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1部 12芒星魔方陣 編  13章 デジタル魔術師 3話

 シルビアは何事も無かった様に俺に話掛けてきた。

「まあ、何とかな」

「まあ、服がドロドロじゃない」

 俺は改めて自分の着ている服を見た。あちこち泥が付いて汚れている、頭には草やさっきの攻撃による壁の破片が付いていた。

「やったのか?」

「ええ、そこに倒れているでしょ」

 シルビアはそう言った。人影はだんだんシルビアの姿に成ってくる。それを確認して俺はシルビアの元に向かった。シルビアの足元に男が倒れていた。

「こいつが伏羲か?」

「ええ」

 伏羲は倉庫の中央で倒れている。手足を銃で撃ち抜かれて右脚と右肩が欠損し左腕も左足も壊れていて体中のあちこちでスパークしている。

「まさか、ここまでやるとは」

 伏羲は言った。シルビアは伏羲の前に進み見下したように言う。

「ここは間に合わなかったけどこれ以上させないわ」

「どうして俺の居場所が分かった。異形魔法陣といえどその候補地はいくらでもある」

 地面に倒れた伏羲が聞いた。

「ここは学研都市よ、貴方の居場所くらい都市内10万の監視カメラと監視衛星で丸見えよ」

「そういう事か」

 伏羲は嘆いた。俺はシルビアに聞いた。

「これで異形魔法陣の形成は阻止出来るのか」

「形成された魔法陣を逆の順で逆の陣を作り解除していけば大丈夫よ」

 それを聞いた伏羲は訴えた。

「この街で活動しているエージェントが俺一人だと思ったか」

「え!?」

 俺は伏羲の方へ振り返った。

 伏羲は両手両足のパーツを切り離し背中から小さな足が伸びその先に車輪が付いている。

「しまった」

 シルビアが慌てた。伏羲から切り離された手足のパーツが一瞬煙が出たかと思うと爆発した。

 一瞬の出来事だったが俺の目の前では10秒位は時間が有った様に思える。しかし体の反応が追いつかない。

 俺はその爆発の爆風を受け吹き飛ばされた。倉庫の中も爆発であちらこちらが崩壊した。

 しばらく倉庫の中が埃で視界が全く無かった。俺はおそらく数秒ほど意識を失ったと思う。

「くそ」

 さっきの爆発で吹き飛ばされた裕貴は体を起こそうとした。

「!?」

 裕貴の腹から何か飛び出している。崩れた柱の鉄骨が俺の身体を貫通している。

「何?」

 裕貴は自分に起こった事が理解出来なかった。だが痛みは有った。

「ダメージは?」

 俺は敢えてそう声に出した。そうしないと今の状態が理解出来なかった。

 大きな臓器でもっともダメージを受けたのは(すい)臓を太さおよそ3cm程の鉄筋が貫通している。()臓の白脾臓部分の膜が破れた。左11番肋骨が砕けている他、胃の外側を傷つけている、後は前後の筋肉とリンパ管の損傷だ。それ以外の背骨や脊髄の損傷は免れた。

 だが、既に体内では大量の出血をしている上に、刺さっている鉄骨を抜くと大量出欠で死んでしまう。それ以前に出血性ショック死をしてもおかしくないし、意識を保っている事すら不思議な程のダメージだ。

「裕貴!無事?」

 シルビアが俺の埋まっている瓦礫をのけて寄って来た。

「なんとかね」

 と言ったが瀕死の重体だ、俺の治癒能力でどこまで回復するかも判らない。

「って何言ってるの!重傷じゃない、これ抜いたら即死よ」

 シルビアは俺がどんな状態か見抜いている。

「ちょっと待って、すぐに治癒魔法掛けるから」

 そう言うとシルビアは少し離れて銀色の銃を顔の前に構えて集中した。すると瓦礫が一度に持ち上がり、放射状に飛んでいき裕貴の周りが空いた。その後、またシルビアが近づいた。

「とにかく、止血するけど」

「それより、この鉄骨はどうするのだ」

「それも大丈夫、すぐ始めるよ」

 シルビアはそう言うと、俺の周りに魔法陣が出来る。青く光かり地面から俺達を照らす。

 刺さっている鉄骨は腐食して錆びた鉄粉は風が無いのに飛んで消え傷口で皮膚が渦を巻くように引っ張られる。

「ぐあぁ」

 俺は既に強烈な痛みに耐えているがさらに痛みが走る。目の前が白くぼやけ涙やよだれが止まらない。

 どれくらい経っただろう。或いはほんの数分だったのかも知れない、シルビアが呼びかけている。

「裕貴!しっかり裕貴」

「あ、ああ」

 俺はようやく体を起こした。

「もう、立てるよね」

 酷なやつだ、さっきまで重傷だった人間にそんな事を言うなんて。

「おい、さっきまで重傷だった人間に言う言葉か?」

「何言ってるのもう14分も時間を無駄にしたじゃない、これ以上遅れると伏羲に逃げられちゃう」

「俺に構わず追いかけてくれ」

「何?ハードボイルドな台詞言ってるのよ、さあ、さっさと立ちなさい」

「分かったよ」

「追跡の術式(マーキング)がまだ生きてるうちに追いつくのよ」

 しかし、シルビアも随分と汗をかいている。治癒魔法は相当な魔力を消耗するのだろう。

「大丈夫なのか?お前も随分疲労している様だが」

 シルビアは俺の腕を引いて立たせた。俺は瓦礫を押しのけ立ち上がった。しかし俺も足元がおぼつかない、こちらも怪我の治癒で体力を消耗しているのだろう。

「見くびらないで、これでも魔術師なんだから」

「分かった」

 裕貴とシルビアは崩壊した廃倉庫を出て伏羲を追いかけた。


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