知らずは己ばかりなり
新たな私の日課として毎日毎日、城のある高台からシオノギ門のある下まで降りてまた登るというお散歩は、運動不足もかなり解消される気がするイグサです。
城で働く人を見る事も出来るし、色とりどりの花と綺麗な川(マイナスイオンが発生しているのだろうと思われ清々しいの)を見る事で頗る健康になった気がするのは私だけかな?
深呼吸して軽いストレッチをすれば、その姿は珍しいのだろう、"何かしている"とヒソヒソと色々聴こえて来るけど気にはしない。
確かに屈伸とか両手を上げて脇を伸ばしたり前後に大きく足を開きアキレス腱伸ばしとか淑女はしないわね。でもねー、緩やかなとはいえ階段の上り下りって結構大変だから事前の身体を温めるストレッチは大事よね。怪我の無いように伸ばしすぎもまずいので適宜って所がミソ。
ラジオ体操ってキチンとすると凄い運動量なんだよ知ってる?
ホカホカ少し汗ばんだくらいで階段を下り張ってきたモモと脹脛の筋肉をゆっくり伸ばして登りに備える。ストレッチしながら人を観察していく。
人の目が多いと言う事はある意味目立つわけだが、あちらも見るならこちらも見えるのよ。
下位とは言えお貴族のご子息ご令嬢達はどんな人間か観察は楽しいね。
私が侍女と護衛を連れて毎日歩いているので何者か?という話題で盛り上がっているそうだ。
勿論、良い話ばかりではない。
悪口を言う奴の顔は覚えたよ。大概そんな奴らは賎民意識が強すぎるから上から見下す視線、顎が上がっていて、いやらしくニヤニヤしてて、口角下がりって意地の悪さって顔に出るよね。常に不満を言っている人はこういう顔になりがちだ。わかりやすいよね。
《シクシクヒザガイタクナ〜レ、ガンメンヒクヒク二ナーレ》
なんて、そんな奴に出くわす度にこそっと呟いたりしてウサは晴らしてます。
逆に顔見知りの庭師さんや掃除の下女さんなどと仲良しさんも増えて、親しく挨拶していると雑談に
「歳かね〜最近肩が上がらなくて」
と聞けば
《カタノイタミナクナレ》
とさすってあげたり、
「水仕事がキツイの手荒れが痛くてね。」
なんて聞けば
《テアレヨクナレ》
なんて手を撫でてあげていると言いにくそうにエリオット君に後から注意をされてしまった。
「他の貴族の目も有りますので、あれはよろしく無いかと」
「‥は?」
つまりキッパリ身分を分けられている階級世界なのだから平民と話し、親しく接するのも貴族様から見ればマナーがなっていない事だと言われるらしい。アンナちゃん注釈もとい通訳により漸く理解しました。
エリオット君は遠回り過ぎて言いたい意味が一瞬わからなかったよ。
でもね、私だって普通の人で貴族では無いのだから彼らと同じなのよ。心の中ではそう反論してみたがエリオット君に言っても拙い言葉だ。
彼は私のことを思って貴族らにバカにされないように、宰相様に迷惑をかけない様にと注意してくれたのだろう。だからそこは素直に頷き、ゴメンねと言いその場を濁した。
でも痛みが取れると仕事が楽になるとか言われたからついねー。
触って治った気がするなら幾らでも触るよ。気は持ちよう!
(拝まれるのは困るけどね)
私の扱いは本来なら秘匿されていて下位の貴族には何の説明もされていない存在。だからこそあまり平民と交流を図るのは宜しくない事もあるかな?
(何せ私狙われている身なので…宰相様に怒られるとか?エリオット君が叱られちゃう?)でもさ平民の生活レベルを知るにはこの出会いは逃せないのよね。いつ城から追い出されるか分からん立場だから、情報大事!




