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2部 スペルブースト 編  9章 忙しい日々 2話

「失礼します」

 俺はレポート5枚分程度の報告書を持って応接室に入った。藤井先輩にも同じ資料を持っている。

「今日はお時間を取って貰いありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」

 藤井先輩が挨拶すると男が返事をした。

「私は学研警備隊の魔法対策部の山田と言います。今日は宜しくお願いします」

 スーツ姿の女性が名乗り、俺と藤井先輩に握手を求めた。

「私は中村、よろしくお願いします」

 続いて隣の男性が答えた。

「はい、こちらこそお願いします」

 俺も差し出された手を取り言葉を返した。今回、事情聴取は受けるのは今回が初めてだ。

「それでは、聞き取りを始めます。まずこれが資料ですか?」

「はい、そうです。昨日の事件についてまとめましたが急ごしらえだったので多少の説明が足りない部分も有るかと思いますが」

 山田さんの質問に藤井先輩が応じる。

「まあ、その辺りは聞き取りを進めながら付け足していきましょう」

「分かりました」


「ではまず、最初に書かれている処刑とは何処で行われていましたか」

 レポートを読みつつ山田さんは訪ねた。

「BW23地点の廃ビルです。時間は夕方4時位だったと思います。最近話題になっていました救急搬送された学生の話が気になりましてパトロールで巡回していた時の事です」

「そのビルは以前12芒星魔法陣が設置されていたビルでした」

 藤井先輩の説明を俺は補足した。

「それは私達も把握しています。あの一帯は放棄されたビルが多いので治安が著しく悪化している事から再開発をするように設計理事会に嘆願しているところです」

 設計理事会とは『学研都市都市設計理事会』の略称で学研都市の最高機関で街の全権限を持っている。

「そこで1人の生徒に対して30人程で囲み1対1で決闘?と言っても一方的に攻撃していた様に見えました」

「それで、処刑と言ったのですか?」

「はい、そういう事になります」

「それで、被害者はどうでした?怪我とかは無かったのですか?」

 藤井先輩との話しが一段落した所で俺も質問をする。

「ええ、被害者の名前は公開出来ないけど命の別状は無いわ、ただ骨折や打撲で全治3月の重傷だけどね」

「そうですか」

「ただ、被害者も加害者も所謂マジックアローだって事ね」

「仲間割れですか?」

「そこはこれから分かるでしょう?それより、どうして貴方達と争いになったのですか?その様な状況でしたらその場から待避して我々に通報するのが最善ではないですか?」

「見張り役が居る事に気が付くのが遅れて見つかったのです」

「見張り・・・ですか?」

 藤井先輩の答えに山田さんが疑問を投げかける。

「まるで巡回しているかのように見回っていました」

 俺も藤井先輩の説明に補足をした。

「貴方、藤井さんはレベル4のテレポーターでしたね?どうしてテレポートでその場を回避着なかったのですか?」

「私のテレポートにはクールタイムが必要になります。それと移動先の座標を感知する必要も有ります。戦闘時に安全な座標を感知する余裕は有りませんでした」

「短距離なら目視でも可能なのでは?」

「確かに可能です。しかし私の場合最大2.5秒のクールタイムが必要です。そしてテレポートを行う度に安全を確保しないといけないのでそう簡単にはい行きません」

「そういう事なら分かりました。まだ貴方も学生ですから能力を使った実戦経験はありませんよね」

「ええ、残念ながらそうですね」

「それにしても随分警戒心の強いグループだったようね」

「そして見つかった時に『狩れ』と言っていたので逃げる選択肢を取りましたが、見張り役が私達の行動を把握していたようで逃げ切れずに争い・・・戦闘になりました」

「争いでは無く戦闘と言い直した訳は?」

 藤井先輩に山田さんは訊く。

「報告書に書いていますが、相手は不正に攻撃力を上げたデジタル魔法で攻撃してきまして、ただ、そのプログラムが正常に発動しなかったのか暴発して私達に当たらなかったのが幸いでした」

「攻撃が当たらなかったのですね?」

「はい、途中で上に軌道が逸れて暴発してました」

 念押しして来る山田さんに俺も藤井先輩に追随して答える。

「軌道が変わる事なんて有るのか?」

「それは私にも分かりません、デジタル魔法の不正プログラムのせいでなったのでは無いでしょうか?」

 中村さんの疑問に藤井先輩は疑問で返した。

「中村君、ここはキングローズ社に解析を依頼した方が良いでしょう、デジタル魔法を使った生徒達は確保しているのですから」

「そうですね、デジタル魔法についてはその方が確実ですね」

「所で、朝倉君でしたね、我々が到着した時、現場に貴方の血液が大量に飛散していましたが体の方は大丈夫ですか?」

「えっ、あ、大丈夫です」

 しまったと思った。山田さんの思わぬ発言に言葉が詰まった。

「あの後、直ぐに病院へ行って適切な処置をして貰いましたから、大丈夫だと思います」

 ナイス藤井先輩のフォロー上手く誤魔化せるか。

「でもその割には怪我をした痕も無く綺麗に治っていますね」

「それは、回復魔法のお陰かと思います。学研都市には回復魔法を扱える人がいますから」

「おかしいですね」

「え?何がですか?」

「あの時間から後ろ2時間、周囲3キロで回復魔法の使用履歴が有りません」

「どういう事ですか?」

 藤井先輩が困惑気味に訪ねる。

「キングローズ社にデジタル魔法の使用履歴の紹介をした所、回復魔法の使用履歴が無いのです。それと朝倉君が搬送された病院の話だと、貴方は殆ど無傷で何処も異常が無い様子だったと聞いています」

「それは学生の・・・」

 藤井先輩が発言を取りやめた。何か考えている。

「それは、マジックアローの中で俺に使ったヤツが居るんじゃ無いですか?俺はシティー・フォークが到着する頃にはほぼ怪我が回復していたようですし」

 先に俺が山田さんに訴える。

「そうですね、不正プログラムにはキングローズ社の干渉を受けない回復魔法を使った人が居るんじゃ無いでしょうか?」

 藤井先輩も俺に乗っかるように訴えた。

「・・・まあ、その辺りはこれから逮捕した学生から事情を聞けば分かるでしょう」

「そうですか・・・」

「今日の聞き取りはこれで以上です。そちらから何か質問は?」

「有りません、有り難うございました」

 山田さん達は資料をまとめ鞄の中に書類を収めていく様子を2人は黙って見ていた。

「それでは失礼します」

「お疲れさまでした」

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