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1部 12芒星魔方陣 編  5章 裕貴の実力 1話

 翌日、4月22日の土曜日、俺は普段より1時間早い6時に起きた。

 藤井先輩にはブルーバンドの活動を休む事をメールで伝えると早朝のパトロールをやるように言われた。

 着替えを済ませると音を出来るだけ立てずに部屋をでた。綾香はまだ起きていないだろう。

 パトロールを済ませ事務所に帰ってくると。藤井先輩が椅子に座ってたたずんでいた。

「ただいま戻りました」

「お疲れさまー、何処も異常無かった」

「はい、異常有りませんでした。先輩済みません、急なメールして」

「いいのよ、私も昼から友達を遊びに行く約束してるし」

「そうですか、で、先輩今何やってるんです?」

「テレポートのトレーニングよ、私の場合はテレポート先の空間の認知が出来るの」

「それってテレポート先の景色が見えるって事ですか」

「それほどでも無いけど、テレポートする場所の物体の有無を感知する程度よ見ると言うより感覚で、テレポートする場所に何か他の物体が有ると大変でしょ」

「地面の中にテレポートしたりする事が有るって事?」

「そういう事ね、そうならない為にもイメージというか感覚のトレーニングするの」

「なるほどー、あっ、先輩、俺そろそろ行きます」

「あらそう、じゃあ楽しんで来てね」

「ちょっと先輩ー」

 俺をからかう藤井先輩に言ってから自分の家に戻った。

 家に戻ってきたのは午前11時、さすがに4月下旬で天気も良くなれば気温も上がる。

 朝はそうでも無かったが結構汗をかいたのでシャワーを浴びた。部屋には綾香が来た痕跡が無いから綾香はまだ俺の部屋には来ていないだろう。

 もうそろそろ綾香が来る頃かな?

「裕貴、起きてる?」

「さすがに起きてるだろ、もう11時だからな」

 綾香は膝丈のオレンジ色のハーフパンツに白と薄い黄緑のボーダーの長袖シャツに紺色のベストを着ている。一方の俺はジーンパンに襟と袖だけが白い黒の長袖シャツを着ている。

「じゃあ、早くいこ!当然、裕貴のおごりで」

「え?・・・分かりました」

 俺って何か弱み握られていたっけ?っと思いたくなる程強気な口調の綾香に勢いで返事してしまった。まあ似たようなものか・・・。


 綾香に連れられるままライトライナーに乗り継いで那波(なは)駅に着いた。

「ここに何が有るんだ?」

「ちょっと面白そうなお店」

 そのまま綾香に付いていくと目の前に古ぼけ蔦に覆われた建物の前にたどり着いた。入り口の看板に『Oz・Rose』と書いてある。

「何この怪しい店は?」

「オズ、ローズって言うの、魔法アイテムを売っているんだって」

「魔法ってデジタル魔法のアイテム?」

「うんん、本当の魔法のアイテム」

「そんなの買ってどうするんだよ」

「魔法が使えなくてもアクセサリーとしては十分使えるでしょ!そう言うアイテムがあるんだって」

「お前もこの店来た事無いんだな」

「そう、初めてだよ」

 中はひんやり涼しく、そして薄暗くいかにも中から鼻の高い魔女でも出てきそうな店内で通路の両脇に所狭しと商品が陳列してあった。

「いらっしゃい」

 奥から店員が現れた。赤い髪で白いロングワンピースを着ていて、顔の肌の色も白く薄暗い店内で余計に際立っている。

「とても綺麗な人」

 綾香は横に立って耳元で囁いた。

「お探しの物は何かしら」

「アクセサリーになりそうな物を見に」

「俺は付き添いってとこです」

「そう、ゆっくりしていってね」

 店員の女性はそう言うと店の奥に入った。中で食器の音がする。

 その間も陳列されているアイテムを見ていた。

「あ、これだ」

「なに?」

「この前見たんだデジタル魔法を使っているヤツが持ってたステッキ、こんな感じだった」

「ステッキってこれ?」

 綾香はステッキを手にとって見せた。

「これ、思ったより結構重い」

「それはワンドって言うの、魔力を根源にスペルを唱えそのワンドで魔法を発動させるの」

 店の奥からさっきの女性店員が再び現れた。銀の盆に紅茶が3カップと砂糖、ミルクの小瓶と小さなクッキーが載っていた。

「ここはそんなに人が来ないから、どうぞ」

 赤い髪の店員は俺と綾香に紅茶を勧めた。

「ここに有る物は魔法と関係が有るのですか?」

 紅茶を飲みながら綾香は店員に訊いた。

「ここに有る物は全部、魔法を使う為のアイテムよ、その中には魔法から身を守る物も有るわ」

「この指輪とかですか?」

 綾香は目に付いた指輪を眺めながら訊いた。

「この指輪は魔力を増幅させる物ね、それならこっちがいいと思うわ」

 店員はそう言って隣のブレスレットを綾香に見せた。

「こっちが魔法から身を守る方ですか?」

「そうね、相手が魔法使いなら攻撃を受けても若干はダメージを軽減出来るわ」

「若干って、どれ位?」

「これを持つ人がある程度の魔力を持っていると完全な防御が出来るのだけど、魔力が無くても魔法の防御が出来るの」

「じゃあ魔力が無いと防御が出来ない・・・と?」

 俺は聞き返す。

「そうね、例えば相手が炎の魔法で貴方を攻撃した時、焼け死ぬ程の大怪我はしなくて済むって感じかしら」

「それじゃあ余り効果が無い?と言う事ですか」

「それでも、魔法に対して耐性が付く事はとても良い事よ」

「良いじゃない?私はアクセを見に来たのよ、じゃあこれにします」

 綾香は店員が勧めたブレスレットを手に取った。3個の赤い石を6重になった糸の様に細い鎖で繋いである。

「貴方は魔法が使えない見たいね、能力者の方かしら」

「ええ、私はテレキネシストですけど」

「彼はどうなの?魔力を感じるけど」

「裕貴に魔力?魔法が使えるって言うの?」

 綾香は笑い半分、驚き半分と言うような表情で聞き返した。

「ええ、俺はレベル0ですけど」

「能力レベルも結構有る筈なんだけど・・・小さい時に何か変わった事は無かったかしら?」

 俺は昔に何が有ったのか考えたが思い出せない。

「そういえば裕貴?昔、何か見えるって言ってなかった?」

「お化けや幽霊だうけど見えたな。確か左足首に何かに捕まれた痕が有った」

「悪いけど少し見せて貰える?」

 店員は感心が有るらしく俺は「いいですよ」と答えて足首に残っている痕を見せた。

「うわ、こんなにくっきり残ってたっけ?」

 綾香が改めて驚いた。店員はしゃがみ込み俺の足をじっくり観察し始めた。胸元が大きく開いた白いワンピースから胸の谷間が見えているので目のやり場に困る。そして痕を触ったりして舐めるように観察している。

「あの・・・」

「ここまではっきり痕が残るなんてね・・・これは何時出来たの?」

 しゃがみ込んだまま上目遣いで俺に訪ねてきた。

「確か幼稚園の時だったと思います」

 店員は左足の痕を指でなぞりながら見ると立ち上がる。目の前から少し離れた紅茶のティーカップ手に取りながら。

「これは魔傷(ましよう)よ」

「ましょう?」

「悪魔が貴方に付けた傷、そして悪魔と契約が出来る証でもあるの」

 店員はそう言うとティーカップを持ったまま店内を歩く。綾香は不思議そうな顔で俺達を見ている。

「ちょっと、すみませんが・・・」

「確か能力者だったわね?」

「レベル0ですが」

 店員にもう一度同じ説明を繰り返した。


いよいよ、岡本浩子編の5章「魔法の鱗片」とリンクする出来事が発生します。

朝倉裕貴と中野綾香たちは岡本浩子、浦多香子、織田千恵美、芦田直魅たち4人より先に魔法アイテムショップ「オズ・ローズ」に入店してます。

多少、複雑ですが2主人公の時間経過を読み解くとより臨場感が出てくると思います。

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