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2部 スペルブースト 編  9章 忙しい日々 1話

「やっと終わった」

 追試3日目の全科目が終わった5月24日、とうとう雨が降り始めた。

 しかし、今日は朝のニュースで降水確率20%の雨が降る予報だったのだから折りたたみ傘が鞄に入れてある。さすが俺!

 答案用紙を安場先生が集める。

「とうとう降りだしたかー」

「先生は傘持って無いのですか」

「ロッカーに折りたたみ傘入れてあるから大丈夫よ。それに私は車だからね」

 畜生、羨ましいったらないな。

「それにしても朝倉君、今回は大変だったね」

 先生は最後まで残っている俺に話しかける。

「ええ、まあお陰であまりテスト勉強ができてませんね」

「そう?でも結構今回は成績が良いそうよ、私の現代文の成績も良かったし、入院中に勉強してたの?」

「全然してないですよ、殆ど寝てたので、それで点数は幾らでした?」

「まだ教えてあげない。言えない決まりだから、でも余り勉強してないって割には今回の追試は手応え有ったんじゃ無いの?」

「何となく、できてる気がします。何か簡単だったような・・・」

「そう。私の教え方が良かったのね」

「先生は国語じゃないですか、他のテストの成績が良い事と関係が無いんじゃないですか?」

「そんな事無いわよー、国語の読解力が無いと問題を正しく理解できないでしょ?」

「それはそうですけど、それと・・・ほら数学の公式を覚えているかとか英語の単語を覚えているとかは違うでしょ?」

「そうでも無いのよ、読解力って言葉を理解するだけじゃなく自分なりに言葉を解釈して自由に使える事までを言うのよ」

 先生はにっこりとして手元の書類をまとめている。

「さて、私は職員室に戻って答案用紙の解答をしないといけないからね」

 先生は教室を出て行く、俺は昼飯を食べる為に学食に向かった。追試を4時限まで有ったから今の時間は既に12時40分。もう腹が減った。

 学食は意外と人が多いこんなに追試を受けていたのか?よく見ると違う制服の生徒も居る。そう言えばこの追試中に何か有ったのか?

 豚汁定食の食券を持ってカウンターに付き盆に載せられた料理を持ってテーブルに着く。

 茶碗に盛られた大盛りご飯とコロッケとサラダ、メインの豚汁で3,500円とリーズナブルになっている。

 3,500円がリーズナブルな理由は円のインフレで10分の1に通貨価値が下がっている為だ。

 インフレで物価が上昇したが外資が大量に流入した為、所得もほぼ10倍になった事が通貨の価値が下がっているだけで国民の殆ど生活水準は下がらなかった。

 おれはさっさと飯をかき込みながら周りを見ている。あの制服って確か常徳学園の・・・。

 すると携帯にメッセージが来た。ポケットから携帯を取り出しメッセージを見る。

 真紗美からだ。

『今何処?』

 何だろう?

「今、学食で飯食ってる」

『これから時間有る?会って欲しい人が居るんだけど』

「いいけど。今日はこれから風紀委員(ブルーバンド)に行かないと行けないからその後なら」

『分かった。それで良いから終わったら連絡頂戴』

「良いけど、多分、夕方になると思うよ」

『それでも良いから、ちょっと時間欲しいの』

「分かった、後で連絡するよ」

 結構切羽詰まった話しなのだろうか?そこまでして合わせたい人とは誰なんだろう。

『分かった』

 食器を返却口へ返して一度教室に戻り教科書を鞄に入れて学校を出て、風紀委員(ブルーバンド)第15支部に立ち寄った。

「おつかれー」

「お。朝倉、追試終わったのか」

 珍しく渡邊が支部に居る。そして、溜まっていた巡回報告書を書いている。

「やっと終わったよ、何しろ全教科追試だったからな」

「入院してたからな、テスト勉強もする時間無かっただろう。昨日もなんか色々遭ったとか聞いてるし」

 渡邊は椅子の背もたれにもたれ掛かりながら言った。

「そうなんだけど何とかなりそう」

「そりゃ良かった。成績悪いと中野にぶっ飛ばされずに済むな」

 さらに渡邊が茶化す。

「先輩、今日からですか?あの・・・その・・・昨日は大丈夫だったんですか?」

 浅野が事務所の奥から出てきた。俺は机の上に鞄を置いた。

「大丈夫、この通り」

 俺はわざと腕の力こぶを見せる。浅野は備品整理を一旦中断して給湯室にむかった。

「でも昨日、麻美先輩の服にべったりと朝倉先輩の血が付いていたから心配になって、後で麻美先輩に電話したら大丈夫だって先輩言っていたのですけど」

「ああ、藤井先輩が病院へ付き添ってくれたから大丈夫だよ」

「そうなんですね、良かったです。お茶飲みます?」

「有り難う、貰うよ」

 席に座ると浅野が俺のマグカップにお茶を入れて持ってきた。

「それで先輩、今日は何か有るんですか?」

「これから藤井先輩と昨日遭遇した事件の事情聴取が有るんだ」

「事情聴取?昨日の事件ってそんなに大事だったのか?」

 渡邊が不思議そうに訪ねる。ブルーバンドの通常パトロールでは報告書の提出だけで終わるが、今回の様にメンバーが病院送りになったりすると事情聴取を受ける事が有る。

「まあ仕方無いだろう、俺が昨日病院送りになったんだし、逮捕者が30人超えた事は珍しいしな」

「そんな大事件だったのか、それでお前良く生きていたな」

「俺もそう思うよ」

 報告書を書いていた手を止めて俺を見る渡邊に言葉を返した。

「藤井先輩は?」

 さらに何か言おうとしている渡邊の話しを腰を折るべく浅野に訪ねた。

「今さっき外へ出て行きましたよー」

「ただいま、もう朝倉君来てる?」

 藤井先輩の声が事務所入り口から響く。

「お疲れさまです。今来た所です」

「良かった。ほら、昨日の件について説明しないといけないから」

「ああ、今聞きました」

 藤井先輩の後ろに男女が2人着いてきている。恐らくシティー・フォークの隊員だろう。

「じゃあ、こちらへ、直ぐにお茶を入れますので、朝倉君、資料用意してくれる」

「あっ、はい分かりました」

 藤井先輩はあえて俺に指示を出す。隊員は「いえいえ、お構いなく」と言いながら応接室へ案内した。

「資料を用意しますのでお待ち下さい」

 応接室の扉を閉めると、俺の所に近づいて小さな声で話し始めた。

「昨日の能力の話しはするつもり無いんでしょ?」

「ええ、能力の話はしません」

「じゃあ、相手が使った炎の魔法は私達の手前で暴発したって事で良いわね?」

「それでお願いします」

「オーケー、じゃあ行きましょう」

「それより先輩、この資料を何時の間に?」

 手元に有る昨日の事件に関するレポートを見て訪ねる。

「企業秘密よ」

 藤井先輩は笑いながら先に応接室に入っていた。


シルビア編 行き詰まってしまいました。

挙げ句の跳ねてに1年が経ってました・・・。

残業で進みません

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