2部 スペルブースト 編 8章 能力の使い方 2話
――どうなって居るんだ?――
『ちょっと私もびびった』
まだ空を飛ぶには翼が小さいし飛ぶ為の筋肉量が足りなかった。
千切れた大胸筋の筋繊維を地面に墜落するまでの3秒で修復させ、さらに羽ばたくのに必要な筋肉を補強した。
『どう?空を飛んだ感想は?』
私の身体の一部、両腕の関節が短くすると同時に指の関節が伸ばし、指と指の間に膜を張り胴体まで繋がった状態にしている。
しかし、それに翼で体を支えるには腱の数が足りない。そこで胸から肘までの腱と肩から手首までの腱を新に作った。
実際のコウモリには存在しない腱でも有るが体重68キロも有る俺にはこうでもしないと支えきれなかったのだろう。
大きさは片翼およそ3m程の黒い翼、そう、見た目はもうコウモリの翼その物だ。
従って、風を受ける感触、翼で空気を掴む感触が指1つ1つ確実に伝わってくる。
そして飛ぶのに必要の無い足はその分細く短くしている。
――一体、今のこの姿ってどうなってるんだ?――
「さしずめ、ハーピーのコウモリ版って所かな」
――ハーピーって半人半鳥のゲームや漫画で出てくるモンスターの事か――
「話が早いな、私達の能力ならどんなモンスターにでも成れるかも」
――ドラゴンにもなれそうだな――
「成れるんじゃ無い?」
その大きな大きな翼を広げまたふわりと浮き上がった。
家からは13kmも離れているのにたったの2~3分で相生港の上空までたどり着いた。
そして、私は翼の形を少しずつ変えながら東へ向きを変え飛び続ける。
――1つ思ったんだけど良いか?――
「なに?」
――これだけの肉体変化ってどうやってしているのだ?――
「直接細胞から成長や再生を促している」
――細胞から?それって細胞分裂をする度に短くなるえっと・・――
「テロミアの事ね、そこまで来ると私にもよく分からないな、この能力が活性化している時は細胞の老化は考えられないけど」
――そう言えば、シルビアが言っていた事、気になるな――
「治癒能力者がのこ学研都市に居ない事か、もしかすると、研究者は不老不死の研究でもして居るのかな?」
――そうだとすると、細胞の老化を止められるかも知れないテロミアの短縮化の防止は不思議でも無いな――
「どちらにしても、この能力を知られる訳には行かないだろ」
――だから、もう一つの人格が形成されたのか?――
「それは、ただの偶然だと思う。ただ1つ言える事は私が居れば能力使うのに躊躇は要らないって事か」
――元々居ない人間が能力を使うの事は想定していないって事だな――
「そういう事、但し、裕貴と私が同一人物と知られなければ良いって事だろうな」
――藤井先輩には正体を教えたけど大丈夫かな?――
「あの人なら大丈夫でだろ、但し、今日みたいな能力の使い方はもうしない方が良いだろうな、勘の日いい人ならあの女や女刑事みたいに気付かれてしまう」
――あのシルビアって刑事の事だな――
裕貴も同じ事を考えていたみたいだ。シルビアって刑事なら口が硬そうだが組織の人間なんて信用出来ない。
眼下に飛行機が飛んでいるのが見える。ここは大阪空港が見えてみた。そこからゆっくり右旋回して六甲山へ向かっていく。と言っても速度は学研都市を飛んでいたときよりの倍の早さで飛んでいる様に感じる。
事実翼の形はさらに形を変え、片翼が4m程にまで伸び幅が短くなっている。そう言えば殆ど羽ばたかず滑空している。
「そう、今日の不良達にも何人かは裕貴の事を喋っている連中も居るだろうから、明日の事情聴取で訊かれるかもな」
――シティー・フォークだぞ、言わない方が良いのか――
「情報は漏れるものだろ?私達の能力を知っている人間は少ない方がいい」
――そうか・・・シティー・フォークは組織体だから情報が漏れやすいと言う事か――
「そう言う事、学研都市の企業からも運営資金を受けているから余計に情報が漏れやすいだろうな」
神戸を過ぎ、南に見える明石海峡大橋を横切りながら何も無い山中を飛行している。
「それより裕貴」
――なんだ?――
「今言った事で裕貴がしないといけない事有るでしょ?」
――なにか有ったか?――
「私の服は何時買って着てくれるのかな?」
――そうだな今週末には買って着てやるよ、どれでどんな服が良いんだ?――
「そうだな-、程よく可愛らしく且つ動きやすい格好かな」
裕貴は観念したみたいだ。別に私が裕貴とは違う男の姿になって買いに行けば事は足りのだがあえて言わない。その方が面白いから。
「どうした、裕貴?」
返事が無い、何か考えている。
――可愛くて動きやすい格好か・・・ミニスカートかな――
意外と裕貴は真剣に考えている様だ。
「それだと、戦闘中にパンチラを気にしないといけないだろ?」
――今、全裸のお前が言う事か?――
くそ!裕貴のくせに正論を言って来やがった。
――はっはっはー、ぐうの音も出まい――
私が言い返せない事を読み取った裕貴は勝ち誇った様にたたみかけてくる。
「くそー、裕貴のくせに」
――まあ、なんだ、確かスカートの下にパンツが見えない様にする何か有っただろ?――
「ペチパンツの事か?」
――ペチパンツって言うのか?それも買って置いてやるよ――
男の裕貴が女物の私の服を買ってくる気満々だ、自分の言っている事の意味を分かっていないのか?まあそれに便乗するとしよう。でも私が何時“ペチパンツ”を知ったと言うと、裕貴が寝ている時にパソコンで調べた。
別にわざわざ女の姿にならなくても裕貴の姿野間まで行動出来るのだから問題は無い。
裕貴からしたら夢遊病に近い状態かな?その知識は裕貴と共有する事が出来るが私の中で留めておいても良いのだ。
「頼んだわよ、下着も一緒に」
わざと可愛く言い返した。
――あっ!下着ってパンツとブラもだったな――
「そうよ、3着くらいは買って着ておいてよね、こういうの」
私は今まで裕貴が寝ている間にネットで調べた下着や服装の記憶を裕貴に見せた。
――こういうのが欲しいのか?――
一見、水着に近いスポーティーな下着、ちなみに紐パンだったりする。
「可愛いでしょ?」
――やっぱり、俺の服着てたらいけないのか?――
「それを綾香に見られたらどう説明する気?昨日みたいな苦しい言い訳をする気か?」
――・・・・・。――
これで『朝倉裕貴が女物の下着を買いに行く』フラグが立ちました。
アネットが羽ばたくのに変化した”コウモリ”の翼は滑空に向いていないようです。理由はコウモリ自体の体が小さく滑空出来ない様です。しかし、鳶や鷹くらいの大きさに成ると余り羽ばたかず滑空します。その大きさに成ると滑空した方が空を飛ぶのに効率が良いそうです。




