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第4話 これからよろしくな

「……殿下。まずこれを」


 エミリオ先生はコップになみなみと注がれた緑色の液体をフェルナンドに差し出す。


「……先生、これは?」

「滋養強壮剤です」

「……滋養……強壮剤」

「はい。干からびる前に飲んでください」

「……分かりました……」


 彼はぐっとコップの中身をあおる。


「っっっ!?」


 口の中に広がるのは、目一杯の青臭さ。苦いなんてレベルじゃない。目玉が飛び出す。思わず口を押さえて咳込んだ。ぐっと身体が楽になる。


「効くでしょう?」

「効きましたけど! 効きましたけど!」

「魔獣は生命力を取るものが多いので、常備してるんです。さて、元気になったところで契約に移りましょうか」

「……お願いします」


 フェルナンドは肩を落とす。先生は笑って一枚のプリントを差し出した。


「さて、使い魔の契約には双方の合意が必要です」

「……双方の、合意……?」

「はい」


 彼は頭の上に視線を向ける。


「きゅい!」

「……お前は、おっけーみたいだな」

「では次です。契約の確認ですね。火竜をこの魔法陣の上に」


 先生はそう言って、火竜が乗るほどの魔法陣を取り出した。


「……これは?」

「契約のための魔法陣です。この上に乗せると、契約条件が浮かびます」

「……ちょっとすまんな」


 フェルナンドは火竜を陣の上に乗せる。文字が浮かび上がる。フェルナンド側は保護監督義務と魔力の定期提供義務を負い、命令権を受け取る。火竜側は魔力を受け取る権利を得て、命令に従う義務を負う。


「魔力量は大丈夫そうですね」

「……要するに、保護者になれってことですね」

「はい」

「……お前、ビシバシ働けよ」

「ぴゅい?」


 火竜は首を傾げた。


「……分かってねえな。……俺がこうしろ、って言ったら従え、ってこと」

「きゅいきゅい」

「……分かった? 分かってんのか?」

「まだ子どもですから」

「……こいつ、何歳くらいです?」

「人間にすると、三歳くらいかと。……殿下、契約前に一つ。彼はこれ以上発達しません」


 フェルナンドは先生をじっと見る。


「……え?」

「正確には、殿下の生きているうちに、ですが。寿命が長いので」

「……そういうもんか……」


 彼は頭を抱える。


「……契約、見送ります?」

「……そしたら、こいつを倒さなきゃいけなくなるんですよね……。しゃーねーか」


 フェルナンドは背筋を伸ばす。


「……契約、します」

「はい。では、ここに名前を」


 先生は魔法陣の下を指さした。フェルナンドはペンを取る。そして、動きを止めた。


「……あの」

「何でしょうか」

「……一年後に名前変わるんですけど、大丈夫ですか」


 大真面目な顔で聞くフェルナンドに、エミリオは笑った。


「気にしなくて大丈夫です。こういうのは魂に結びつくので」

「よし、じゃあ」


 サラサラと名前を書く。ふっ、と体から力が抜けた。魔力を消費したのだろう。


「最後に、名前をつけてあげてください」

「……名前か……」


 フェルナンドは火竜を見る。琥珀のような目と視線が交差する。


「じゃあ、アンブルでいいか?」

「きゅい!」

「よし。アンブル、これからよろしくな」

「きゅい、きゅい!」


 アンブルは嬉しそうにフェルナンドに飛びついた。


「おい、やめろ! 顔に張り付くな!」

「きゅい〜」


 バサバサという音が響く。これからより騒がしくなりそうだった。

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