第7話 ノートとパフェと、一本の矢
雑貨屋に入ったフェルナンドとルミは、まず文房具コーナーに向かった。
「あ、あったあった」
彼女はそう言って一冊のノートを手に取った。
「そのノート、何がいいの?」
「何にでも使えるのと、あと書き心地。ついでに表紙もかわいい。ほら」
「ドット方眼か。意外としっかりしてんだな。確かに便利そう」
「でしょ。フェルもドット方眼だよね」
「俺? 白紙派」
「……だったっけ?」
ルミは首を傾げた。フェルナンドは笑う。
「人に見せる用はドット方眼」
「見せる用?」
「おう。ノート提出とか、宿題提出に使うやつ。勉強がちょっと苦手な恋人に見せることもある」
「……いつも、ありがと」
「おう」
ルミは笑顔を浮かべて彼を見る。
「……すっごく興味本位なんだけど」
「ん?」
「自分用のノート、どんな感じなのか気になる」
「すげえぞ。記号だらけでぐしゃぐしゃだし、癖字だから俺以外は読めない。先生に『なんでこのノートで成績がいいのか分からない』って言われた」
「そうなの? ノートの字、きれいだけど」
「見せる用はな。癖字はリカルドに『暗号かと思いました』と言わしめた逸品だ」
「逸品」
「おう。暗号のほうがまだ読める」
「まだ読める」
「……すごく気になる」と呟くルミに、フェルナンドは「癖字だけでも見る?」と笑う。
「見る」
「分かった」
フェルナンドは笑って、試し書き用のメモにサラサラと何かを書く。
「早いね」
「おう。きれいに書くと遅くなる。普段はこんな字」
彼はメモをルミに見せた。
「……フェル」
「ん?」
「……ミミズの絵?」
「だろ」
「……ちなみになんて?」
「フェルナンド・メディナ・ガリゲスだ」
「……読めない」
「ルミ・ハーヴィも書こうか?」
「書いて」
「おう」
フェルナンドはサラサラと下に文字……らしき、ミミズの絵を書く。
「……違い分かんない」
「俺は分かる」
ルミは笑う。フェルナンドも釣られて笑った。
◇
ノートを購入した二人はパティスリーへと向かう。席についた二人はメニューを広げた。
「美味しそうだね」
「ゆっくり決めていいからな」
「……そうする」
ルミは夢中でメニューを眺める。フェルナンドはメニューもそこそこに、キラキラ輝くサファイアを見つめていた。
「……フェル、見すぎ」
「悪い」
「思ってない顔してる」
フェルナンドは「バレちまったか」とクツクツ笑う。
「何にするか決まったか?」
「バナナのやつと、マンゴーのやつ」
「一つにしとけ。入らないだろ」
「残りはフェルが食べて」
「わがまま女王サマめ。いいけど」
フェルナンドは手を挙げて「すみませ〜ん」と店員を呼んだ。
◇
「ああ、おいしかった」
「それは何より。おい、転ぶぞ」
フェルナンドはルミの肩を引く。彼女は「ありがと」と笑った。
「……明日の授業、なんだっけ」
「歴史、数学、理科、体育、魔法……あとなんだったっけ。あ、歴史は小テストあったぞ」
「うげ〜」
「帰ったら勉強だな」
「ええ〜」
彼女は唇を尖らせる。彼は「子供かよ」と笑った。角を曲がる。
ひゅん、と目の前を何かが通り過ぎた。それは、矢だった。
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