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周辺調べは周到に

ため息付いたエリオット君は、残念な子を見るようなため息をまた一つついた。


ええ〜私何かしたの?

どうも男心がわからないイグサです。





そんな心の声は完全無視(当たり前か)散歩コースの一番の眺望を誇るシオノギ門から城へと続く階段の頂上へ着いた。するといきなり学校案内の如くこの城は山を削って建てたものでとか、塔を指してアレは見張塔でとか、この先は薬草園があるなどと始めたので、おふざけはやめて耳をすました。

何の説明でしょうか?


もう何度も通った道を今更ながらご案内頂くその心は?という疑問より、君の頭大丈夫?という不安げな顔をしてしまったのは否めない。いやいきなりだからね。


「外出出来ないとボヤくイグサ様に城の概要をご説明致します。」

「あ〜!これはご丁寧にありがとうございます。よっエリオット先生!」

「‥‥」

「え〜!何で怒るの?今私何かしたの?この世界お礼言ったらムッとされるの?」


アンナちゃんに助けを求めるしか無いと視線を移せば、顔を背けている。あ!肩が揺れてる?笑ってるの〜?


決して馬鹿にしたわけでは無いのに失礼な態度だったのかな?盛り上げようとしただけなのに、超ムッとしてるし


若い男の子には合いの手は不要と心のメモに書きました。(ええ、ピンクマーカー付きでね!)


シュンとしたらエリオット君が少々納得いかない表情ではあったけど、説明を再開してくれたので少し持ち直しました。

年下に気を使わせたのか?


納得できない部分はあったが決して狙って俯いた訳ではないよ。エリオット君が心優しい男子だった事に感謝し、そして合掌。



***  ***



「そしてあちらが騎士団本部です」


この国の騎士団は王城の横に騎士棟を持ち訓練場や厩を城の広大な敷地内に有している。本城を背にエリオット君が、右手で指した木々の奥にちらりと見えたのがそれだそうだ。


建物は第1・第2騎士団の独身騎士の寮も兼ねていて(エリオット君もここに居を与えられているそうだ)

4階建で各団長・副団長の執務室、2人一部屋(新人は4人部屋)の寮室と食堂、大浴場に医務室、室内鍛錬場と娯楽室などを備えているらしい。

(総団長は王城内に執務室を構えているが、此方の建物にも部屋を持っているらしい)

近衛はもっと城に近い所に同じ様な建物があるが住居のみで、訓練場はこちらの騎士団のものを使用するとの事だったので


「近衛って別団体では無いの?」

「騎士団から精鋭が選ばれて近衛に昇進するのです。なので近衛騎士は騎士団の指導者にもなります」

「おお!あのバカも近衛だから騎士団の純真な少年達に指導することもあるの?」

「あゝ、あの人は‥そう言えばまだ無いですね」


だよね〜と安心しました。

うんうんと頷く私を待って説明は続く



「あの奥の一際高い塔が時計塔です」


おおあれか!

確かに王城の次に高さのある塔かも。


時計の下の鐘もここから見ても大きそうだわ。これって時間が来ると人が鳴らしているかと思ったけど、自動で金が鳴らされるらしく、そんな複雑な物を作る技術はあるのに、神頼みの雨乞いしちゃうのか…


アンバランスな世界じゃない?




「あれは王都の方向を向いてまして鐘の音が街にも届く様に、あの位置にあります」


ふむふむ、時計塔の下は所謂城下町なのね。おうっ崖じゃん。

城が山を削って作ったのがわかるわ。時計塔を目印にすれば街へ逃げるのも一計かと思ったけど、この崖は装備なしでは降りられないな‥やはり城からの出入りは門を通らないと無理か。ここは自然の要塞という事ね。

裏手には鬱蒼とした森があるし出入り口は門があり出入りの人種を分けているのかな?

いくつか門があるとかは聞いたな。

城だけど要塞も兼ねているのは当然か!街の端にもまた外壁があって、出入りを門で制限しているらしいしね。


「で、王都以外の地域は其々の領主が置き時計を買い、それを見て人手で鐘を鳴らして時を民に知らせています」


原始的やな…魔法もある世界なのに?と聞くと、未だ高価な大時計はかなりの金持ちしか持っていないそうなので、それの有る無しで領地の領主の懐具合がわかるそうだ。

時計のない領地=金のない貴族

ってかそんな貴族、貴族としてやっていけてるの?

貧富の差はどこにでもあるだろうけど

目立つ物でそれがわかっちゃうのも嫌ね〜。だから人が鐘を鳴らすのをさも機械仕掛けだと思わせて黙っている貴族も居るとか居ないとか‥


見栄で生きるものなのね、貴族って。



***  ***



次は城の四つある入場門についてのご説明が始まる。


まず一つ目はこの私の散歩道がその門から始まる道を有するシオノギの門である。


城で勤務する上級使用人(騎士・官僚・女官・侍女・侍従等)の入退場門にもなっていて、いざと言う時はシオノギの門が騎士優先門となり馬に跨った騎士達が颯爽と隊列を組んで出陣するらしい。

なので門から厩まで広く大きな馬道が敷かれている。

騎士と馬はそちらの道を行き、騎士以外の人は門までは各自の家の馬車で来て、そこからは馬や武器等と接触をしないように、馬道と並行してなだらだけどかなりの段数のある階段を徒歩で登って登城するそうだ。


現在私のお散歩コースとなっているそれがこの眼下にある階段だ。

だが城に勤める上級も下級使用人も殆どが寮で暮らしているし、女官さんとか高級官僚(高位貴族)は城に部屋が与えられているので、ここは騎士専用門では?と思うほど騎士か、掃除の下男下女さんしか見当たらない。

時折実家に帰って城に戻る時は家が用意した馬車で別の門から入るのが殆どで、この門はいても下位貴族の侍女さん達クラスの休日の街へのお出掛けかは等はこの門が使われるそうだ。


数十段毎に大きな踊り場が設置されていて脇に花壇もあって、もう階段公園といっても過言ではない作りが素晴らしい。階段脇には城の裏手の森からの湧き水が流れていて休憩用のベンチなども配され清らかな水が流れている。(いつかここで水遊びしたいと思っているのは私くらいだろう。)


ここでこれだけ素敵なんだから王族が使う"オレオールの門"はさぞや豪華絢爛なんだろうと思う。

王族専用門だからそんなに頻繁には使われないらしいけど、外国の王族や大使クラスなどを迎えるのもその門らしいので、国の威信を掛けて作られていそうだ。


貧弱な私の脳みそからはベルサイユ宮だったりドイツ、フランス、イギリスあたりの古城の豪勢な門構えとかしか浮かばない。なので後学の為片隅からでも一度で良いから拝見したいな〜なんて思っている。


でも無理をしないのが信条、口にはしませんよ、そんな我儘はね。

私は多分‥いえ絶対拝めないだろうからね。


何せ私は第2王子や、貴族達には羽虫の如く嫌われているからさ。

でもこっちは見れるかな?エリオット君が指し示す方角にあるのは


"アーゼルの門"貴族専用門で徒歩なんてあり得ない上位貴族様のための馬車道として整備されているらしい。

城で年2回行われるデビュタントの夜会と、王様の誕生日の祝祭の舞踏会は全貴族が参加するので、馬車に付けられた灯が城までの道に列をなし、天に登る焔の如く城下から観ると綺麗らしい‥らしい。


観たいわ〜。


宰相様とかにくっついていたらどさくさに紛れて通れるかもしれない。望みは持っておこう!


では次の門は‥なんてエリオット君が言うのでまだあるの?なんて素っ頓狂な声を出してしまったら、少し得意げにニッコリして続けてくれた。


"マイナンの門"は城の下男下女や商人の荷運び専用の門となっていて、朝などは荷の搬入でとても賑やかになるそうだ。

勿論、衛兵が在中して出入りの監視をしているから街中とは違うけど、雰囲気は城下の街の様らしい。

この門も見てみたいんだよね。


沢山の人の行き来では人間観察が出来るから楽しのよ、でも今現在そんな事がホイホイ出来る立場でない事はいくら私でも分かっています。

でもいつかは‥見たいな。


行く場所を制限されている私からしたら城案内はとても楽しい時間となった。

ほとんど木々で隠れていて方向くらいしかわからなかったけど、城の向きと太陽の位置と時間から大まかな建物の方角は頭に入れた。城内地図はいつか必要になる。本当はアレを出して上空から見る事は可能なんだけど、今やるのは無謀かなと温存してます。アレの高度もどこまでいけるかまだ取説見てなかったしな…まぁ追々やろうかね。


「まだ知らない場所があるからまた教えてね」

「勿論です」

「よろしく」


いつか逃げ出す時に重要な知識となるやもしれないからね。



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