身を潜める真実
天羽と又賀はカフェのテーブル席に腰掛けた。
「ふぅ…疲れた。私コーヒーで。」
天羽は椅子に深く座り込んだ。
「はいはい。」
又賀はカウンターに向かい、コーヒーとジュースを注文した。
そして席に戻った。
「注文したものが来るまで、先ほどのことを整理しよっか。」
「わかりました。」
天羽は、メモを取り出した。
「井原さんの言うことが本当なら、橋から3分後にある坂道までは、確実に佐藤環奈さんがいたということですよね。つまり…坂道を越えた国道での5分間に連れ去られた…と言うことでしょうか。」
「そうだね。井原さんも橋を出て3分くらいまでは後ろから音が聞こえたって言ってたし。」
二人の席にコーヒーとジュースが置かれた。
「けど、おかしいですよね。二人で帰っている人を、しかも自転車に乗っている人を誘拐しますかね?」
「少し引っかかるよね。しかも、状況を整理すると、犯人は現実離れしたことをもっと多くしている。」
「なんなんですか?」
天羽はコーヒーを一口飲み、口を開けた。
「まず、井原さんが通った道について整理しよう。」
天羽は、メモに図を描き始めた。
「井原さんは、駅を正面とした時、右側の歩道を進んでいた。車は左側通行だから、井原さんとはすれ違う形になる。」
「はい。」
天羽はメモの図にペンを指しながら話しを続けた。
「視界の悪い中、進んでいる自転車にタイミングを合わせて、自転車ごと連れ去るなんて、至難の業だよね。しかも、環奈さんの声も出させずに。」
「難しそうですよね…。」
「何より、あの橋は車道が狭かった。もし、車が止まったら後続車も全部止まっちゃう。反対車線も車通りが多いから、追い越せない。」
「つまり…?」
「走りながら、車の窓から、もしくは扉を開けて、自転車を投げ捨てなきゃいけない。そんなの、たとえ視界が悪くても、後続車のヘッドライトで見えそうじゃない?」
「確かに…。」
又賀は頷きながら、他のやり方があるか考えた。
又賀は何かに気づいた。
「あれ?」
「ん?」
「自転車って…ライト…。」
「あー。」
又賀は考えついたことが役に立ちそうで少し興奮した様子だった。
又賀は立ち上がって天羽に顔を近づけた。
「視界が悪かったらライトつけますよね!?井原さんも、佐藤さんも!どこでライトが無くなったかで佐藤さんが最後にいた場所がわかるんじゃないんですか!?」
「確かに…井原さんが環奈さんのライトを見てない、もしくは言及してないのは何故だろう?」
「もし見えてたら言いそうですもんね!?」
「聞いてみよっか。本人に。」
天羽はガラケーを取り出して電話をかけた。
「もしもし、天羽です…。はい、少し聞きたいことが…。はい。あの日の帰り、視界が悪かったようですが佐藤環奈さんの自転車ライトは見えなかったのですか?…あー、はい…わかりました。ありがとうございます。」
又賀は自分の予想が合ってるのか気になった。
「なんと…?」
「環奈さん、自転車のライト壊れてて、数日前からつかなかったみたい。だから井原さんが先行して帰ってたらしいよ。」
「なんだぁ…。手応えあったのになぁ…。」
「いい考えだったけど…惜しかったね。」
又賀はがっかりして、テーブルに伏せたまま腕を伸ばした。
「うーん…どうやって連れ去ったんだろう。」
「自転車が橋の下にある以上、誰かの悪意か、佐藤さんの不覚かしかないからね…。」
「けど、佐藤さんが落ちただけだったら、死体発見が遅すぎるんですよね?」
「うーん…あの日は川が増水してたから、警察の想定より奥に流されちゃっただけなのかなぁ…。」
「「うーん。」」
二人はどうやったら筋が通るのか考えていた。
しかし、答えは出なかった。
「今の情報だと少し足りないかもね。今は警察の追加情報を待つしかないか...。」
「そうしますか…。」
二人はカフェで休憩を終え、レンタルしていた自転車を返して事務所に戻った。
「柊華ちゃんは先に事務所入ってて。」
「…?わかりました…。」
又賀は、少し不思議に思ったが、何も聞かなかった。
又賀が事務所に入ったことを確認して、天羽はガラケーを取り出した。
「もしもし、桃花ちゃん?ちょっと確認して欲しいことがあるんだけど…。」




