1部 12芒星魔方陣 編 5章 裕貴の実力 3話
小さな店だった。その割に沢山の魔法アイテムが所狭しを陳列されていた。
店を出てからしばらく歩き今の時間は午後2時過ぎ、そういえばものすごく腹が減った。
「綾香?」
「あの店員さん、美人だったね」
綾香は俺を睨んでいる。
「う、うん、そうだね」
「ところで裕貴?」
「うん?」
「さっきその女に手を捕まれて嬉しそうにしてたよね?」
「何だよ急に、そんなわけ有るわけ無いだろ」
「そう?どうだかねー」
「ところで綾香、腹減ってない?」
「そうね、お腹空いたね、どっかでご飯たべようか?裕貴のおごりで」
「そうなるか・・・さっきの店で余り金使わなくて正解だった」
「そんな事・・・気にしなくていいのに」
まだ綾香は俺に対する疑念は消えてないようだが、とりあえずは機嫌が戻った。
「何食べたい?」
「がっつり系で・・・お腹空いたから」
「了解ー」
辺りを見回すと洋食屋の登りが目に入った。
「エビフライ・・・」
ショーケースに入っている料理の模型を見て思わずぼぞりとこぼした。
「美味しそうじゃない?入ろう裕貴!」
と言う事で店に入る。意外と小さな店内はモダンな木の板張りで隠れ家みたいな雰囲気が出ている。しかし、人の気配が無い。客が居ないと言う意味では無い、テーブルに置かれた料理も、店内で流れている音楽も流れたままだ。
「こんにちわ・・・?」
俺は小さな声で訪ねてみる。しかし人の気配がない。
「なんで誰も居ないの?」
「そんなの俺が知るかよ、これじゃぁ仕方無いから他の店に行くぞ、腹減ったし」
俺は綾香の肩を持って店の外へ誘導しようとした。
突然、綾香へ押し出される衝撃を背中に受けた。
「ぐっ!!」
瓦礫と化した椅子や机と衝撃が俺の背中を押す。
これが店内で起きた爆発だと理解するのに数秒は掛かった。その爆発は店内を破壊するのには十分な威力を持っていた。おそらく人を殺傷するに足る程に、それなのに店の外には爆発の衝撃が伝わっていない。それどころか通りに面するドアもガラスも割れていないのだ。
「裕貴、しっかりして裕貴」
俺は綾香を抱きしめたまま押し倒す格好で倒れていた。遠のくなる意識を繋ぎ止める綾香の声が聞こえた。
「あっ、綾香、大丈夫か?」
「それより裕貴の方が・・・」
俺がどうしたって?と思う。
全身の感覚が無い、体が重いのか軽いのかすら感じないが、綾香の体の感触は分かる。 それでも自分の意識を保つ事で精一杯な状態だ。
綾香は俺の体を少し押しのけ隙間から這い出て、綾香は今にも泣きそうな顔で必死に俺の体を店の外へ引きずり出し始めた。
俺にもっと力が有れば・・・。
店の奥から機械音がする。それと床に落ちた瓦礫をプレスするような音が不規則に、そして俺達に向かって聞こえてくる。
「裕貴・・・」
涙声になっている綾香の声を最後に俺は意識を失った。
目が覚めた暗い部屋、おそらく病院のベッドだろう。部屋の中を見回すと隣に綾香が椅子に座りベッドにもたれたまま寝ていた。
「俺は?」
あの後一体どうなった?
フラッシュバックの様に記憶の一部が蘇る。
俺はあの後、店の奥から出てきたロボットを素手で倒したのだ。
俺は綾香に毛布を掛けて眺めているうちにいつの間にか眠りについた。
爆発した店の奥から機械音が聞こえてる中、綾香は必至に俺に呼びかける。
「裕貴!しっかりして裕貴!」
綾香が俺の両腕を脇の下に抱え込み引きずっている。それもその筈で、さっきの爆発から綾香をかばった時に飛散してきた無数のガラスや金属片が背中に刺さり全体から出血している。又同じように飛散してきたコンクリート片も直撃していて肋骨や背骨も骨折や罅が入っている状態だった。にもかかわらず俺はその場に立ち上がる。
「裕貴?」
俺は綾香を背にして店の奥に向かい身構えていた。それを後ろから綾香が伺っているのだろう。俺の体の状態は背中に受けたダメージや出血量から危険域に達している事は容易に判断出来たのだろう。
「大丈夫だよ、問題ないわ」
今の言葉は何だ?女の様な言葉使い、普段の俺はこんな言い方はしない。
店の奥から現れた者は3本足のロボット、可動域は広くなさそうだが両腕にマシンガンの様な物が付いている。それは一度様子を伺った後、その場からマシンガンを撃ち放つ。
しかし、その弾は俺には届かなかった。綾香の能力で弾は俺に当たる直前に全て止まっている。
俺はそのまま、何処かの格闘術の構えを見せる。左足を前に構え左手をそっと前に伸ばす。一方右手は拳を作りさながら右拳での一撃必殺を狙っていると誰でも判る構えをしている。
どうして、自分の事なのに他人の様な表現になるかと言うと自分自身、まるで誰かに身体を乗っ取られたように自分の意志とは無関係に動いている為だ。
そしてその構えのままロボットへ一気に走り込み右拳を突き立てた。
ロボットは直前で左に交わす。
左後ろに回り込むロボットはマシンガンを至近距離で撃つと、俺は左足の踵をロボットの胴体下に引っかけ体を引きつけなが銃弾を目の前皮一枚で交わし、そのまま体を捻り右足で左腕を思いっきり蹴りつけた。
俺の蹴りで左腕のマニピュレーターを破壊した。それと同時にマシンガンが撃てなくなったみたいだ。しかし残った右腕で殴られた。
ロボットの腕の可動範囲は多関節構造だった為、予想していたよりもずっと広く真後ろまで腕が伸びてきた。
ロボットから2m程吹き飛ばされ壊れたテーブルに叩きつけられテーブルの脚が折れ下に落ちる。ロボットはまだ右腕のマシンガンへ弾倉を装填している音が聞こえた。
しかし足の関節が動かなくなったのか立ち往生している。こっちはさっきの蹴りで右足首から骨折している。
ロボットはどうやら右足の関節が動かない様だ。それでも後ろ足と左足でバランスを取り俺に右腕を向けた。壊れたテーブルで体を支えながら俺はその場に立ち上がる。
「クソ!」
さすがにこの状況はやばいと思ったときロボットの動きが鈍った。
「今だ!」
綾香のテレキネシスでロボットの動きを封じているとそう確信した時、咄嗟に体が動いた。折れた筈の右足で一気に地面を蹴り、前のめりにバランスを崩す体勢を体を捻りながら左足で地面を蹴り飛び上がり渾身の右ストレートを打ち込んだ。
ボコンと鈍い音がする。俺の右腕はロボットの外装を貫通している。腕の肘の下腕半分程度までがめり込んでいると言う表現の正しいのだと思う。
ロボットはスパークしながら機能を停止している。
「直ぐにここから逃げるわよ」
「え?でも・・・」
「その事は後でいいから早く」
動作を停止したロボットの胴体に足を掛け右腕を引き抜き、後ろでぺたんと座り込んでいた綾香の腕を取り店の外へ飛び出した。
「裕貴、その・・・大丈夫?」
「何が・・・?」
人通りの多い駅へ向かって走っている途中で綾香がそう聞いたのを最後に記憶が無い。
おそらくここで倒れたのだろう。それにしても俺の体を動かしていたのは一体誰だ?
「私は裕貴よ・・・」
再び目が覚めたのは随分明るくなっていた。
部屋の中を見回す。時間は午前9時20分頃、右手に刺さって無くなりそうになっている点滴液を眺めていた。
廊下で綾香の話し声が聞こえてきた。相手は看護士だろうか?
「裕貴!」
ドアを開けて入ってきた綾香は起きている俺に気が付き飛び込んで来る。
「無理しちゃって心配したんだからね」
「お前は大丈夫なのか?」
「かすり傷だもん、裕貴よりはずっとましよ」
「そうか、良かった」
「それより裕貴、どうなっているの?」
「何が?」
「裕貴の怪我、こう見えても軽傷なのよ?輸血は必要だったけど・・・もっと大怪我してなかった?」
「どういう事だ?」
「右足・・・折れてなかった?」
「多分・・・」
「それが何とも無いって言うのよ、軽い打撲だって」
「医者がそう言うならそうなんだろ?」
もしかしたら・・・と言う思いは有った。だが今はは黙っておこう。
それから、退院出来たのは3日後の4月25日だった。
朝倉裕貴編はいまここまでです(6章執筆中です)次の投稿まで少し時間が開きますが次もよろしくお願いします。




