1部 12芒星魔方陣 編 15章 魔方陣の攻防 1話
そう言う間にも上下にリングが重なるとアーケード前の広場になっていた。俺は現在地を確認する前に近くに在った建物の影に隠れた。
「いい動きね」
後からシルビアが俺の後ろに付いて俺の耳元で囁いた。そう言っている間にもSATは銃から入れナイフやワイヤーに持ち替え3人2組でビル内へ進行していった。
「朝倉、まず前のビルを制圧する。中に狙撃兵が居るから」
「わかった」
俺達もビルへ進行していく。中は流行の衣装を着せられたマネキンが並んでいる。しかしまだ夕方で今日は土曜日、客が居てもおかしくない状況なのに人影は無く照明が消えている為建物の中は真っ暗だ。
「ここは何で人が誰も居ないのです?それにさっきのアーケードってヴィラタウンだった筈。そこにも何で誰も居ないのですか?」
屈み姿勢を低く保ったまま俺は声を潜めながらシルビアに訊いた。
「敵が人払いの結界を張っている。それも随分と分かりにくいようにカモフラージュしてね」
「でもそんな事をすると直ぐにばれるんじゃ無いんですか?」
「どうして?誰も人が居ないのに」
「そうか・・そうなるのか」
シルビアの説明に納得していると。目を閉じていたマリアが突然。
「ジュリアンがもう囮になって邀撃している。早くくここを制圧しないと」
「もう始まってるのね」
苛立つマリアの言葉を確認するかのようにシルビアも目を閉じ集中した。
「姉さん、やばいじゃない」
「幾ら力が有るって言ってもこの数はそう長く持ちこたえられないわね」
「敵の位置は確認したわ、愛達にデータ送るわ」
マリアとシルビアがデータのやりとりをしている間に俺はフロアで俺達以外の人の気配を感じた。正確には気配と言うより人の息遣いが聞こえる。
「誰か居ないか?」
俺はシルビアに後ろに在る非常階段を指した。
「え?」
俺は壁伝いに非常階段へ向かった。
「やっぱり、誰か居る」
ベレッタM800を構え進んで行く。入り口の壁際まで来たところで咄嗟に止まった。非常階段から銃弾の衝撃波が伝わる。
俺はそこから手を伸ばし銃だけを非常階段に向けようとするが、コンクリートの壁が剥がれる音。銃すら壁の向こうに出せる状況では無い。
こうなったら・・・
少し壁かから離れ勢いを付けようとすると後ろから型を捕まれた。
「何をしようと言うの」
シルビアが小声で怒った。
「一気に飛び出して反撃する」
「相手はプロよ、それもかなりの腕、敵の前に飛び出したら格好の的じゃない」
「しかし・・・」
「伏せて!」
俺はシルビアに右腕を引っ張られ倒れると同時に爆発が起こった。しかしそれほど大きな爆発では無い。
だがそれで十分だったのだろうシルビアは酷く咽せ涙を流している。催涙弾だ。
「くそ、やられたわ、ゴホ、直ぐにここを離れて、ゴホ」
俺は倒れた時にシルビアの腰の辺りに覆い被さる状態だったがそこから身を起こし非常階段へ飛び出した。真っ暗な建物の中で催涙弾の煙で視界が十分無い条件なら相手も油断している筈だ。
相手とは角で鉢合わせする。俺はこの時既に拳を振り上げていた。
拳は相手の顔面を捉え吹き飛ばした。
「ふあっ!」
俺はそのまま一歩踏みだし倒れた相手に膝落としした。肋骨を砕く感触が右膝に伝わる。アサルトの授業での組み手では経験の無い気持ちの悪い感触だった。
「ぐは!」
相手は口から血を吐きそのまま倒れた。右膝の乗った相手の右胸部から立ち上がった頃にシルビアはまだ咽せながら俺の所へやって来て倒れた男を撃ち殺した。
「貴方が殺したんじゃ無い。私がやったのよ」
その言葉で我に返った俺はシルビアがこの男に銃弾を4発も使ってとどめを刺したのだった。
俺は自分の右手を見ると拳の皮がぱっくりを破れ血が出ている。殴ったときに歯に当たったのだ。そしてシルビアが催涙弾でこんなに苦しそうにしているのにどうして俺は何とも無かったのだろう。
「何も殺す事は無いだろ」
「何言ってるの、人を殺すストレスに貴方はまだ耐えられない」
左頬の痛みと共に右を向いている。俺は再びシルビアの方を向いた。
「忘れたの。こいつらは学研都市を破壊しようとしているのよ、良いの?この街に住む仲間がみんな死んでしまっても」
今日合ったばかりのシルビアだがずっと前から知り合いだった様な感覚にとらわれた。
だがシルビアの事はは今までで一番強い表情だった。
「シルビア、準備が出来てる?ナビゲートして」
「分かったわ」
シルビアはマリアの所へ走り並ぶと目を閉じ意識を集中した。
シルビアの足元に魔法陣が現れるとマリアの足元に魔法陣が現れ触手を伸ばすように魔法陣が繋がる。マリアの足元に出来た魔方陣の端が立ち上がり頭の位置まで上がるとカーテンの様な光の柱が浮き上がり、その柱の内側に幾つもの小さな画面とターゲットスコープが表示され次々とロックオンしていった。
その間、詠唱をしていマリアは、周辺から砂がマリアの周りに集まり無数の針の形に形状を変えていく。
「行けー!」「ソナートランスファー」
マリアとシルビアは同時にしかし別の詠唱を唱えると砂の針はロックオンした魔法陣の的の中に消えた。
とても静かに成った。まるで無音状態、それは魔法陣からの光が消え真っ暗になったビルの中に2人共通常状態の警戒態勢に移っている。
暫くしてマリアはこちらに振り返って俺に迫り言った。
「貴方はここで帰りなさい」
「ダメよチーフ、人の言う事聞かないのだから」
シルビアは2・3歩マリアの方に歩き両手を上げながら呆れた表情で言った。
「だけどもう終わったんだろ?」
「敵は全て片付けたわ」
「だが、残党が残っているかも知れない。その場合は何をしてくるか分からない」
確かにその可能性は有った。それ以外にもトラップが仕掛けられている可能性も考えられる。俺はそれらの危険性を考え残る事を決めた。
「分かった。今回の件はブルーバンドの権限を超えていると思う。ここで帰る事にします」
「そう、分かったわ。それじゃ私は姉さんの所へ行くわ」
シルビアはマリアと裕貴を残しフロアの階段を下りて行った。




