けばフェミニストの総団長様は引くしかなかったのよね。
アンナちゃんが勝者になりました。
そんなやりとりを聞いた私は、どん底まで自分勝手な我が行動をこれでもかと反省中でございます。私の行動はエリオット君もアンナちゃんも無視したものだった。ただ私が納得できる仕返しが出来れば良かった。それだけだった‥
執務室までの長い廊下はエリオット君の顔を見れず、アンナちゃんの甲斐がしいサポートにも目を伏せ小さな声で感謝を述べるだけに終わった。猛省中です。
少し遅くなったが到着した執務室へ入った途端に、大怪我を負った女というビジュアルはこの国の王にはかなりの打撃を与えたらしいのが顔からわかるぐらいの動揺が見て取れてしまったし、声も出ませんかね?
ゴメン王様の事すっかり忘れてました。
ソファにゆっくりと降ろされて顔色の悪い(恥ずかしすぎて嫌な汗が出たためゲソってるだけ)私に対して憐れみと共に、すぐに鋭い眼となり探るかの様な視線となったのを確認して、王たるものの威厳には少々ビビるが負けてはいられない。
王がクイーンの術中にはまっていたら私が消される!
私のした事(バカを嵌めた)がバレても消される!
でも私を呼んだこの国の態度、いつ迄経っても宙ぶらりんな隠された異世界人。
バカに狙われ続けるのはもう沢山!
それがそもそもこの作戦の根本である。
どんな酷い扱いをされても、私はかなり友好的にこの国に役立つ事をしている自負はある。なのにバカ騎士は私を敵認定しているどころか、抹殺しても構わないと思っている節がある。
王がそれを指示しているのならここで私は終わりだ。裏で糸を引く奴の炙り出しも計画の結果は即破綻に繋がってしまう。
(バカの)個人的な恨みからか?誰かからの指示だったのか?聞き取りをキッチリとしてくださいね。と総団長様にはお願いしたのに、まさか御大の王様が直々に出て来るとは思わなかったよ。
それも事件直後の今日のうちに呼ばれるとは予想外に、会えたのがラッキーと出るかアンラッキーとなるか‥
それにしても怪我人を呼び出すとか何気王様酷くない?
もう殆ど痛くないけど‥
*** ***
抜刀事件の時に、
「第二王子様の指示なんてまさかありませんよね?」
と鎌かけて宰相様に聞いたことがあった。
事件の陳述と一緒に上司の指示か、若しくは側近及びあの女性の指示ではないか?知りたかったのだが、その辺りも十分調べて欲しいと宰相様に募ったのにその後の報告はいつまでたっても無かったし更なる付き纏いはあった訳で‥結果私はこの事件を起こさせた。
まさか第二王子ではなく王様から呼び出しとは、ちと目論見がズレたか?
いやこれで御大登場ならば私はこのまま闇に葬られるかもなわけだから、いつそれが来るのかとビクついて待つより行ってまえ!だよね。
総団長様から件の異世界人で今回の事件当事者だと説明をされ経緯の説明をと発言を許された。
「私はこの国に異世界から召喚されてまいりましたイグサと申します。召喚した異世界人は二名だったとご子息‥第二王子殿下から聞いておられると思いますがそのもう一人の方です」
「もっ‥勿論知っておる」
「召喚されてからだいぶ経ちますが、お初にお目にかかります‥ですね」
あぁ?私の嫌味に目が泳いでたぞ?
もしや息子(第二王子)からは何も聞いていなかった?でも宰相様からの報告はギリ受けていたが忙しくて私の事なんて忘れてたって感じか?
さらに発言しても?と了承を求めれば良しと出たので、
「今回の事件は、この国の第二王子付き近衛の方に召喚直後より幾度にも渡り暴行、怒号、脅し、抜刀の暴力を受けておりましてその都度こちらの宰相閣下に対応をお願いしておりましたがご報告はご覧になりましたでしょうか?」
「ん‥いやその」
「あー、お忙しい陛下にはたかが一介の異世界人の暗殺など気に留める件でも御座いませんでしたね」
「‥あん‥さつ」
「何も解らず突然召喚され、直後から蹴り倒され肋骨を折る様な大怪我をさせられました。この世界は異世界人が二人来たら一人を残して余計な異世界人は消すのが常套なのでしょうか?」
「そん‥な事は」
「その後もあの近衛の騎士様に付き纏われ嫌味の連発に脅迫、とうとう城内の廊下にて斬り付けられたのでございます。ここに控えるアンナ嬢に手を借り命からがら逃げてどうにか助かりました。
そして本日シオノギ門にて日課の散歩中にいきなり胸倉を掴まれ、階段下に放り投げられましてこの様な姿となりました」
「ふむ、‥命に別状が無くよ‥良かったな」
「はい。なんとか生きております。所で陛下‥私の世界ではあの様に切りつけられたり階段を突き落とす様な事件が起こった場合は警察という取締りの機関が謀反人を捕縛し、理由を問い質す公開裁判を行います。実行犯を締め上げそれを命じた黒幕を炙り出す捜査も行います。命じた者と実行犯は犯した罪相当の罰‥人を殺せば死刑、傷付ければ何年かの投獄などの罰を与えられるのですが‥こちらの世界でもそのシステムあー司法機関や制度は機能しているのでしょうか?」
「‥もっもち勿論あるあるぞ」
はぁ?何余裕ぶっこいてんだよ。あるなら使えよ。
これ、そもそもあんたの息子の所業があってのこれだかんね。
ご心配有難うって言うと思った?何が命に別状が無くて良かっただよあったらお前の息子にガッツリ取り憑いて呪い殺すのは決定してるからね!
「その司法の最高責任者はどなたでしょうか?」
「私だ!」
は?司法は別にあるのでは?え?
待って宰相様の下の機関に司法はあった筈だけど、最高責任者‥成る程司法の長官の上にというか宰相様の上には全ての権力を統合したCEOとして王様が鎮座しているのか!
「ではこの国の最高責任者である陛下にお聞きしたいことがあるのですが」
「ん?‥申してみよ」
「今回の私への暴行をした犯罪者からの謝罪と私の要求をお聞き届け願いたいのですが可能でしょうか?」
「女!ふざけるなよ陛下に向かって」
「‥女?勝手に呼んでおいてその態度ではお里が知れますね。陛下!どうぞ召喚者は二人も要らない。不細工な方を殺せと命令した者をここへお呼びください。それが私の願いです」
「なっ何を言っておるお前は!陛下はその様な時間などない。今回も異世界人が城内で怪我をしたと聞き及び、お優しい陛下が面会して下さったのだぞ」
「お前‥?」
さっきから何?女!とかお前!とか
あっもしやバカの上司かコイツ…
空色の上着白パンツ、バカ騎士には無いジャラジャラ着いた勲章‥王の前に立ちはだかるのは近衛の‥隊長?
こいつ部下の仕事ぶりとか何も見てないくせに、典型的な貴族子息の役だけの腰掛け隊長だろうな〜見るところ実力ではなくて名誉職ぽっいのね近衛って!宝石の付いた剣で王様を守れるのか?無理だね。となると〜あぁいる。
同じ制服着てる実働騎士は王様の背後に控えていたわ。剣に手が行っていないのでまだ不敬とは思われてないかなでは
「陛下発言のお許しを」
おっと…総団長様お出まし?お前より上司な人だぞ控えおろう!近衛隊長(多分)
「‥よいぞ」
「イグサ殿、まず部下の不始末の謝罪をするべきでした。申し訳ありませんでした」
「総団長!この様な女の言う事を信じてはなりません」
「私はリザルド・サージュの行いをこの目で見たのだ。謝罪は当たり前の事だ。直属の上司が謝罪出来ないのならば私がするのは当たり前だろう」
「えっ‥見た?」
総団長様はもう謝罪して下さったのに‥お前に謝罪させるために再度謝ったんだよ近衛隊長!
あらまだ納得しない?自分より上の地位の方が謝罪しても自分は悪く無いと?そーですか。
コイツバカと同じ思考してるぞ。同じ服を着てるだけでもう敵認定なんだけど、それ以上口を開いたら飛ばす。いやもう黙ってよ
《ウルサイダマレコシヌケロ》
「あうっ‥」
「どうした?」
いきなりドサリと座り込んだ(多分)近衛隊長は呻いて蹲ったまま立ち上がれない様だ。陛下の前でそれでいいの?何してんの?
「こ、腰が、うっ、たっ立てません」
「はぁ?‥もう貴殿は別室へ行きなさい。誰か!」
「あらら…」
蹲る空色の服の方は、声も出ないほどの激痛に見舞われて、冷や汗をダラダラと流して立ち上がれない様だ。それギックリ腰ですかね?
痛いよね〜何処に力入れても響いちゃうから立てない座れない寝れないらしいから辛いね〜腕を取られ立たされようとしているのも辛いでしょ。爺様がなった時辛そうだったのよ。腕なんて引っ張られたら死ぬかと思う程の激痛走るらしいねぇ〜
腹筋と背筋のバランスが良くないとなりやすとか‥訓練してます?
騎士なのに鍛錬してないの?そう言えばご立派なお腹してますね〜。恐らく近衛隊長なんだよね?バカの上司って総団長が言ったものね。その身体で?
近衛?ウケる〜あーお飾りのね。
まぁ休んでよ今あんたいると話が進まないから退場!女とかお前とかあんたに言われる筋合いは無いので暫くは城に出てくるな!
「イグサ殿、陛下にお願いがあるのだろう?」
何つーナイスフォロー流石、総団長様。
「有難うございます総団長様。では陛下、私は召喚されたとはいえこの国にこの世界に何の拘りも義理も無い異世界人です。まず異世界の者として生存の権利を要求します。勝手に召喚された者として束縛されるのでは無く、尊厳と言動の自由を、そして何をさせたくて召喚されたのかの説明を王に求めます。あと、召喚は現在第二王子寵愛の私の世界の知人である異世界人ミカリ・タチバナ氏と私の二名だった事を鑑み、召喚の総責任者である第二王子にもう一人の召喚者である私を召喚の部屋に捨て置いた事情と、その後私を亡き者にしようとした理由をお聞かせいただく場を頂きたいのですが?」
「なっ?」
「第二王子の近衛騎士に殺されそうだと何度も第二王子に陳情書も報告書も提出いたしましたが、字が読めないのか知らぬフリをされております。今現在迄なんの音沙汰も無く‥となれば第二王子その人が邪魔者の私の暗殺を支持したのでは?と考えますでしょ?」
「なっ?」
「まぁ‥百歩譲って、異世界人と言っても平民です。そんなものの話など聞く耳持たぬと言う事ならば」
「‥ならば?」
「この国は己が利己の為に異世界にまで力を及ぼし人攫いした挙句、見た目が下賎な者なら聖女にあらず、見目の良い者だけを選り好み、贅沢をさせているだけで何の為に呼んだかさえ未だ不明。見目が良くない者は要らぬから始末しろと簡単に言ってしまう?神をも恐れぬ悪党の国なのかな?と‥他国へ救いの手を求めるのも一つの手段として有効かと」
「‥‥なっ」
この王様“な”しか言わないんだけど、
大丈夫だろうか?
亡命宣言した私に誰も文句の言えるはずもないでしょ?
私が提出した何通もの被害届か?侍従が持ってきたのかなそれを見て、(同じものを第二王子にも出しているけど多分読みもしないで捨てられてるね。陛下の方のは捨てられて無かったか‥でも読んでないな)また私を見るという動作を続ける王に追い討ちをかける。
「私の要求は至って簡単な事。 もう一度申しますが、第二王子付き近衛が、この世界の事など何も知らない何故呼ばれたのかさえ知らない召喚されたばかりの無抵抗な私を、殴る蹴る斬り付けるという所業に出た事の真意の説明を求めます。
第二王子が要らない異世界人を無かったことにして葬れという命を出したのか否か?王子でないなら誰がその命令をあのバカ騎士にしたのか?その究明。
これが一番お聞きしたいのですが‥呼んだならば帰す事が当然と思いますがそれが出来るか否か?そして召喚した異世界人に何をさせようとしていたのか?お聞きしたい。
それと、もう一人の召喚者ミカリ・タチバナを第二王子が寵妃が如く囲い遊び呆けているとの噂を聞きますがミカリ・タチバナが身につけているドレス宝飾品等は使命を果たした褒賞として与えたものか否か。そうでないとしたらまさか国民の税金をつぎ込んではいないか調査して結果を教えてください(あっこれは単純に差別された格差生活に追い込まれた者の興味ですけど)その旨伝えて恐らく依頼された雨乞い等の仕事を一切していないらしい聖女の生活とはなんなのかお伺いしたい」
「なっなっなんと?」
「あぁその報告書は私が命を狙われた時に出したものですが、生憎死ぬ程の怪我をしないからかどこぞで保留され、無かった事にされ掛かっていた様ですね。でも今回は流石になかった事には出来ませんねぇ。だってかなりの目撃者がおりますので‥門の出入り口で起こった事件ですし、城の人員の交代時間でしたので既に帰宅した者は街でこの事件を面白おかしく話しているやもしれません〜近衛の騎士が女を嬲って放り投げた様はカッコウの話題となるでしょう?なので有耶無耶にするにはちょっと都合が悪いかと、それも合わせてご報告お待ちしておりますす」
何せ証人が貴族から平民から沢山いるので私への非道の全て黙らせること出来るかな〜?城内に戒厳令を出しても何処から漏れるのは必至だからこそあの場所あの時間を選んだのだから。
バカ騎士の本当の上司はアホ殿下(第二王子)だけど、私への暴行は殿下の指示か?指示じゃ無かったら単独でやらかす無鉄砲な命令無視のバカとなる
殿下の近くに置いていいの?とも問いたい。
王に聖女についても聞きたいな?国の危機だからと呼んどいてバカに任せっきりは放置という。
仕事させろよの意味だ。神殿の要請を無視しているのは聞いてます?
って感じの陳情‥もっと詳しく実情を書きました。質問はただの嫌味だよ。
全てに答えてくれるとは期待はしていないがどれか一つでも答えてくれたら少しマシ。
こてんと首を傾げてニッコリ笑うと
途端に王、宰相、総団長様が顔面蒼白になったのは面白かった。
あら!いつのまにか宰相様居たのね。
王様、自分になんの落ち度も無いと思っていたんだ?息子とバカ騎士の凶行を知らなかった?
そんなわけあるか!
第二王子付き近衛騎士だもの知らないじゃ済まないよ、貴方のお子様でしょ?
総団長の命令とかも無視されてたのよね?若しくは誰かが報告を止めていた?それも騎士としてまずくないかい?連絡事項が滞っていたらいざという時に騎士はバラバラだ。
呑気だな〜この国の人って。
王様大丈夫?報告は聞いてる筈なのに。
何の対処もしないでズルズルと今迄何してたのかな?異世界召喚は王子が担当するほど重要ではあったよね?クイーンは何もしてないよ良いのそれで?
宰相様は苦虫を噛み潰したようなお顔だったけど、一番何が起きているか知っているのに護衛一人を付けてくれただけで根本の解決はしてくれなかったじゃんか!あんたこそ王様に何も言わんかったのか!ってね。
だけどこの世界での居場所をくれたからこの程度のザマァで納めます。
納得はしないけどこれ以上は多分、私自身の首を絞めることになりそうだものね。
そこまで危険は犯したくないので引きますよ。
「今回の事も、宰相様にお任せしますよ、私は何の権限も持ち合わせておりません只の異世界人ですから。ただお伺いした返答はちゃんと頂きたい」
「参りましたね、そう来ましたか」
王も第二王子の所行は少しは知っているのだろう、知っていて何も手を打たないと私は見ている。いや、打てないのか?国内の大きな権力を持つ貴族に何かしら遠慮しているのかな?
聖女という存在のせいか?第二王子の後ろ盾のせいか?
今迄何も改善されなかった事からクイーンが王まで食っていたか?
ならば勝ち目は無いが、まぁできるとこまでやるしかない。
いざとなれば城下にいや、国外に逃げるだけさ。城の大まかな地理は把握している。伊達に侍女さんや下女さんと話をしてないよ。
逃げ出す道もなんとか散歩中に数箇所は確認している。
城の裏には大きな森があって人は入れない神聖な森とか言われているそうだが、実質入れないとかは無いんだって。時折高貴そうな人が入っていると聞いた。そこに逃げ込めば数日は生きられるだろう。確信はないが、逃げられる気がする…どうにかなるさ。その森を抜ければ王都の外れの町までは出れるみたいだしね。




