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2部 スペルブースト 編  6章 覚醒 1話

少し間が空きました。前半?のクライマックス?公開します。

「朝倉君!」

 藤井先輩が叫んでいる。

 後頭部が地面に叩きつけられスイカが割れるような音が鳴り、周りの景色の色が無くなり白黒の輪郭線がぐにゃりと曲がり地面が何処なのかも分からなくなっている。

――後頭骨砕けて骨が髄膜破ったわよ!――

 アネットの叫び声が聞こえる。その後少しすると再びアネットからの声。

――髄膜再生した。後頭葉が潰れている生成に時間が掛かる。敵との距離感に気を付けろ――

 後頭葉、目から入った視覚情報を処理する部位だ。

 視界はまだ白黒の2色だが、空間の歪みは無くなった。

――頭頂葉(とうちようよう)へバイパスした。無理はするな――

『分かった!』

 地面に倒れたままの俺を見下している不良少年と、さっき撃った奴が睨み付けている。

「オラオラ、どうした?もう終わりかよ?」

 さっきの蹴りで後頭部陥没骨折、頭の打ち所が良い悪いの話では無く普通なら死んでいるのだがこいつ等、力加減が分かってないのか?

 しかし、そんな事はお構いなしに俺の左脇腹を蹴ってくる。しかし痛覚はもう感じない。

「止めなさい!朝倉君、しっかりして」

 藤井先輩が俺の頭元へテレポートして俺に蹴りを入れた不良の右腕を掴み腕を後ろにいなしながら投げ飛ばした後、俺の前に立ちふさがっている。

「うっせー!」

「きゃあ!」

 俺を蹴っていた少年は藤井先輩を蹴り飛ばした。

 俺は静かに上体を起こし、手足の感覚を確認した。

『状態は大丈夫か?』

 アネットに対して念じるように訪ねる。言って置くが声に出していない。

――大丈夫、問題無いわ――

『よし、1つ、反撃と行きましょうか?』

――不死身の裕貴、いっちゃう?――

『面白いな、それで行こう』

――オーケー――

「ふふ・・・痛ーじゃないか」

「朝倉・・・君?」

 ゆらりと不自然に身体を起こす俺を左頬を腫らし不安そうに見返す藤井先輩の姿を軽く流した。

「先輩下がって、俺がこいつ等ぶちのめすので」

 立ち上がって藤井先輩の前に立つ。

「でも、この人数を相手にするのよ、1人じゃ無理よ」

「試したい事が有るんです。やらせてください」

「・・・・分かったわ、危なくなったら直ぐ私も戦うから」

「それで良いです。後これ持っててください」

 俺は持っている銃を藤井先輩に渡した」

「良いいの?」

「先輩を殴るとか・・・キレているんです」

「おいおい、これだけを1人でやるってか?なめてんじゃねぇえぞ、オラ!」

 不良の1人が怒鳴りだした。そりゃ舐められていると思うだろう。俺もアネットの能力を信じていなければ絶対こんな事は言わない。

「ははっ、それがどうした?群れなきゃ俺様1人狩れない連中に、俺がやられると思ったのか?」

 はったりだ。でもやるしか無い。

――言うわね、面白くなってきたじゃない?――

 アネットが面白がっている。

『悪いがお前の力、借りるぞ』

――何を言っているの?この力、元々、裕貴の物じゃない?――

『そうだったな!』

「朝倉君、相手を煽るってどうして?」

 一応、俺が言ったとおり一応安全だと思われるビルの端へテレポートして様子を見ている。それと確認した俺は人数の一番多い正面へ単身で攻め込んだ。

――肉体強化――

「朝倉君、何故人数が一番多い正面へ突っ込むの?あれじゃあ袋叩きじゃない」

 藤井先輩は独り言と言うより訴えかけるように言っている。が、遠くて声は聞こえない。

 だが何も考え無しに突っ込んでいる訳では無い、人の密集する所では打撃系の攻撃は同士討ちになりかねないので意外と攻撃されない。そして範囲攻撃型のデジタル魔法では攻撃が出来ない。

 そう、相手は折れに対する攻撃手段が限られてくるのだ。一方、俺の方は相手に攻撃の威力を押さえられたり後ろからの攻撃に注意さえしていれば、さほど攻撃を受ける事が無い筈だ。

 飛び込む様に真っ正面に居た者と交わす間際にラリアットで吹き飛ばし、そこから迫るビルの壁の前で飛び上がった。

 そこから壁を蹴りさらに飛び上がりながら方向転換をして、後ろから近づいて来たもう1人の顎に蹴りを入れた。

 一連の攻撃で周りに居た不良達の様子が少し止まった。

「全員でモロ投げろ!」

 何処からかそんな声がする。向かい合った3人の内2人がスマホを操作を始めた。

「させるか!」

 1・2歩で一気に5mの距離を詰め殴り掛かる。

「!」

 左後方から炎が迫る。運が悪くその瞬間の0.1秒は足が地面から離れていて交わせない。

「ぐっぁ!」

 後方からの炎の直撃を受け、左右からさらに3発、第2波攻撃で5発、合計9発と動ける連中が火炎系のデジタル魔法の攻撃を仕掛けた。

 藤井先輩は不意に来た爆発に反応が遅れ、ビルの屋上から全く手が届くはずの無いのに手を伸ばした。

「朝倉君・・・」

 先輩はそのまま膝を床に付け項垂れた。

『大丈夫だな?』

 俺はアネットに念じた。

――問題無い、この程度ならね――

 炎の中で俺は自分の手を見た。表面は黒く鏡のように艶が有りそして硬くなっている。

 爆発を耐えたせいか服も随分焦げているが割と残っていた。

「おい、これはちょっとやばいんじゃ無いか?」

 不良達からそんな声が聞こえて来た。

「知るかよ、お前がモロ使えって言ったんじゃないかよ」

「とにかくここから逃げるぞ!」

「待ちなさい」

 藤井先輩は退散を始める不良達に、テレポートでビルとビルの間の通路へ涙ながらに立ちふさがった。

「ふふふふふ、はははは・・・」

 思わず声がこぼれた。まさか俺の能力はこれ程までだったとは。その声を聞いた何人かが振り返った。

「なんで、生きているんだ?」

「逃げる気かよ?まだ終わって無いぜ?」

 治まった炎の中から姿を現すとまだ少し燃えている服を破り捨て、あえてゆっくりと歩を進めた。

「朝倉君?無事なの?」

 藤井先輩は振り返るなり2・3歩後ずさりし卒倒した。

「はい、全然、傷1つ付いていませんよ」

 笑みを浮かべる俺の身体は全身真っ黒に焦げ、髪の毛や肩などまだ表面が燃えたまま全身から血が噴き出しその姿を見た不良達も息を呑んでいる。

「おっと」

 倒れる藤井先輩へ一気に駆け寄り先輩の頭が地面に着く迄に身体を支え、その場に寝かせた。その時、俺の血が先輩の服にべったりと付いてしまった。

「あんた達、このままで済むと思わないでよ!」

 俺もさすがに頭に来ている。今朝、能力を覚醒したからこんな状態でも生きていられるがそうで無かったら、全身の8割の面積のその殆どが皮膚はおろか皮下脂肪まで消失する4度以上の大火傷を負った。普通なら死んでいる。

 だが幸い、息を止めていたので肺の中には炎が入らなかった分、肉体再生は早く終わるだろう。

 不良連中もこの状態が分かっているだろう。今まで俺の後ろで倒れて居た3人程が意識を取り戻した途端、うわああと悲鳴を上げながら反対方向へ逃げだした。

 私は足元に落ちている直径3cm程の石を拾い3人の前に投げた。

「うわあああぁぁぁ」

 野球の投球フォームで投げた石は簡単に音速を超え、悲鳴を上げながら尻餅をつく3人の前のビルの壁には10cm程度の大きな銃創が出来ていた。すっかり恐怖に駆られ腰が抜けた様子で怯えている。

「・・・逃げんな」

 破れ大きな穴が開いた頬の皮が塞がるのを待って俺は3人に向かって言うと、泣きながら頷いていた。

「お・・・女?」

 ――え?――

 声が出ない。と言うかさっきの声は俺の声では無く女の声だった。


7月9日、誤字発見し修正しました。

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