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夜逃げ道  作者: 嬉しい
夜道編
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6/15

依頼の仮説

「仮説…ですか?」

「そ。柊華(しゅうか)ちゃんが思うこの依頼の真相。なんでもいいよ。」

「いきなり言われても…ただの失踪じゃないんですか?天羽(あもう)さんは何かわかってるんですか?」


天羽は何か含みのある顔をしていた。

又賀(またか)は必死に考えてみたものの、ただの失踪という固定概念からか、それ以上の発展ができなかった。


「まぁいきなり聞いてなんだ。考えててね。」

「はい…。」


えーと、と言いながら天羽はメモ帳を破った。


「はい、これ、末岡(すえおか)さんの話のメモ。一部しか見せられないけどこれ見て仮説を考えてみて。」

「わかりました。」


天羽はコートを着用し始めた。


「今日はちょっと私だけで調べたいことがある。留守番してて。」

「私も行きます。」

「私は柊華ちゃんに立派な探偵になって欲しいんだ。仮説を立てるのを練習してて。メモ帳を見れば1つのストーリーが浮かぶと思う。」


又賀は探偵になりたいなど一回も言ってないが、何も言わなかった。

天羽は手を振りながら事務所を出た。


「仮説…か。」


又賀は天羽のメモに目を向けた。


ーーーーーーーーーー

・末岡(あや)

高校3年生、身長170cmほど、優美な顔をしており、少し気が細い。←説明で涙

高そうな衣服に身を包んでいる。←恐らく裕福な育ち飲み方が綺麗で上品。

腕時計が少しズレている(3分)。←時期の説明で「ほど」を多用する。時間には無頓着と思われる。


松山(まつやま)はるか 

18、19歳 

住所 近原市○○町2丁目△-□□ (みやび)アパート 3号室

高卒で就職。←会社は近原のどこか。


顔写真による推測

肩幅が広く、恐らく鍛えている。

勇ましい顔つきをしている。

服は不明。

写真では1人。←違和感 

連れ去られそうではない。←警察が動かない原因と思われる。


・3ヶ月ほど前に付き合う←8月から9月

     ↓

・10日前に松山失踪←7日間

     ↓

・3日前ほどに警察←動かず

     ↓

・今日の10:27にご来店←破綻


末 は     の可 性  い

ー ー     ーー


この先は破れて見えなかった。


「すごい…聞いたことを書くのに加えて視覚情報まで…。色んなことに疑いを向けるのがいいのかな…。」


天羽が少し汚い字でサッと書くメモは又賀が精一杯書いたメモより事細かに、正確に、そして話だけでは知り得ない情報まで書いてあった。

これだけで天羽がどれだけ優れた人間なのかが理解できる気がする。


「…って感心してる場合じゃない。仮説…どこから触ればいいんだろう?」


とりあえず最初の方からじっくり考えていくことにした。


「末岡さんは気の弱い人間…説明で涙を流しただけで…?愛する人間が突然いなくなったら気が強くても泣いたりするんじゃないのかな…。」


又賀は疑問を持ちながら読み進めていった。


「末岡さん、飲み方の作法、高校生とは思えない服装から不自由ない生活をしてるのかな。腕時計のズレ…3分か…確かに大体の人は直しそうだけど、依頼と関係あるのかな。」


うーんと又賀は天井に顔を向け、考えたが何も浮かばなかった。


「わかんないならいつまで考えても仕方がない。松山さんの情報を読んでみようかな。」


『松山はるか』の欄に目を向けた。

名前の漢字をわからないままにしているから又賀のメモも天羽のメモもひらがなで書いていた。


「18か19歳…去年卒業だからか…。住所は多分ただのメモだよね…。就職のやつもメモ…。…あの顔写真だけでこんなに情報あるんだ…。鍛えてる…確かに体つきが良かったよね…この写真を警察に見せたとしたなら捜査しないのも頷けるな…。」


天羽のメモの続きに目をやってみると、ある文に引っかかった。


「写真では1人…が違和感?なんで?」


又賀に当時の天羽の思考は読めなかった。

1人の写真の何が違和感なのだろうか。


「飛ばして読むか…。連れ去られそうにないのはわかってる…時系列を見てみるか…。」


今のところ末岡と松山の情報だけで仮説は浮かんでこなかった。


「3ヶ月前に付き合う、8月から9月…。これもただのメモかな…?10日前に松山失踪…この矢印の7日間ってなんだろ…失踪期間なら10日間だし、書く必要もないし…。約3日前に警察…相手にされない。そして今日…今でいう昨日の10:27に来店。え?破綻って何?やばい全部読んだけど何もわかんない…。ん?」


又賀は天羽のメモの切れ目の部分に気づいた。

紙と繊維が混ざり合って完全には読めなかった。


「末… は…の可…性…い…。天羽さんが適当に手でちぎったから仮説のとこが残っちゃったのかな。あんま見ない方がいいか…。」


又賀は見なかったことにして残った部分だけで考え直した。


「本当にこれだけでストーリーができるの…?違和感…破綻…これを話聞いてる時に書いてるのかな…。破綻…何が破綻…末岡さんの話が破綻したのか、天羽さんのメモの中で破綻したのか…。あれ…。」


又賀は破綻の文字の横に目を向けた。

末岡さんがご来店したのが10:27。


「天羽さんの事務所の始業って10:30からだよね…末岡さんが来たのは10:27…一応扉は開けてるけどまだ始業してない…3分早いのか…。3分…あ。」

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