第9話 壁の向こうの声
フェルナンドの意識はふっ、と戻る。気がつけば、暗い部屋だった。手足は拘束されていて床に転がされていた。部屋には彼一人だった。ドアの先に気配がある。見張りだろうか。
「きゅい」
視線を上げるとアンブルがいる。鳥籠に閉じ込められていて、首には魔力封じの首輪がつけられていた。
「大丈夫、って? おう。お前は?」
「きゅう」
「ちょっとだるいか。魔力封じのせいかもな。……俺の体、何がついてる?」
「きゅい」
フェルナンドはふっ、と笑う。
「……それは服だな。他には?」
「きゅ」
「首になんか? どんな色と形だ?」
「きゅいきゅい」
「黒くて、赤い? 輪っか? ……状況的に、魔力封じっぽいな。ありがとな」
「きゅう?」
「どういたしましてか。よく言えました。ルミは?」
「きゅい」
「……見てないか。分かった」
無事だといいんだけど……、とため息をついた瞬間だった。壁の向こうから鳴き声が聞こえてくる。
「ぴちぴ」
「っ、しまちゃん?」
「ぴぃ」
「元気そうだな。けがは?」
「ぴち」
「……なんとかなってる? 飛ぶのは無理? 分かった」
彼は「生きてるんなら良かったわ」と笑う。
「ルミはそばにいるか?」
「ぴぴ」
「……まだ寝てる? ケガもなさそう? おう。黒い首輪はついてるか?」
「ぴち、ぴぃ」
「首だけじゃなく手足にも? 厳重だな。拘束は?」
「ぴちち」
「ない? ……ルミの扱いは、丁寧なのか……」
フェルナンドは周囲を見回す。窓はない。外の音も聞こえない。現在地の特定は難しそうだった。
「……参ったな」
彼は小さく舌打ちをする。その時だった。壁の向こうから聞き慣れた声がした。
「……フェル?」
「ん、気がついたか?」
「うん。……怒ってる?」
「……お前を、守れなかったし」
フェルナンドは黙り込む。沈黙が落ちる。それを破ったのはルミだった。
「生きてるよ」
「え?」
「私も、しまちゃんも、アンブルも……かな? 生きてるよね?」
「きゅい」
「良かった。フェルも。みんな生きてる。だから大丈夫」
フェルナンドはふっ、と息を吐いた。
「……そうだな」
「力抜けた?」
「おう。ありがとな」
彼は笑顔を浮かべた。その瞬間、ガチャリとドアが開いた。顔を上げた先には貴族の男性が立っている。後ろからは、商会の制服を着た男たちが入ってきた。
「お久しぶりですね。フェルナンド皇子」
「……モンテリア公爵子息か。アルヴィン商会の奴らもいるな」
「ええ。軍拡派や商会の摘発など、ご活躍は耳にしております。おかげさまで、父も処刑されました」
「……安い復讐だな」
フェルナンドは小さく吐き捨てた。
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