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夜逃げ道  作者: 嬉しい
濁流編
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12/15

流れる水

一週間、お待ちいただき、ありがとうございました。

正直、一週間も空けないで投稿してもよかったのですが、新しい章を掲載するにあたり、気分を入れ替えたかったので空けさせていただきました。

今週は、先週の投稿分も含めて、2話掲載させていただきます。

これからも、『夜逃げ道』をお願いいたします。


嬉しい

11月10日、近原(ちかばら)には未曾有の大豪雨が迫ってきていた。


近原駅に灯りが消え、カッパを着た女子高校生が立ち尽くしていた。


環奈(かんな)…?」


彼女の呼び声は、豪雨の音にかき消された。






ーー少し前。


天羽(あもう)探偵事務所。


天羽と又賀(またか)は窓の外にある無数の雨水を眺めていた。


「雨…すごいですね。」

「珍しいねこんな大雨。てるてる坊主でも作る?」

「てるてる坊主でどうにかなる雨じゃない気がします。」


辺りからは雷が鳴り響き、川の水流は加速するばかりだった。

昼過ぎなのに空は薄暗く、木は風によって暴れ回っていた。


「11月なんですからそろそろ雪が降って欲しいですけどね…。」

「雪…。」


ゴォォォオオオン!


雷鳴が轟いた、次の瞬間。


パチン。


「あ。」

「電気、消えましたね。」


雷によって近原の街が闇に包まれた。


「他の家も消えてるし…停電かな。まぁ、ほっとけば直るでしょ。」

「まだ15時過ぎくらいなのにすごく暗いですね。」

「あ、もう15時?柊華(しゅうか)ちゃんおやつ食べよー。」

「そんな呑気でいいんですか。まぁ、食べますけど。」


おやつを食べて、天羽と又賀は日を越し、近原には晴天が訪れた。


「んー、いいね。久しぶりの気持ちいい朝日だ。」

「湿度がすごいですね。」


少し朝日を堪能し、事務所に戻った。


ーーそして次の週。


「ねぇ、柊華ちゃんこのニュース見た?」

「あぁ、怖いですよね。」


天羽が持ってきたニュース記事にはこう綴られていた。


『先週の大豪雨の影響で、自転車で下校中の女子高校生が橋から転落。行方不明に。停電も原因か。』


[11月10日午後5時頃、大豪雨による停電の中、近原市内の◯◯橋付近で、自転車で下校中の女子高校生が行方不明になった。


一緒に下校していた同級生が、近原駅に到着した際、行方不明の女子高校生がいないことに気づき、警察に通報。

警察の捜査により、橋の下で自転車が発見されたが、本人はまだ見つかっていない。

停電により街灯が消えていたことが、事故の原因と見られている。

行方不明になっているのは、近原市在住の高校2年生、佐藤(さとう)環奈さん(17)。


警察は、佐藤さんが橋から転落し、川に流された可能性があるとして、捜索を続けている。]


「まだ見つかってないんですってね。」

「そうなの。この子、流されちゃったのかな。」

「心配ですね…生きてるといいですけど…。」


ーーまた1ヶ月。


12月、又賀が以前望んだ通り、雪が降っていた。


二人は前の大豪雨の時のように窓の外を眺めていた。


「雪ってなんか見てるだけで落ち着きますよね。」

「ん…うん。」

「あまり好きではないんですか?」

「指先が冷えちゃうから…ね。」


天羽は自分の手のひらを見つめた。


「どうかしたんですか?暖房でもつけますか?」

「いや、大丈夫。」


又賀が投函された新聞を読んでいるとある記事が目に止まった。


「…前の大豪雨で転落しちゃった女子高生、やっと見つかったんですね…。」

「そうなの?まだ読んでないや。」


又賀の見た記事にはこう書かれていた。


『先月、橋から転落した女子高生の遺体発見か。』


[12月17日午前10時頃、近原市内の◯◯橋の下流約5キロ地点で、腐敗の進んだ遺体が発見された。


遺体の身長、財布の中の身分証、衣服などから、先月11月10日に橋から転落し、行方不明になっていた女子高校生、佐藤環奈さん(17)の遺体と見られる。

遺体は約1ヶ月間、川を流され続けたと見られ、水流で岩などに叩きつけられたため、損傷が激しい。

顔の判別は困難で、歯や骨も多数折れていた。

警察は、DNA鑑定により身元を確認する方針。

佐藤さんは、11月10日の大豪雨の日、自転車で下校中に橋から転落したと見られている。]


「亡くなってたんですね。」

「可哀想に。」


天羽もその新聞を見ていた最中。


コンコンコン。


事務所の扉がノックされた。


「はい、どうぞ。」


ガチャ。


扉が開き、高校生くらいの女性が入ってきた。


「すいません。ここが探偵事務所ですか?」

「ん?あぁ、いらっしゃい。」


高校生くらいの女性が入ってきた。

天羽は、笑顔で女性を迎えた。


女性は、少し緊張した様子だった。

又賀は慣れた手つきで暖かいお茶を出した。


「…依頼、したいんですけど…。」

「はい、喜んで。依頼内容について詳しくお願いします。」


女子高校生は席に座り、天羽はと対面した。


「私は井原(いばら)沙織(さおり)といいます。えーっと…先月、女子高生が橋から転落した事故…知ってますか?」

「あぁ、知ってますよ。」

「私があの事故を通報した者です。」


天羽と又賀は目を見開いた。


「ほう?」

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