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第6話 保冷剤を持って待ち合わせ

「……どっちがいいんだ……?」

「きゅい」

「違いが分かんない? 分かれよ」


 自室にて。フェルナンドは2枚のシャツをじっと見比べて迷う。


「……こっちが黒、こっちが赤。な、違うだろ?」

「きゅい?」

「……赤暑そう、か。……白もありだな」

「きゅい」

「……早く決めろ? まあ、待て」


 彼は苦笑しながら鏡を見る。


「……白にしとくか。よし」


 フェルナンドは選んだシャツを着る。念入りに髪の毛をとかし、あえて無造作に見えるようにセットした。

 鏡で全身をチェックして、おかしなところがないか確認する。


「たぶんこれで大丈夫、だな。うん」


 彼はポケットをまさぐる。


「……よし、保冷剤持った。行くか」

「きゅいきゅい」


 アンブルはばさりと飛び立って、彼の頭に飛び乗った。フェルナンドは慌てて指示を出す。


「頭はやめろ! 髪が崩れる!」

「きゅい?」

「うん、肩ならいいぞ。……爪! 立てんな!」

「きゅいぃ……」

「落ち込むな。爪しまったらいい。……ん、そんな感じ」


 彼は親指でアンブルの頭をぐりぐりと撫でた。



 待ち合わせ場所の校門に向かうと、すでにルミが待っていた。近くにはリカルドや王国の騎士などの護衛もいる。

 いつもと同じようにツインハーフにまとめられた髪に、大きめのストローハット。普段は制服に隠れている日焼けの一つもない白い腕は、太陽を反射してキラキラと輝いていた。黄色の花が踊るように散りばめられた南国風のワンピース。白いサンダルの先からは、水色に彩られた爪が覗いている。

 彼女は顔を上げた。


「……フェル?」

「……おう」

「……どうしたの?」

「……悪い。……見惚れてた」

「……かわいい?」

「すっげえかわいい」


 どちらからともなくくすくす笑う。フェルナンドは保冷剤で十分に手を冷やしてから、その手を差し出した。


「行くか」

「うん」





 雑貨屋の前に来たところで、フェルナンドは「あ」と足を止めた。


「きゅい?」

「……アンブル連れたまま入れねえわ」

「使い魔、しまえるよ」

「マジで?」

「うん。こうやって」


 ルミは空中に円を描く。すると空間がぽっかり開いた。穴の中からしまちゃんが顔を出す。


「ぴい」

「……何かあった、か? 何もねえよ」

「ぴちち」

「お昼寝中だった? ごめん、起こしちゃったね」

「ぴち」


 しまちゃんは穴のなかに戻る。音もなく空間が閉じた。


「……できっかな」

「というか、割とできないとまずい。使い魔をずっと連れ歩くのは無理だよ」

「……だよな。こうか?」


 フェルナンドは空中に円を描く。空間が開いた。しまちゃんサイズの穴が。


「……アンブル、それじゃ通れないと思う」

「……小さすぎたか。閉じるのどうやんの」

「閉じたいな、と思ったら閉じる? 意識したことない」

「規格外め」


 彼は笑いながら空間を閉じてみる。……ルミほど瞬時ではないものの、問題なく閉じた。


「……穴、大きくするにはどうすればいいんだ?」

「大きく円を描いてみる、とか? ……ごめん、知らない」

「やってみるわ」


 フェルナンドは腕をぐるりと回して円を描く。先ほどよりも大きな穴が開いた。……人間一人なら、十分飲み込めるほどの大穴が。


「大きすぎ」

「……大は小を兼ねる、ってことで……」


 彼はボリボリと頭をかきながら、「アンブル、入れるか?」と問いかける。アンブルはバサバサと羽ばたいて穴の中に入った。時間をかけて穴が閉じていく。


「練習、しないとな」

「だね」


 穴が閉じたのを見届けてから、二人は雑貨屋に入店した。

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