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1部 12芒星魔方陣 編  9章 裕貴の右手 2話

「あっ」

 走り出した救急車の中で救急隊が折れた右腕に添え木の応急処置をしている最中に思わず声を上げた。

「何?裕貴どうしたの?」

 救急隊も驚いたように俺を見ている。

「ああ、いや、何でもない」

 誤魔化そうとするが下手な嘘だったと思う。浦多香子・・・確かシフト・フレイムと呼ばれていたデジタル魔法の使い手で、以前の銀行強盗事件の時に助けに来た人だった。

 病院に付いた後はレントゲン等の検査を受けた。先生はレントゲンの結果を見ている。

「右手の骨が折れた痕が残っているが本当に骨が折れていたのかね?」

「ええ、確かにここと、ここと・・・」

 レントゲンを見ながら俺は折れた骨の場所を指し示した。

「そこの骨は焼骨と尺骨と中節骨2番から4番、あと右手の第4中手骨と有頭骨が砕けているがそれが分かるのかね?」

「ええ骨はそんな所でしたけど・・・」

「他に何が有るのか?」

 俺はそんな骨の名称までは分からないが先生の言う事と自分が怪我をした瞬間に判った箇所が一致している。続けて。

「肘の靱帯が2本切断、肩の靱帯が3本伸びていたと思うんですが」

 先生はパソコンに映し出されたレントゲン写真を見て呆れた様に椅子の背もたれにもたれた。

「確かに、靱帯に損傷を受けた様な形跡は有る事は有るけど・・・それがここまで治っていると何時靱帯が損傷したのかが分からないのだよ」

「車に轢かれそうになった猫を助けようとして、車と衝突したんです」

「ひき逃げか」

 先生からそう言われるまでは考えが行かなかった。

「あぁ、そうなる・・・のかな」

 今の裕貴は、我に返った。綾香が少し考えてから。

「警察に言って無い」

「車のナンバーは覚えてるかい」

「猫を助けようと必至だったから覚えていないです」

「私もよく見ていなかったのでわからないです」

 先生の質問に俺も綾香も首をかしげた。

「とにかく、警察には連絡しておくから、事情聴取受けてむらえるかな?とりあえずギブス付くって置くから」

「分かりました」

 先生は石膏を持ってきてギブスを作ろうとしていた。

「それにしても、応急手当が良かったのだろうね、骨折による炎症は抑えられている。まあ骨折は完全に治って無いのも事実だし・・・あれ?」

 先生は俺の腕を取って手のひらを曲げたり手首を触ったりしていた。

「どうかしましたか?」

 俺の質問に先生は聞いた。

「痛い所無い?」

「ええ、何とも」

 先生はそれを聞いてまた患部を診ている。

「手の骨折が完治している?」

 俺は黙ったまま首をかしげた。確かに痛みは無いが骨折がそんなすぐに完治することは無いはずだが、確かに腫れは完全に引いている。先生も俺の手を持ったまま指を曲げたり伸ばしたりしていた。

「痛かったら言ってよ」

「はい」

「魔法で完治したとか?」

 俺は独り言みたいに言ってみた。後ろの綾香も見ている。

「もし、治癒魔法で回復したのなら最初にレントゲンを撮る時にはもう完治しているだろう、この怪我をした時に何か腕に違和感は無かったかい」

「違和感は無かったのですけど、怪我をした瞬間に何処をどれくらいのダメージを受けたのかが分かりました」

「怪我した瞬間かね」

「はい、怪我した瞬間に分かりました」

 そう聞くと先生はしばらく目を閉じて考えていた。やがて。

「そういえば君は神成高校の生徒だね」

「はい、そうですが」

「能力は何か持っているのかね」

「いえ、レベル0ですけど」

「もしかしたら、君の能力は『治癒能力』かも知れないよ」

「治癒能力?」

 俺と綾香は同じタイミングで聞き返した。

「そう、怪我や病気が通常の数倍の速度で治る能力」

「さっきの常徳学園の生徒がやった治癒魔法の効果が残っている事は無いのですか?」

 綾香は先生に聞いた。

「そんな言い方無いだろ、なんかむかつく」

「あぁ、ごめんなさい」

 綾香は申し訳なさそうに言った。

「とにかく、もう一回レントゲン撮ろうか」

「そんなに何度もレントゲン撮って大丈夫なんですか?」

「局部レントゲンだから大丈夫だよ」

「分かりました」

 俺はもう一度レントゲンを撮った後、看護士さんの治療で念のためと言われ患部を冷やす治療を受けて待った。

 しばらくして先生が部屋に処置室入ってきて言った。

「今日はもう帰って良いよ」

「え?」

 先生の言葉に思わず聞き返した。

「もう完全に治ってる」

「本当ですか」

「そんなすぐに治るなんて、なんでです」

 俺よりも先に綾香が先生に聞いた。

「レントゲンの映像を見ても異常なし、それどころか手の骨折痕すら無くなっている、だから完治、これは完全に治癒能力だよ」

「おおーすげー」

 俺は思わず喜んでだ。怪我の功名とはこのことを言うのだなと思った。

「念のため、精密検査するから空いた時間に来なさい」

「分かりました」

 その後、病院で簡単な処置を受けて家に帰った。

「ごめんなさい、私が今日、誘わなければこんな怪我しなくて済んだよね」

 落ち込む綾香に俺は綾香を抱き寄せながら

「気にするな、治癒能力かどうかは分からないけど、とにかく怪我は完治したのだから」

「うん」

 歩いているうちに俺のマンションの前に着いた。

「綾香、家まで送るよ」

 と言っても俺の隣の部屋が綾香の部屋だ。

「うんん、ここに泊まってく」

「え?」

「ファンションショーしないと」

「誰がモデルだ」

「わ・た・し」

「誰が、客だ」

「ゆうき!」

 そう言って綾香は俺の腕にしがみついた。俺は余ったもう一方の腕で頭を抱えた。

「もう、店で見ただろ」

「だめ、家でやるの」

 そう言って部屋に入ると綾香はすぐにシャワーを浴びた。俺は呆れながらもその間にコーヒーを入れた。子供の頃は親がインスタントコーヒーを入れていたが俺はドリップ出しだ、結構こだわっている。

 シャワーから出てくる音がしたので綾香にもコーヒーを入れた。

「コーヒー飲むか」

「飲む」

「と思って入れておいたぞ」

「あ、有り難う」

 綾香は短パンにタンクトップ姿で脱衣所から出てきた。

「本当に、怪我もう治ってるの?」

「うん?ああ、もう問題ない」

 俺は右手を綾香に見せた。

「本当に何ともないのね」

 綾香は俺の手を掴んで指を動かしたりして見ている。

「どう、気が済んだか」

「うん、でも本当に良かった」

 俺はコーヒーを飲みながら

「そういえば、応急手当してくれた人の名前なんて言ったかな?」

「あの常徳学園の子?」

「そう、お礼言ってなかったから」

「そうだね、可愛かったね」

「そこかよ」

 不機嫌そうに言う綾香はコーヒーを飲み干した後、すぐに紙袋を持って洗面所に行った。その後。

「いやー!」

「どうした!?」

 突然、大事を上げた綾香の居る洗面所に駆けつけた。

「どうした」

 綾香は洗面所の床にぺたんと座って買ってきた服を見せた。

「キャミに穴が・・・」

 見るとキャミソールの胸の部分と裾と肩紐が焦げて穴が空いている。

「買ったばかりなのに」

 綾香は泣き始めた。

「ほら、泣くなよ」

「でも」

「じゃあ、ほら俺が服1枚くらいなら買ってやるから」

「ほんとに良いの?」

「ああ、でも余り高いのはダメだぞ、俺って貧乏なの知ってるだろ」

 綾香はこっちを見て聞いた。

「ほんとにほんとに良いの?」

「ああ、買ってやるから泣くな」

「ありがとー」

 綾香はそう言って俺に飛びついた。その勢いで倒れかかった俺の上に綾香が抱きついている様な状態だ。

「その前に、綾香?」

「うん?」

「服、着ろよ」

「え?」

 俺の胸に埋めていた顔を向けた綾香の顔が赤く成った。

「エッチ!」

 パーンと良い音で鳴った俺の頬。俺は起き上がって綾香を見た。綾香は着替える前に来ていた服で前を隠しながら

「出て行け!スケベ」

 と俺を洗面所から追い出した。俺はちょっとイラッとして。

「ピンクのブラなんか見せるな、このドスケベ!」

 その後、綾香と仲直りしたのは2時間後だった。


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