1部 12芒星魔方陣 編 10章 能力の前兆 2話
この学研都市では通常の授業の他に特殊授業が有る。それはこの学校では超能力開発プログラムや能力の授業、デジタル魔法を教える学校ではそのプログラムや魔法の実技のカリキュラムが組まれている。
能力開発とは一般的に催眠術プログラムや瞑想、投薬と言ったものが実施されているが、その中には医療機器を使うものまで有る。
一般的には身につく能力は1種類が原則だが、既に超能力が有る者は複数の能力を身につける事が有るらしい、今日はこれから能力開発の授業だ。
せっかく学研都市に来たのだからどんな能力で有れレベル3位の能力が欲しいと思う。
昼休み、教室で弁当を取りだして食べようとしていた時、真紗美が俺の机の向かい側に座って来た。
「ねえねえ、さっきの開発の授業、どうだったの?」
「どうだったって」
ミニハンバーグに箸を付けながら聞き返した。
「能力、もう有るのでしょう」
「よく分からんないよ」
「なんでー」
「だって、仮に本当に俺の能力が治癒能力だとして、それをどうやって証明するんだよ」
「どうやってって」
ご飯を食べながら真紗美が訊く。
「実際に怪我しないと発動しないって事だよ、治癒なんだから」
「ああ、なるほど-、だったら怪我したら良いんじゃ無い?」
「痛いだろ」
そう言いながら弁当を食べている俺と真紗美の真横へ綾香と広瀬瞳がテレポートで現れた。スタンと床につま先を着地させた綾香はご機嫌そうだが、瞳の方はちょっと不機嫌そうに見える。
「裕貴!今日の開発の授業どうだった?」
「なんでお前が俺の学校の時間割知ってるんだよ」
「そりゃ私は裕貴の事なら何でも知ってるわよ」
少し誇らしげに綾香は言った。後ろで瞳がすねている。
「さすが裕貴の奥さん」
「こら、茶化すな」
茶化す真紗美を俺は制した。
「それで、どうだったの?」
綾香は俺の背中に抱きつきながら聞いた。
「分からないよ、能力なんて」
「何でよ」
「どうやって、治癒能力を証明するんだよ」
「イメージマシーンを使えば分かるんじゃない」
イメージマシーンとは、ゴーグルとイヤホンの付いたヘッドギアを装着し、その中の映像と音声から強制的にイメージを送り込その時の脳波を読み取り能力を探る装置である。繭型のベッドに横たわってこの装置で調べたり、能力の強化を行う装置も有る。
「イメージマシーンなんてこの学校には無いよ」
「じゃあ、どうやって能力の有る無しを調べるの」
綾香は不思議そうに聞いた。
「ここじゃあ、イメージトレーニングや投薬開発がメインよ」
真紗美のいうイメージトレーニングは瞑想も有るがボールを使ったりとどちらかというと体力勝負な方法だ。
「そっか、それじゃ仕方無いね、治癒能力だったら怪我か病気してないと効果無いものね」
「う、私が気が付かなかった所をあっさりと言った」
綾香の言った事に落ち込む真紗美。
「ふん、治癒なんて地味な能力、大して役に立たないじゃ無いの」
広瀬は不機嫌そうに言った。だがその通りだ。厳しい事を平気で言ってくる。
「治癒だって便利だと思うぞ、怪我や病気だって直ぐ治る訳だし」
俺は精一杯の負け惜しみを言ってみた。
「治癒能力だとして、その能力が何処まで有効なの?体への負担は?副作用は?」
広瀬に返す言葉が出ない、治癒の場合、永遠怪我や病気から治癒をしていたら一体どうなる。細胞分裂の回数はテロメアの長さで決まっているのだから老化が人より早いとか無いのか。
「なに、ぼーっとしてるの?」
考え込む俺に真紗美が手を俺の前にかざした。
「ああ、いや、何でも」
そう言って弁当のブロッコリーを食べた。いつの間にか綾香が俺の後ろから勝手に俺の箸を取り上げ弁当を食べ始めた。。
「どうだった?」
「さっきも言っただろ、能力は・・・」
「そうじゃなくてお弁当のハンバーグ」
「・・・旨かったよ」
「それ、私の手作りなんだ」
そう、この弁当は綾香が全て作っている。
「これ、あっちゃんの手作りなの?レトルトじゃ無くて?」
真紗美が弁当を覗きながら聞いている。
「このお弁当を綾香様が・・・」
広瀬はさらに機嫌が悪くなった様だ。
「そうだよ、挽肉からちゃん作ってるわよ」
綾香は胸を張りながら自慢げに言った。
「他にも作れるの有るの?」
「ビーフシチューとかも出来るけど、焼く、煮るの基本はお母さんにしっかり教えて貰ったから、あとは料理本有ればたいがいのは作れるよ」
それを聞いた真紗美は綾香の手を取って頼むように。
「今度、料理教えてー、私なんて野菜炒め作ると直ぐにべちゃーとして美味しくないのよ」
「いいよ、じゃあ今夜とかどう?」
「いいの?」
「良いわよ、じゃあ裕貴の家に集合でいい」
「分かった、学校終わったら行くね」
「おい、勝手に俺の家を使うな」
「翼も来る、朝倉君の家、あっちゃんが料理教えてくれるって」
話を聞いちゃいない。
「私も良いの」
奥での別の女子と弁当を食べていた翼が聞いた。
「いいの良いの」
真紗美は勝手に話を進めている。
「お姉様がこんなヤツの家に行くなら私も付いていきます」
「こんなヤツってないだろ」
「綾香様がこいつ毒牙に犯されないとも限ら無いので、その時はぶっ飛ばします」
随分と広瀬に嫌われた者だ。
「もう、好きにしろ」
俺は自暴自棄にそう答えた。
「じゃあ学校終わったら裕貴の部屋に集合でいい」
「分かったわ」
綾香の提案に真紗美が軽く承諾していく
「うん」
橋本も少し顔が赤いが承諾している。
「俺はちょっと用事が出来たから先に行っててくれ」
「なに、逃げるの」
「そうじゃ無いけど」
図星だ。適当にごまかして綾香達が居る間だけでも避難する方向を選択しようとした。
「大丈夫よ、私、裕貴の部屋の鍵持ってるから」
綾香はブレザーのポケットから鍵を取りだして見せた。
「え?おま、何時の間に」
「合鍵くらい作っておく物よ」
そう言いながら可愛らしく片目を閉じて見せた。
「もうお姉様はそいつ毒牙に掛かっていらっしゃるとでも言うのですか」
広瀬が両手を顔に当てて嘆いた。
「一応弁解の為に言って置くが、こいつ勝手にやった事だからな」
「もう時間ね、瞳、学校に戻るわよ」
綾香も俺の話を聞いちゃいない。教室の時計を見て綾香は広瀬に方へ寄った。
「はい、お姉様」
それを聞いた広瀬は嬉しそうな顔をして綾香に抱きついた。本当に広瀬は綾香が好きなんだなと思わせる。
「じゃあ二人とも、また後で」
「また放課後ね」
「うん、またね」
真紗美と橋本の返事を聞いた綾香と広瀬はテレポートで姿が消えた。
「朝倉、学校終わったら俺の家に来るか」
井上は椅子に座った俺に声を掛けた。
「考えておくよ」
疲れた俺はため息を吐き気味にそう言った。
昼からの授業はアサルト訓練だった。俺は、未だに本当に俺の能力だったのか怪しいが、治癒能力が昨夜まで無かった事から能力開発とアサルトを選択している。
この学研都市では能力者による犯罪が頻発する為、対能力者用の犯罪抑制プログラムが存在しており銃火機を使用したアサルト訓練が有る。使用する武器は本物の銃火機だが能力を押さえ込む特殊な薬品の入ったゴム弾を使用する。そしてこのアサルトの授業ではブルーバンドの入部する為実技試験が免除される。俺は綾香に内緒でそのブルーバンドに所属している。
渡邊一樹もアサルトを選択していて今日の授業は二人一組で格闘訓練をする。格闘術は極真空手と柔道を同時に取り入れたもので、打撃と投げ技を状況に合わせて使い分け対戦相手を倒す。安全のためグローブとヘッドギアを付け試合形式で戦う。
「ぐうっ」
「相変わらずお前は甘いな」
マットの上に仰向けになった俺に渡邊が言った。
「やっぱ、格闘は向いてないな」
俺はそう言いながら体を起こした。
「はい、そこまで」
声を掛けたのは笹部奈央人先生、アサルトの授業担当をしている。元傭兵だった経験を生かしこの学校でアサルトの授業を担当している。
「朝倉、もうちょっとだったな、あそこでの右が大振りになったせいで渡邊に投げられる隙になったな」
「もうちょっとだったのに」
負けた事を悔しがっても仕方が無いのだが、どうしても言葉になる。
「甘い甘い」
渡邊は誇らしげに俺に向かって言った。
「渡邊は格闘センスが良いな」
笹部先生は俺達に近づいて俺の肩を叩いた。
「俺はどうも渡邊に勝てないな」
「朝倉、お前はここをもうちょっとこうした方が良い」
笹部先生はそう言いながら俺の腕を持って組み手の指導をしてくれた。どうやら左手の引きが弱いらしい、その事を先生は指導してくれた。
「有り難うございます」
俺は先生にお礼した。
「でもまだ俺には勝てないぞ」
渡邊は畳の場外へ出て行った。
「朝倉、お前は射撃の成績が良いじゃないか、格闘を習得したい気持ちは分かるがすぐに上達する物でもないしな」
笹部先生はフォローしてくれた。
「後は射撃で勝てば俺の圧勝だな」
渡邊は調子に乗って言ってくる。
「それだけは断固阻止させて貰うぞ」
「それはどうかな?」
俺はやっぱり負けず嫌いな方だ。今度こそ格闘で渡邊に勝ってやると心に誓ったのだった。




