気づき
天羽が書いたメモ
・末岡綾
高校3年生、身長170cmほど、優美な顔をしており、少し気が細い。←説明で涙
高そうな衣服に身を包んでいる。←恐らく裕福な育ち
飲み方が綺麗で上品。
腕時計が少しズレている(3分)。←時期の説明で「ほど」を多用する。時間には無頓着と思われる。
・松山はるか
18、19歳
住所 近原市○○町2丁目△-□□ 雅アパート 3号室
高卒で就職。←会社は近原のどこか。
顔写真による推測
肩幅が広く、恐らく鍛えている。
勇ましい顔つきをしている。
服は不明。
写真では1人。←違和感
連れ去られそうではない。←警察が動かない原因と思われる。
・3ヶ月ほど前に付き合う←8月から9月
↓
・10日前に松山失踪←7日間
↓
・3日前ほどに警察←動かず
↓
・今日の10:27にご来店←破綻
末 は の可 性 い
「天羽さんの事務所の始業って10:30からだよね…末岡さんが来たのは10:27…一応扉は開けてるけどまだ始業してない…3分早いのか…。3分…あ。」
又賀は末岡さんの情報が書いてある欄に目を向けた。
「腕時計の3分のズレ…末岡さんからしたら10:30ぴったり来たつもりだったのかもしれないけど時計がズレてたから少し早く来た。」
末岡さんの時計には10:30と示されていたが、3分早くズレているせいで始業時間前、10:27に事務所に入って来てしまった。
「本人からすると始業時間ぴったりに来た…時間厳守…。腕時計のズレで考えられた、時間に無頓着という情報が間違っていることになる。」
メモ、基本は上から下に向けて新しい情報になっていく。
天羽は最初に末岡と松山の情報を書く。
そして時系列。
情報を鑑みながら時系列を書く、その時、自身の仮説と末岡の行動の乖離を感じたのだろう。
箇条書きも同じく上から下に書いていく。
末岡の情報。背丈、顔立ち、性格、服装、そして飲み方への言及。
天羽が飲み方が上品なことをメモに書いている時、末岡の時間のズレた腕時計が見えたのだろう。
だから飲み方の次に腕時計のズレについて記した。
説明の時期が大雑把なこと、腕時計の時間がずれていることを鑑みて時間に無頓着と仮定を立てた。
そして天羽は松山の情報を書き、一連の時系列を書く
その時、天羽の仮定は破綻した。
だから最後の場所に矢印を伸ばして破綻、と書いた。
仮定はあくまで仮定で、真実には勝てない。
末岡が10:30ぴったりに来ようとしたのは事実。
末岡は時間に無頓着などではなかった。
「ならなんで時期の説明は正確じゃなかったんだろう?まだ深掘りできるところがあるかもしれないな。時間には無頓着に見られたが、ちゃんと守る…。」
破綻の文字に釣られて時系列の欄が目に入った。
「3ヶ月前『ほど』に付き合う…。この『ほど』が時間にルーズと思われた原因の一つ。けどその仮説は破綻した…。」
又賀は『ほど』に焦点を当てて考えた。
「『ほど』…また使われてたのは…警察の時…。3日前『ほど』…大体3日前って意味かな?なんで3日の前のことにも『ほど』を使うんだろう?そしてそれと対照しているかのように松山さんがいなくなった日は『ほど』を使わずに説明している…。何が違うんだろ?原因は…。」
又賀は天井を見上げた。
「何かを濁してるのかな…。まぁこの場にいない人間のこと考えても何も変わらないか…。さっきから矢印の言葉がすごく関係あるから他のも深掘りしてみよう。」
天羽の矢印には複数種類があった。
「気になる矢印は…1人の写真で天羽さんが抱いた違和感…10日前に失踪のところに書かれた7日間という言葉。くらいか…。」
「7日間…いなくなったのは10日前…あ、7日間って末岡さんが警察に行くまでの日にち…。…あれ、この1週間、末岡さんは何をしていたのだろう?本当に心配なら3日以内までには通報しても良さそうだけど…。」
又賀は最初に抱いた疑問を思い出した。
「最初の矢印、『説明で涙』のとこ…愛してる人が突然消えたら気が弱くなくても泣いちゃうと思ってたけど…末岡さんは1週間、言い方は悪いけど松山さんを心配しなかった…。だから天羽さんは気が弱い人と思ったのかな。」
又賀の頭の中にただの失踪という思考は消え失せていた。
「末岡さんの行動には変なところがたくさんあるな…。時間に適当だったり正確だったり。松山さんを心配してるのか関心がないのかわからなかったり。よく考えたら彼氏の職場を知らないのはちょっと変だな。」
又賀は今までスルスルと解けていたのと対照的に1つの壁にぶつかった。
「1人の写真…違和感…。1人…1人。自分で写真を撮ってる感じではない…。あの写真は誰かによって撮られたもの、撮ったのは末岡さんかな…?服が見えないから学校とか仕事中とかプライベートに撮ったのかわからないけど。」
又賀は松山の顔写真を思い出した。
あの時考えたこと。
「正面じゃなかった…。そしてカメラに目線を向けてなかった…。無意識の間に撮られたかのように。」
又賀の頭の中に今までの仮定を巡らせた。
「時間に正確な末岡さんが時間を濁した時は3ヶ月前と3日前…3ヶ月前は仕方ないとしても3日前くらいは自信を持って言わないとおかしい。
そして彼氏を心配して探偵に相談した末岡さんはいなくなってから1週間の空白、職場もわからない。」
がちゃん、と扉からいきなり音がした。
音のなった元へ向かうとそこには『天羽探偵事務所 宛』と書かれた封筒が落ちていた。
「送り主は…末岡綾。」
天羽の許可もなく封筒を開けるのに多少の迷いはあったが、謎を解明したい好奇心に駆られた。
封筒を開け、中に入っているものを机に広げた。
「これ、松山さんの写真…10枚くらいか。」
又賀は送られて来た写真に全て目を通した。
松山のいろんな角度の写真。
「…この仮定は自信がなかったけどこれで確証が持てた…。」
又賀は天羽に電話をかけた。




