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2部 スペルブースト 編  3章 声 2話

いよいよ、第1主人公、シルビア編を公開しました。

第1部「12芒星魔方陣」編ではシルビア編を軸に朝倉裕貴編や岡本浩子編での出来事が繋がっています。

まだ序盤はプロローグとしての意味合いが強いですが、楽しみしてください。

「何処か具合の悪い所は無いですか?」

「はい、とくに何処も何とも無いです」

 医者はこの病院の中でも最も名医と呼ばれているらしい、聴診器を当てて心音を診てレントゲンを見て首を傾げる。

「特に外傷も病気でも無いのに3日も昏睡状態だったから意味が分からなくてね」

「そうなんですか」

 医者は俺の目を見ながら一方、左手で自分の顎を撫でている。

「君ってもしかして何か能力の発現に成功したんじゃない?」

「一緒に居た刑事さんの治癒魔法のせいでは無いのでしょうか?たしか魔法使いと言う話でしたけど」

「だが発見した警備隊の話だと君の周囲に有った多量の血液は既に致死量だったと報告だったが」

「それが治せるのが魔法なんじゃ無いですか?」

「まあ、それを言い出したら私の出る幕は無くなるのだがな」

 医者はそれじゃあ私は廃業だよと笑っているがそれと同時に魔法でしか治せない治療が有るのならそれを科学の力で治せる様に技術革新をするのも医者の努めと言っていた。

「まあ、それならそれで経過観察をしたいから後2・3日入院して貰うよ」

「まあ、実験台ですね?」

「人聞きの悪い事を言わないでくれ、まだ魔法が人体にどんな影響を与えるのか十分な研究がされていないから様子を診る。と言ってくれないか」

「同じ事じゃないですか」

 俺も医者も笑った。

 診察の後、採血とCTを撮った後、再び病室に戻ると綾香達が待っていた。と言うか女子ばかり4人とは・・・。

「朝倉君もう診察は終わったの?」

「はい、採血と後CT撮って来ました」

「CTって頭打ったの?」

「念のためだって」

 藤井先輩の返答に綾香は気になった様だ。

「でも目を覚まして良かった。このまま寝たきりだったらどうしようと思っていたの」

 橋本は胸をなで下ろしているが微妙に綾香が橋本に視線を遣っている。

「もう大丈夫だろう、明日から4人部屋に移る事になったから、綾香も随分心配させて悪かった」

「そうよ、とっても心配したんだから」

 ついさっきまで意識が無かったのだから当然個室だしまだ心電図計や酸素吸入器やらの機器が設置されている。

「じゃあ私、これで帰るね?また」

「橋本も毎日有り難う」

 橋本は綾香に気遣ってか早々に病室を後にした。

「じゃあ私達もそろそろ帰るわね、朝倉君、あとブルーバンドの件ちゃんと中野さんに説明しておきなさい。それと退院したら連絡してね」

「はい、分かりました」

 綾香は藤井先輩にまるで俺の母親かのような、一方で先輩を立てる様にお辞儀をして居る。

「じゃあ先輩、テスト頑張ってください」

 浅野は去り際に悪態をついた。

「テスト・・・?あ。中間テストいつからだった?」

 病室に独り残る綾香に聞いた。

「え、明日からだけど」

「うわー」

 俺は思わず悲鳴を上げた。


 入院中は暇だ。特に普通なら学校で事業を受けている午前中は特に暇だ。「それなら自習すれば良いのに」と問診に来る看護士が言うが4人部屋では何となく集中できないと言うかやる気が起きない。

 まあ自分に都合の良い言い訳な訳だがとりあえず綾香が部屋から持ってきたノートをパラパラと捲りながらどうして俺の部屋の物が何処に有るか分かっているのだろうと考えまさかアレの場所も知っているのではと不安になって来た。

 気を取り直して病院の屋上庭園に出て設置してあるベンチに座った。

 初夏の日差しが暑く感じられる5月18日晴れ、ここ2・3日曇りや雨の日が多かったせいか屋上で洗濯物が所狭しを干してある。

 清掃員が乾いたシーツを取り込んでいるとフェンスの前で立っている人が居た。洗濯物で隠れて見えなかったのだ。

 体格から俺と同じくらいの歳の少女で長い髪を1箇所で縛っている。病院の中なのだから当然なのだが長袖長ズボンのパジャマでずっとフェンスの向こうを見ている。

 何となく気になってベンチから立ち彼女の所に向かった。

「言い天気ですね」

 俺は声を掛けると同時に彼女の横に並びフェンスの向こうを見る。先週破壊された筈のライトライナーの駅や第1ジオフロントの跡地が見える。

 ライトライナーの方はもう仮復旧して既に車両が走っている。

 彼女は一度俺を見ただけで何も言わずにまたフェンスの向こうを見つめた。

「暖かいと言っても風に長く当たると体に悪いですよ?」

 返事位できるだろ!と思いつつ気を取り直してもう一度話しかけた。

「・・・の」

「え?」

「いいの、私はこのままで」

「なんで?」

「・・・」

「まあいいや、俺は病室に戻るよ、こう見えても体弱いからな」

 俺は病棟の入り口に向かって振り向いた。

「ちょっと待って」

「なにか」

「貴方、名前は?」

「え?え、あー、俺は朝倉裕貴、そっちは」

「私は宇田川(うだがわ)真代(まよ)、大誠学園の3年生よ」

「と言う事は綾香と同じ学校の・・・。俺は成神高校2年。宜しく、宇田川先輩」

 宇田川先輩はまたフェンスの向こうを見つめているが、やがてこちらに振り向いた。

「見たところ元気そうだけど、どうして入院しているの?」

「先日のテロ事件の事は知っていると思うけど、その事件に巻き込まれちゃって・・・それで入院、明日には退院だけどね」

「そう、なんだ」

 しまった、ここは病院なのだから入院生活が長く精神的に落ち込んでいる患者だって居る。

「大丈夫ですよ、直ぐに先輩も退院出来ますよ」

 フォローになっているのだろうか?宇田川先輩の表情は少し明るくなった気がした。

 昨日までの雨が止み水溜まりが乾く清々しい風が宇田川先輩の髪を撫でた。

「フフ・・。私も明日退院出来るの」

「え?そうなんですか?おめでとうございます」

 慌てる俺を見て楽しむように宇田川先輩は笑った。


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