1部 12芒星魔方陣 編 11章 ブルーバンド 3話
不可解な事が多すぎる。放火現場に貼り付けになった分時間が遅くなったのでパトロールを中断して事務所に戻った。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい」
藤井先輩はパソコンの前から席を立ち俺達の方へ来る。浅野は1台のパソコンの画面から目を離し俺達を見てる。
久田は応接スペースの椅子に座りぐったりしている。俺も応接スペースの1人掛けの椅子に座った。
「どうしたの?2人とも随分服が汚れているけど・・・」
そう言われて服を見る。確かに廃ビルの中で這いつくばっただけ有って服が汚れている。
「うわー、さっきのせいだ」
久田は立ち上がってパタパタと服の汚れを払い、俺も椅子に座ったまま汚れを払った。
「それにしても、あのビルに何が有ったんです?」
久田はビルに入って直ぐに動けなくなったから事態を把握していない。
「魔法陣が有った。どういう物かは分からないけど」
「どんな?」
「さあ、分からないよ、俺は魔法使いじゃないしな」
浅野が俺達に水を持ってきてくれた。それを俺も久田も一気に飲み干した。
「じゃあ少し落ち着いたら内容を説明してくれる?」
藤井先輩は机に戻りパソコンの前に座った。
「さっきの放火事件の件ですか?」
「ええ、気になることが有って」
藤井先輩はそう言いながらマウスをクリックしている。
「放火事件のあった場所が何かの図形に成っているのですね」
俺の机は藤井先輩の向かいの机になる。
「どうしてそれを」
藤井先輩のパソコンを一緒に見ていた浅野は驚いた様に俺に聞き返した。
「何となく言っただけなんだけど」
「そうなのよ」
なにげに言った事を藤井先輩は否定せずパソコン上にマップを表示させ放火事件の在った地点をマークしていく。
「え?」
俺は藤井先輩のパソコンの前に行った。
「これは?」
藤井先輩のパソコン画面上に写し出される画面を見て驚いた。
「何かは分からないわ、でもこれらの地点を線で結ぶと円に成るのよ」
藤井先輩はそう言ってパソコンの画面を俺に見せた。その画面には何かの絵柄になるように規則正しく配置されていた。
「何かの魔法陣かしら」
久田は不思議そうな顔をしながら言った。
「そう見えなくも無いわね、でね、この図に今日の放火事件の点を合わせると」
藤原先輩は今日起きた放火事件の座標を地図に入力し点の位置を表した。
「だとしたらこの町で何かが起ころうとしているの?」
「そうだとしたら、何が起ころうしているのか分からないけど阻止しないといけないわね」
藤井先輩は心配そうに聞いてきた浅野に対して給湯室に向かいお茶を入れながら言った。俺は、藤井先輩のパソコンの画面に映し出された放火地点を見ながらふと思った。
「次に放火される場所は特定できないのですか?」
それを聞いた藤井先輩は紅茶の入ったマグカップを持って椅子に座りしばらく目を閉じて考えていたが。
「できるかもしれないね」
そう言った後パソコンのマップに放火事件のあった場所に順番を書き込んでいった。するとそのマークした場所が円に成る場所ともう一つ別の図形が現れてきた。
「次はこの辺りかしら」
藤井先輩はそう言いながらパソコン画面上に表したポイントを示した。浅野はそれを見て。
「ここって」
「プラザタウン」
久田も続いて呟いた。その画面に描かれた図形はこれから起きるであろう放火地点を含め12箇所の時計の文字盤の様に綺麗に並んでいる。そして今回の地点が8箇所目の地点に成った。
今日の放火事件の場所を入れて7箇所分が既に放火地点と一致していた。
「これは、何かの魔法陣なのか?」
「何の為にしているのかは分からないけど、何かの目的があっての魔法陣と考えるのが普通でしょうね」
「この学研都市でどういう魔法陣か分かる人が居ればいいのだけど」
いつの間にかお菓子を食べている浅野に久田が訊いた。
「清和台とか常徳の先生なら魔法の事が分かる筈じゃないですか?」
藤井先輩はマグカップを給湯室へ片付けに立ち上がりながら言った。
「とにかく、今日はもう遅いから連絡は明日にしましょう」
時計はもう夕方7時を指している。外はもう真っ暗だった。
「そうだな、じゃあまた明日にしよう、何か急用が在ったら連絡してくれ」
俺は銃を事務所のセキュリティロッカーに片付けて帰り支度を始めた。そこに電話が鳴り藤井先輩が電話に出た。
「───はい、分かりました。有り難うございます」
藤井先輩は受話器を下ろした後。
「朝倉君、ちょっと待ってくれる」
「はい?」
「では先輩、先に帰ります」
「お疲れ様です」
久田と浅野そう言って鞄を肩に掛けた。
「二人ともお疲れ様」
「おつかれさん」
久田と浅野の二人が帰った事を確認してから藤井先輩は切り出した。
「学研警備隊から連絡あったわ」
「で、どうでした」
「今回の放火事件は銃弾の痕があったそうよ」
「銃弾の痕」
「何者かがここで戦闘があったらしい」
「戦闘って一体誰ですか?」
「そこまでは分かってないみたいね」
「そうですか」
「この件はもう私達が手に負える事件では無いわ」
俺は少し返答を待った。
「先輩?、それなら何故、俺はあの放火現場にたどり着いたのでしょう」
「たどり着く?」
「ええ、あの放火現場の周辺に人が居なかった事は報告していますよね」
「確か、学研警備隊からもその報告が来ていたわ」
「だとしたら、俺かその場にいた久田が何かの干渉を受けないのでは無いでしょうか」
「そうかも知れないけれど、こういう風に考えられないかしら」
「はい?」
「その何か、多分何らかの魔法だと思うけどその効力が切れたから朝倉君達がその現場にたどり着いた。とか」
「その可能性は・・・無いとは言えないですね」
「とにかく、この件は学研警備隊に任せましょう。こちらからさっきの魔法陣の件に付いても報告したから、何らかの対策を取るでしょうし」
「分かりました」
「ほら、もう帰りましょ、私もうお腹空いたし」
「あ!」
「どうしたの?」
「俺の家に綾香が居るのだった」
「あらあら、奥さん放って置いてここで私と密談?」
藤井先輩がからかった。
「そんな事無いですよ。先輩こそ何言っているのですか」
「ムキになる所が怪しいね」
先輩は小悪魔みたいな顔をして俺をからかってくる。でもそう言いながらパソコンの電源を落として回った。俺もそれを見て事務所の戸締まりをして回った。
「さて、帰りましょ」
「はい」
俺と藤井先輩は事務所の鍵を掛けて事務所の階段を降りた。
「そういえば、渡邊は何していたのでしたっけ」
「今日は、お休みするって連絡有ったよ」
「そんな事、あいつ言ってませんでしたけど」
「まあ、そんな事言わずにとにかく家に帰りなさい、待っている人が居るんでしょ?」
「そうなんだけどね」
俺は家に綾香達がなにやら集まって何かしていた事を思い出した。
「俺、それから逃げてきたのだった。先輩!」
「何?」
「嫌な事思い出させないでください」
「良いじゃない、家に帰ったら暖かいご飯ができているのよ、新婚さん見たいじゃない」
「なんで、そんな」
「そういうことしてくれる人が居るって事は幸せよ。代わって貰いたいくらい」
藤井先輩は悪びれた様子も無く可愛く笑って見せた。
「確かに、飯の心配しなくて良いのは良いですけど」
「そんな事言ってるより、早く家に戻りなさいよ」
藤井先輩そう言って俺の背中を軽く叩いてから寮へ帰っていった。確かに先輩の言ったとおり、これはとても幸せな事なのかも知れない。
マンションの玄関の鍵を開けて部屋に入ると、煙が充満していた。それと同時に香ばしい臭いもしていた。
「何だ、この煙は?」
「おう、遅かったな」
1K、10畳のフローリングの部屋の奥で座っている渡邊が俺を見て言った。台所に綾香と橋本が居て何か作っている。真紗美の方は結局、渡邊と一緒にテレビゲームをしていた。
「何やっているんだよ」
「何ってゲームよ」
俺の質問に真紗美はケロッと答える。すると台所から中野が怒っていた。
「裕貴!遅いじゃない。心配したのよ」
「ああ、悪い」
「電話も通じないし、メールも返信無いし」
「電話?」
俺は携帯の着信履歴を見たが、履歴が無かった。メールも着信が無かった。メールセンターに問い合わせをすると19件のメールが入った。全部綾香からだった。
「携帯の電源切っていたの?」
綾香は不機嫌そうに聞いてきた。
「いや、そんなはずは」
「じゃあ、どうして今まで電話に出なかったの?」
俺は愛想笑いを浮かべながら。
「圏外?だったとか?」
「この学研都市で通話圏外なんて有るわけ無いじゃない。地下街だって圏内よ」
「だよね、どうしてだろう?」
思わず苦笑いをしてしまう。どうしよう。
「電源を切るような怪しい事していたのでしょ」
綾香の怒りに火に油を注ぐ様な事を広瀬は言いやがる。俺は恨めしそうに広瀬を睨んだ。
「そんな事は無いよ。あ、そうそう、学校帰りに放火現場に出くわして消防や学研警備隊やらが沢山居たから回線がパンクしていたのかも」
「放火事件って『連続放火事件』の事か?」
どうやら渡邊もブルーバンドとして放火事件の詳細を知っているみたいだ。
「ああ、そうだけど」
「15支部の中で有ったのか?」
「そうだけど」
渡邊の質問攻めにそう返事した。
「連続放火事件?」
「なにそれ?」
橋本も綾香も連続放火事件の事は知らないみたいだった。
「ここ最近、廃ビルや空き地で連続した放火事件が2週間で6件だったかな?起こっているんだよ」
「ああ、そう、それで今回が7件目だって事だ」
渡邊の説明に俺は補足した。それを聞いた綾香は心配そうに言った。
「裕貴、まだあの事件に関わってるの?2件目の事件で入院したって言うのに・・・」
「それは、それより、ほら台所の方は大丈夫なのかよ」
「あ、いけない」
「大丈夫よ綾香ちゃん、火加減見てるから」
橋本はそう言ったが綾香は急いでキッチンに戻った。綾香は鍋のビーフシチューを混ぜながら取り皿に別けて味見をした。
「うん、ばっちりね」
「それより窓開けろよ、部屋中煙だらけじゃないか」
「私、目が痛くなっちゃった」
俺の訴えに真紗美は目を擦っていた。俺は窓の方へ向かったが、真紗美が邪魔な所に居る。真紗美の後ろをすり抜けようとしたが。
「ちょっと朝倉君、何処触っているのよ」
「へ?」
俺の足元を見ると真紗美のスカートの下足を潜り込ませてた場所にある。その足の指を動かすと柔らかい感触が有った。
「ちょっとエッチ」
真紗美はちょっと怒っているが俺も真紗美のお尻の辺りにしか足の踏み場が無い。
「ちがっお前が邪魔な所に居るのがいけないのだろ」
「お姉様ー、変態が高塚先輩のお尻に足を潜り込ませています!」
広瀬はまるで自分が被害者かのように綾香へ訴えた。
「ちょっと、何やってるのよ」
何故か綾香も声を大きくして俺に言ってくる。
「俺は煙が充満してるから窓を開けようとしているだけだ」
俺は慌てて窓を開けてベランダに出た。すると広瀬が直ぐ後を付けてきて窓を閉めた。
「おい!」
「そこで反省してなさい」
広瀬は直ぐに窓の鍵を掛けてその場から奥の綾香の居るキッチンへ引っ込んでしまった。
「お前には関係無いだろ」
俺の訴えも虚しく誰も話しを聞いちゃ居ない。
「行ってらっしゃーい」
渡邊はゲームをしながら窓の向こう側で呑気に手を振った。
「おい、あけろー」
その後、綾香が窓を開けてくれた。狭い俺の部屋に6人がビーフシチュー煮込みハンバーグを食べた。綾香の話だと一度ハンバーグ焼いた後にシチューで煮込むのがコツらしい。
皆が帰った後、俺と綾香が後片付けをしていた。
みんなも一通り片付けて行ったのだが俺の部屋に6人分も食器が無いので綾香の部屋から足りない食器を持ってきて使っていた。
「ここに置いてといて」
綾香の部屋に食器を持って入った俺に綾香はキッチンの調理台へ置くように指示した。
「久しぶりに綾香の部屋に入ったけど結構綺麗にしてるな」
「そんな事無いわよ」
「そうか、俺の部屋よりずっと綺麗だぞ」
「そうかしら?」
俺は、普段、脱ぎ散らかした綾香の部屋が綺麗になっている事から無性にクローゼットの中が気になって扉を開けてみた。
バサッ!
扉を開けると同時に大量の服が床に落ちた。
「もう、見るなー」
綾香は何故か顔を真っ赤にして怒った。足元には綾香の下着が散乱していた。
「なるほどー」
その後、綾香に部屋を追い出された。自分の部屋に戻ると足元に綾香のパンツが引っ付いていた。
「あれ?」
そこへ綾香がさらに顔を真っ赤にして俺に部屋に入ってきた。
「なにしてんのよー」
「ちょっと待て、これは不可抗力だ」
問答無用でテレキネシスを使って俺を中に浮かしベッドへ投げつけた。
「ぐわー」
綾香はそのままパンツを拾って部屋を出て行った。
「今日は俺、厄日?」
ベッドの上で逆さまに成ったままの俺はそう呟いた。




