その道のりは万全に
まず私の朝の散歩コース(通常は旧側妃棟である私の現在の住居周辺の森を一時間程散策する)にシオノギの門(上級従業員通用口)から、騎士棟への道を新たな散歩コースに追加したイグサです。
気分転換したいと言って申請が通ったのは、人がいる事で森の散策より安全と看做されたのかもね。呆気なくお許しが出ました。
但し、ケープを被る事の注釈が付いてしまった。黒髪で短髪ではかえって目立つからとの事で、それは私も同感なのでケープは被ります。シスターと言われそうな姿だけどね。
散歩道では日参の賜物で、顔見知りになった下女さん達から更なる対象者情報ゲットです。
総団長様は城外に屋敷があり、毎日同じ時間に城の敷地内にある騎士棟へと寄ってから、城内の陛下の執務室へ挨拶に出向くのが何時もの行動らしい。
(人気者は行動監視されてるのは常なのねチョット聞けばスラスラホイホイ情報が入るわ)
数日はテレテレして遠くから見るだけにしていたが、そんな私を余りに可哀想に思ったか、ある日シオノギの門を入ってすぐの階段の一番下の美しい花壇前で、なんとエリオット君が私を上司様に紹介してくれた。
そうかエリオット君にとっても上司だよね。
(下っ端かと思ったらやけに上司様と親しげじゃん?これはエリオット君の評価を上方修正せねばならんな。若手有望株社員が部長と面識あり的な?)
何も知らなかったでは済まない感じ?ができちゃったのは、ちょっと予想外でどうしましょうなんだけど‥。
「総団長、この方が例の」
「おお!リオ‥宰相殿の懐刀を紹介してくれるのか?エリオット」
ん?
気になるぞその言い方
懐刀とか面と向かって言われたこと無いのに恥ずかしい。
『リオ』と宰相様の名を呼び捨てにしたという事は宰相様と親しい?エリオット君の事も家名でなく呼び捨てだね‥
騎士団総団長様はマクシミリアン・ゾルデ伯爵(33)
宰相様とは学園時代の同級生でライバル位置だったらしい。
文のバミリオ武のマクシミリアンと言われていて、学園のツートップは現在エグサリオ国のツートップになったわけだ。仲も良さげね。
「あいつは、懐刀は隠し玉という意味で見せない前提だろうが!と何故か私にも貴女のことを隠して会わせてくれなかったのですが、いやこれは嬉しい。どうぞよしなに」
スタッと馬を降りて、名と家名を告げ隠し玉とか爆弾宣言寄越した総団長。
さすが33才のデキル男の色気全開!さらりと手を取られ指先にキスを落とされるとか、映画やドラマで見た事はあるが自分がされるなんて初めてでパニクる!
手‥手汗が半端ない。
王道騎士様の物語の様な態度にぽわんとしていると、エリオット君がゾルデ総団長の手を叩き落とし私をかばう様に立ちふさがった。
嘘!平社員が部長に何してる?
と呆然としていると、ワハハと豪快に部長は笑って‥団長様が笑って、
「成る程な、子供だと思っていたがそうか‥しっかり守れよ!」
とエリオット君の頭をガシガシ撫でて
またいずれとカッコよく馬に乗り去っていった。
「幾つになってもキザ過ぎ」
エリオット君の捨て台詞の中には憧れも混じっているようで‥
もしや古くからのお知り合いか?
だから親しげだったし、腕をはたき落としても笑って許されたか‥うん、あの対応は豪快で色気がある男性だったよ。
あんな大人になりたいよねエリオット君。
あっ顔赤いよ、エリオット君。
挨拶を交わしてからは、馬で登城する総団長様は、毎朝歩みを止め馬上から私に目礼してゆっくりと階段脇の花壇を愛で、お優しいキラキラ笑顔をあちこちに向けながら、緩やかな登り坂を騎士棟へと向かう様になったのよ。
エリオット君がどう私の事を報告していたのか、宰相が何故私を総団長様に紹介しないのか非常に気になる(隠し玉ってさ?)ところだが‥
まぁ出来るイケメンに認識してもらえるのは今までの人生でなかったので、なかなかに嬉しい。
エリオット君に足を向けて寝られませんね。
総団長様は馬上の後ろ姿も美しくて、凛々しく大きなガタイであるのに優雅で気品があるのよね。イケメンの年上の魅力爆発!
マジ素敵!
33歳と聞いたけど未婚で(何でと聞いたがエリオット君も知らないとか、本人には尚更聞けないしね)優しくて地位があってかっこいい、もう無敵よ!
そりゃ城内の貴族子女達が騒ぐのも納得じゃ!
「はー良いもの見た。今日も一日頑張れそうだよ。」
「‥‥」
あれ?エリオット君が何か元気が無いけど腹でも痛いの?
お姉ちゃん赤い玉持ってるよ。
この世界の人に私の世界の薬、それも市販薬が効くかわからないけど腹痛に効くよ多分、とリュックから薬を出すも受け取ってもらえなかった。
ちょっと凹んだのは、バレない様には我慢したさ。
こんなんでも年上だからね。
*** ***
私はバカ騎士がこき下ろす通り、簡易ドレスにリュックという変な格好で城内を闊歩してますので、まぁまぁ目立ってます(ケープ被って目立つのもあるけど)
元世界の物は、肌身離さないのが自分でも安心だからね。
常にデカイリュックを背負っている姿を馬鹿にされているのは知っている、知っているけどやめないよ。
こんな所もバカ騎士に、女のくせに身形も気にせずと揶揄される所なんだけど〜
私、お綺麗ドレスなんて持ってませんもの(動きにくいし着ていく場所も御座いませんし〜何より似合わないから)
それにいつ私の私物(異世界謹製)が悪用されても困るし、元々心配性という性格から何かあった時、何も持たない不安より何か持っている安心を取りたい!
と言うことで薬の類も常備してます。
リュックの多数あるポッケの一つが常備薬ポッケになっています。
腹、頭痛薬に目薬、とげ抜き消毒液、絆創膏は小さなジップ付き袋にサイズバリエ別に入っている。
お高くて中々買えなかった傷○ワーパットも靴ズレした時に先輩から三枚もらったので有るし、便秘薬に風邪薬、痒み止め、筋肉痛用のゲルもある。(あー乗り物酔いと腹下しはしないからそれ関係は持っていない)
エリオット君腹痛じゃ無いならなんだろう?
また口数が減っちゃって胸の辺りを押さえてるけど、なんだろうか?
強心剤は流石に無いわって言ったらムッとされたよ、なんで怒るの?
私なんかした?
ウソっまた落ち込んじゃったよ。
ふ〜男の子にもお年頃の難しい時期はあるからそっとしておきましょうかね。
だからなんでムッとしてるの?
アンナちゃん笑ってないでとりなしてよ。
男の子ってわかんないわ〜




