1部 12芒星魔方陣 編 5章 裕貴の実力 2話
「そうね・・・魔力を封印されているみたいね」
「そういえば昔、なにかよく分からない所に連れて行かれて儀式みたいな事を受けた事が有ります」
「それで分かったわ。貴方は強制的に魔力を封印されているの、その魔力を解放してあげれば魔法が使えるようになるわ、でも・・・」
店員は手に持っている冷めてしまった紅茶を口に運んだ。
「魔力を解放しても貴方はもう魔法は使えないわ」
「じゃあ裕貴はどうなるの?」
「そうねぇ、何処までレベルが上がるか分からないけれども、ある程度の能力なら使えるようになる筈よ。魔法だったら相当な使い手になれたかも知れないけれど」
「能力の選択ミス?」
「一言で言うとね」
俺はさすがに落ち込んだ。今までの能力開発の努力が無駄だと知らされたのだから。
「じゃあ、裕貴はどうなるの?」
「綾香・・・」
俺は綾香の方を振り向いた。まるで自分の事の様に真剣な顔をしている。
「それは魔力を回復させると分かるわ、さあ、これから魔力の解放の儀式を行うわ、術式が解らないから逆算に時間は掛かるけどいい?」
「でもそうなると又、幽霊が見えたりするのですか?」
「それは貴方が見ようとしない限り見えないわ」
「どういう事ですか?」
「幽霊を見ようとするか見えないようするかは貴方次第って事ね。見たくないならそう念じれば見えなくなるし、見ようと念じれば見えるようになるわ」
「でも、小さいときはそう言うのとは無関係に見えたように思うのですけど」
「小さいときは、魔力のコントロールが上手く出来ないから見たくなくても見えたのよ、今の貴方なら、訓練・・・意識次第で見たり、見えなくしたり出来るようになるわ」
「見たくないと思えば見えなくなるのですか?何だか信じられないのですけど」
俺はさすがにここまで胡散臭い話を聞いた事が無い。店員はクスッと笑って言った。
「だったら一度試してみようかしら?貴方の右手を出して」
「こうですか?」
俺は半信半疑のまま右腕を差し出すと、その右手を店員は両手でそっと掴んだ。
「じゃあこの手をじっと見て、何も考えずにずっと見てるだけでいいわ」
「ええ?」
俺はただ、自分の右腕を眺めていた。
「今度はこの右手に意識を集中して、そうね、全身の感覚が右手に集まるようにイメージして」
「はい」
店員は右手を放し様子を見ている。2、3分程時間が経つと右手に鼓動を感じるようになってきた。そして何だか痺れる様な感覚も感じてきた。
「どお?右手が重たく、そして痺れを感じてない?」
「ええ感じます」
「その手を空いた方の手で触ってみて」
俺は訳も分からず左手で右手に触れてみる。右手が熱い。
「右手の温度、上がってない?」
「確かに熱くなっています」
「それが『集中』って能力よ」
「集中?って、ただの集中?」
「そうよ、能力発動も魔法も同じ事なの、集中する事で発動する。貴方が言っている幽霊が見える能力もその集中の一つよ、それが人より少しの集中力で見えるってだけの事なの、だったら逆の見ないと集中すると見えなくなるのよ」
にわかに信じがたい話だが今の右手の感覚を見ると-そうなのか?-と思ってしまう。
「分かりました。この後どうすれば・・・」
店員は店の奥から身の丈ほど有る長いステッキを持って俺の前に立った。
「そういえば、貴方の名前は?生年月日は?」
「えー、名前は朝倉裕貴、です。生年月日は2011年12月4日です」
店員はそれを聞くとボゾボゾと何か告げた。
「分かったわ。じゃあ魔力を解放するわよ」
「はい」
店員は目を閉じ意識を集中し始めた。
「うわ!」
綾香が驚く、店の中がグラグラと揺れ始め俺と店員と綾香が真っ暗の空間に変わり、俺の足元を中心に3人を囲む大きさの魔法陣が現れた。
魔法陣はくるくると足元を回り五角形の形になった。五角形の角には小さな魔法陣がある。
「これは?」
「貴方の魔力を封印していた術式の逆算に成功したの、これは嵯峨家流ね」
「嵯峨家流?」
俺が聞きたいところを先に綾香が聞き返す。
「1500年以上昔から有る陰陽師よ、有名なのは土御門神道だけどね、これから封印を解除するから動かないで」
「はい」
何か呪文の様なものを唱えている。足元で回っている魔法陣が五角形から丸形へさらに変わり足元に絡みつき始める
「うわあ」
「じっとしてて!」
魔法陣が足から順に登り全身に魔法陣が移ったところで魔法陣が消えていった。体に纏わり付く様な感覚と熱さが残る。そして全身からまた文字や紋様が現れ足元へ引っ張られ、足元から床にさっきとは違う星形の魔法陣になった。星形の線になっている所は帯状で中にお経で出てくる漢字が書かれている。星形の魔法陣広がって行くとうっすらと消えていった。そしていつの間にか閉じていた目を開けると元の店内に戻っていた。
「お疲れさま、気分はどう?」
「何か、重たい服を脱いだような・・・体が軽くなったような気分です」
「そう、これから貴方はどんな能力が発現するかは分からないけどいずれ、能力が使えるようになるわ」
「魔法じゃ無くて能力ですか?」
「そう、能力、魔力の有る者が能力を使うと言う事は珍しい事では無いの、その時は魔法は一切使えなく成るのですけどね」
「良かったね裕貴、それでそれで?どんな能力にするの?」
「え?能力って選べるの?」
「元々魔力の有る者は能力の種類をある程度選べると聞いてるわ」
「そうなんですか、どんな能力にするかはじっくり考えさせて貰います」
「そうするといいわ、一度能力を決めてしまうと変えられないからじっくり考えるといいわ」
「有り難うございます」
何だか気分が高揚している。
俺は自由に能力を選べる。何だか面白いじゃないか!
「朝倉さん」
店員は言う。
「はい?」
陳列されている棚の一番下の引き出しから小さな木箱に入ったケースを取り出した。
「貴方にこれをあげるわ、常に身につけておくようにして」
手渡されたケースを開ける。青い石の付いたネックレスだった。
「これは?」
「これは月の石って呼ばれている物よ、解放した魔力を安定させられるわ」
「いいんですか?これ高く無いですか?」
「要らないわ、ただし条件が一つ」
そう言うと、店員は俺の右手に持っているケースからネックレスを取り俺の首に掛けた。
「ちょっとなにやってんのよ!」
「あら、彼氏取ってごめんなさいね」
綾香が非難する。俺も突然の事だったので緊張して手に汗が滲んでいる。しかし店員は動じず話しを続けた。
「これで魔力が安定するわ、これから発現する能力は貴方が望む力がより発現するようになるわ」
「そのネックレスが能力の手助けをするって事?」
「お前、俺の能力に興味があんの?」
綾香はさっきまで怒っていがそれよりも俺のこれから発現する能力に興味があるみたいだった。
「そりゃーねぇ、あっ、すみません」
「あっ、そうそう、条件はね・・・発現した能力が何か教えて欲しいの」
「能力を?」
「これは、ただ私が興味が有るからよ
「分かりました。能力が分かったらまたここに来ます」
「私はジュリアン、ここの店主をしているわ、他の者が出てもそう言えば話が通じるわ」
ジュリアンはレジの置いてある机にもたれながら言った。
綾香は話を逸らす様に商品を選んだ。魔法攻撃から防御出来るブレスレットと魔力の流れを整えると言うヘアピンを買った。




