2部 スペルブースト 編 1章 能力者の少女1 2話
男は不意に目の前い現れたワイシャツ姿の女に驚き背中に用意していたUZIを構えた。
「こんな所で何をしているの?」
「はあ?」
近くで見ると思っていたより体格の良い男、後ろの地面に青い模様が光っている。
「後ろで光っているのはこの学研都市を不可侵空間にする為の魔法陣?」
女の言っている意味が分からない、不可侵領域って何だ。
男までの距離はおよそ7mほど、男は驚いている様だが全く表情が変わらない、と言うより人形様に無表情だ。
男は後ろに二歩後ずさりする。
「そんな物は私には効かないわよ」
「そんな格好で何を言ってるんだ?誘っているのか?」
UZIを俺に・・・と言うより女に銃口を向け数発撃つ。
「言ったでしょ?そんな物、私には効かないって」
「はぁ?何を言っていやがる。お前の体を見てみろ」
女は自分の胸元を見下ろす。銃痕から血が噴き出している。そして男を見上げた。
「この程度で私が死ぬと思っているの?」
「だが急所だ。放って置いても後15分もあれば失血死する」
「だから、その程度では私は死なないわ」
女の体に撃たれた銃の傷痕はたちまち消えてった。
「おま・・・何を言って」
男はさらに私に撃つ、右横腹、左胸、眉間と次々に命中する。どれも急所で場合に寄っては即死する部位ばかりだ。しかし。
「何故、立っていられる」
男は怯えている。
「言ったでしょ、そんな物は私には効かない・・・、と」
事実、撃たれた部分から弾丸が何事も無かった様に体から出て傷口が次々と塞がっていく、撃たれた衝撃で前に進めなかったがやがて、一歩一歩、歩き始めた。
「それで、その魔法陣、破壊させて貰うわ」
しかし、男は耳に入っていない。そこへ後ろに居た男達が倉庫の壁を盾にして援護射撃を私に向かって撃ってきた。
正面に居た男は援護射撃を受け目の前に手榴弾を投げ後ろに飛び退けた。大きな爆風と衝撃で女は吹き飛ばされた。それだけでは無く手榴弾の中に鉄弾が入っていたらしく爆風と共に体を切り刻まれる。
「くそ!改造爆弾なんて」
女はそう言いながら立ち上がり右腕を振り回した。2mは後ろに下がり猫が威嚇する様に四つん這いになっている。
それと同時に女の後ろから全身を焼き尽くす熱と爆風に包まれた。
爆風を背中に受け仰け反る体勢になった時。背中から炸裂する。
「?」
ギミックの放ったロケット弾が命中し腰の辺りの胴体が吹き飛び腸や腎臓が蒸発し、また風圧で目の前に対峙している作業着姿の男を飛び越し後ろ迄およそ15m飛ばされた。
「く!」
体はスファルトの地面に右肩から墜落した。
普通に歩くとなだらかな地面だが肌と直接こすれるとすり鉢の様に皮膚が削れ肉がもげ骨に到達し、上腕骨が削れ肩部分の関節が無くなってしまった。
脇の部分の皮一枚で右腕が繋がっている状態だ。
血が心臓の脈と連なって噴き出しだらんと垂れ下がった右腕を左手で支えながら身を返し相手へ跪く格好で見上げる。
着ているシャツは右の首筋から右腕までの生地が無くなって裾もボロボロだ。それに撃たれた部分のあちこちに穴が開いて左胸の下部分に大きな穴が開き、穴の開いた胴体は背骨と脊髄のみが残っている。
女の居た後ろから男にギミックが1体近づいていた。どうやらそいつからロケット弾を打ち込まれたみたいだ。1発目は女の足元、2発目は直撃、3発目も打ち込まれている。
そうで無いとここまで吹き飛ばされる事は無いだろう。
さらにもう1体のギミックが現れた。ギミックとは人が乗り込めるパワードスーツで戦闘用に特化した物だ。
分厚い装甲と幾つも銃火機を装備していて威力こそは戦車に及ばないものの、機動力ではその比では無く格闘戦まで出来る為、先の戦争でギミックが初投入された戦場で有利に戦闘が進んだと聞いている。
何より戦場での戦死者の数が圧倒的に減った事が評価され、世界中で研究開発が進んでいる。
そのパワードスーツ、所謂ギミックが2体も居る。
「チッ、こっちは覚醒前だって言うのに」
この女の台詞は何を意味しているのかは分からない。どうやら女の体に俺の意識が流れ込んでいる様な事なんだろうか?この女が考えている事すら分からない。
ギミックの右腕の装甲が開いた。中から銃口が見える。そこからロケット弾が撃ち放たれる。女はロケット弾を左に飛び退けるが爆風でとうとう右腕は引きちぎれてしまった。
「ふう」
女は地面に寝そべったまま声に出した。胴体に開いた穴は起立筋が消失している為起き上がれない為だ。しかし、それもやがて解決する。吹き飛んだ胴体部分が再生を始めている為だ。
まずは背骨を巻き付くようにして肉体に必要な全ての筋肉が生成する。しかし筋肉はまだ薄い膜の状態で体を支えるには全く足りていない。
やがて少しずつ太くなりその内側で失った内臓の再生が始まると少しずつ太くなりやがて元の体に戻って行った。
そして女はふらりと立ち上がりちぎれた右腕の所までゆっくりと歩き拾い上げた。その間にも右肩からは血がしたたり落ちている。
男達は最初に私と対峙した者を含め4人、相変わらず銃を構え発砲してくる。
「化け物め、この絶体絶命な状況でまだ立てるとは、さっさと死んでしまえば苦しまなくても済んだものを」
女は腕を持ったまま男の方へ1、2歩進み腕を振り上る。
「女の扱い、成ってないわね、もう、これでも結構痛いんだから」
「五月蠅い、化け物を抱く趣味なんかねえよ」
ちぎれた腕を持ったままさらに後ろに下がり10トントラックの影に入り、ちぎれた腕を右肩に近づけた。
肩口からにじみ出るように出ていた血は止まり生々しくえぐれている肉から触手の様に筋肉が伸びてちぎれた腕を食いつくよに繋がっていった。
傷口は湯気が立ち上り骨が繋がり血管が繋がっていくと、ちぎれていて血流が無くなり黒くなっていた右腕が血色の良い肌色に戻っていった。
右腕の感触を確認すると盾にしていたトラックから離れ接近するギミック1体を横切ると倉庫から近づく2人の男のうち1人に接近し右腕で男の腹を殴った。
私の腕は男の腹を貫通し貫いていた。
「お前、本当の化け物か?」
「そうでも無いわ、ただの能力よ」
男を殴った感触は人間の物では無かった。これは機械、サイボーグと言う物。
「これだけの能力者が学研都市の能力者情報に載っていなかったぞ」
そう言った男の後ろのギミックからロケット弾が発射された。




