2部 スペルブースト 編 7章 終わらない不幸な1日 3話
「さて、邪魔が入って途中だった私の能力の話しですが・・・」
「そうね、続きを訊かせて」
藤井先輩も気分の切り替えが早い。直ぐに真剣な顔つきになる。
「なんで秘密にしなくちゃいけないかって話しの前にまず、今日使った能力です」
私は右腕を突き出す。右腕が黒く鏡の様な光沢を帯びだしくると先輩はその腕から私へ視線を移した。
「これは?」
「肉体の硬化です。銃弾を跳ね返す位の堅さが有り全身このようにする事が出来ます」
「これは・・・凄いねー」
藤井先輩は私の腕を触り、肘の関節を曲げたり伸ばしたり、また手の指の関節を触りながら伸ばしたり曲げたりしてる。
「でも、表面は凄く硬いのに随分しなやかに動くのね」
「それが能力だからね」
「じゃあ、あの炎の攻撃を受けたときはどうだったの?全身血まみれだったじゃない」
「ボディートランスは何も私が私の意思で身体を変化させると言うわけでは無いわ」
「え?」
「つまり怪我や火傷と言ったダメージも“外部からの肉体変化”と捉えれば同じ肉体変化でしょ?」
「そう言う事・・・でもそのダメージって何処まで耐えられるの?いつまでもダメージを受けて大丈夫って事は無いんでしょ?」
「それはまだ私も分からないわ、以前に胴体切断のダメージを受けた事は有るけどそれで3日寝込んで居たわね」
「胴体切断ってどういう事?」
先輩は冗談でしょ?と声を上げた。
「胴体が上下に真っ二つになったのよ」
「普通、死ぬわよ?」
「死んでないでしょ?それがボディートランスって事よ」
「そうか・・・じゃあ例えば腕が千切れても“外部からの肉体変化”と言う訳か・・・でも」
「なんで、入院していたか?でしょ」
「そうよ、どうして?」
「そうね、それ程の肉体変化と言っても体力を消耗するから動けなくなったの、最低限の生命維持機能だけ残して体力回復に努めたのね」
「そういう事か、それで、その時の姿って誰だったの?」
「裕貴の姿だったわよ、まだ能力を覚醒させて私自身能力がどれ程使えるのか分からなかったし、あの時は裕貴の姿で居るときに事件を追っている刑事と行動を共にして、そのまま素手でオートマトン2体と戦って・・・」
「え?オートマトンって戦闘用のロボットの事?それを素手で倒したの?」
「そうよ、こうやったの」
私は黒くなった右腕は黒い色のまま綺麗な剣の形へ変えていく。
「これで斬ったの?」
「そうよ、これでオートマトンを斬ったのよ」
私の一言に藤井先輩は暫く黙ってしまった。何か考えている様にも見える。
「大体の事は分かったわ、それにしてもこれだけの能力、レベル5クラスじゃない?何故知られるといけないの?」
「それは私にも分からないわ、ただここからは私の仮説になるけど、学研都市に居る研究者の中には非合法な研究・・・例えば人体実験に近いやり方で能力者を開発している場合、治癒が出来る能力者は都合が良いとは思わない?」
「それは人体実験の事実を無かった事に出来るって事?」
私は藤井先輩に頷く。
「そう、今、学研都市では治癒が可能な能力者が居ないのも何か関係が有るのでは?って刑事さんは見てるみたいね」
「これだけ沢山の能力者が居て治癒能力者が居ないのはおかしいわね」
「まだ捜査中って事でしたけど、何人かの学生が行方不明になっているそうなんですがその事と何か繋がりがあるのでは無いかと疑っているみたいね」
「それじゃあ、貴方の仮説が間違っていないって事?」
「まだ分かりません、ただ、刑事さんはその仮説に基づいて私の能力秘密にする様に言っているとすれば」
「もしも学研都市内で非合法な人体実験が行われているとすれば、肉体変化って最高の逸材って事ね」
「そういう事です。能力者の研究はまだ始まったばかりだから、能力開発は安全だと言ってはいるけど私達にどんな副作用が有るかすら照明された訳では無いから、私のこの能力はとても都合が良いでしょうね」
藤井先輩はいつの間にかあぐらをかいた姿勢のまま腕を組む。
「私も貴方と朝倉君の能力を秘密にするわ、それで朝倉君の今の能力なんだけど、他に誰に話したの?」
俺は徐々に元の姿に戻りなら能力話した人数を思い返した。
「恐らく、『治癒』と言う言葉を使ったのは、ときわ病院の救急外来の先生とその時に居合わせた綾香、渡邊と・・・ダメだ結構話ししてるな」
「それって何時の話し?刑事さんに口止めされる前の事?」
「そう言えば・・・そうですね、それにその時はデジタル魔術師の人に治癒魔法を掛けて貰ったらからそれで治ったってことにすれば辻褄が合うな」
「治癒魔法、それは手術台を召喚する魔法の事?」
「いえ、包帯の様な帯を召喚していました」
「そんな魔法が有るの?『ヒーリング・オペレーション』って言う手術台を召喚して治療するプログラムの事は聞いた事が有るのだけど」
「いえ、確かに包帯でした。地面に女性の絵が出ていました」
「魔法陣じゃなくて?」
「はい」
藤井先輩は目を閉じじっと考えている。
「先輩?」
「その人の名前と特徴覚えてる?」
「はい、以前、シフトフレイムと呼んでいた浦多香子と一緒に居た女子で名前は確か岡本・・浩子・・だったと思います」
「常徳学園の生徒か・・・なるほど、一度会ってみたいわね」
「そー、そうですね、どうにかして会えれば良いんですけど、それはちょっと知っている人が居ないか当たってみます」
「そうね、無理だったら私にも伝があるから言って貰える」
「分かりました」
岡本浩子・・・。まず学校が違うからなかなか接点が無いがまず、うちの学校で接点が無いか聞いてみるしかない。
「それじゃあ、私はここで帰るわ」
「送っていきますよ」
「いいわよ、それに中野さんの所行かないと行けないのでしょ?」
「じゃあ、これ、持って帰って下さい」
俺は冷蔵庫から昨晩作っておいたタッパに入った煮込みハンバーグを取り出した。
「あら、美味しそうじゃない」
「綾香はあんな事言ってますけど、俺だってちゃんと飯作れますから」
「じゃあこれ晩ご飯にさせて貰うわね、有り難う朝倉君」
「大した事じゃ無いですよ」
「明日は事務所に来るの?」
「はい、そのつもりです」
「分かったわ、タッパは明日返すわね、それじゃあ」
藤井先輩が帰った後は・・・何か憂鬱だ、綾香、一体何を言ってくるだろうか。
このシリーズを書いていて(筆者が)一番面白いのがこのシリーズです。
シリーズの中で一番書きやすいのが「岡本浩子編」ですね。
一番も字数が多くなるのが「シルビア編」だったりリします。
今も修正待ちのシルビア編が溜まっています(汗




