↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/16

第11話 止まらない吹雪

 壁に叩きつけられ、痛みで意識が朦朧とする。

 そんな中、フェルナンドが感じたのは肌を刺すような冷気だった。ルミの名前を呼ぼうにも、喉から出るのは潰れたうめき声だけだ。

 次の瞬間、壁が弾け飛んだ。奥に立っていたのはルミだった。

 白銀の髪は静かに浮き上がり、蒼玉の瞳は煌々と輝きを放つ。吹雪は彼女を中心にうねっていた。さながら雪の女神の顕現にも見えた。

 フェルナンドは息を呑む。こんなルミは、見たことがなかった。青い瞳と目が合う。視線の温度が更に下がった。


「……誰」


 ルミは静かに問いかける。


「フェルにこんなことしたの、誰」


 フェルナンドの頭に「竜の逆鱗」という言葉がよぎる。


(こいつら、終わったな)


 モンテリア公爵子息は尻餅をついて後ずさる。「……ひぃぃぃ」と情けない声も漏れた。誰もが息を呑む。鳥かごの中でアンブルが震えているのだろう、がたがたと鳥かごが揺れる音が聞こえた。


「誰って言ってるの」


 フェルナンドは目だけで公爵子息を示す。ルミは「ありがと」と言ってから口を開いた。


「凍れ」


 次の瞬間、手足からじわじわと氷が広がっていく。


「やめろ、やめてくれ……」


 公爵子息はがたがたと震えながら命乞いをする。


「……あなたは、フェルにやめろって言われたら、やめられた?」


 彼は何も答えない。ただガタガタと震えている。凍結は進む。やがて、物言わぬ氷像が完成した。


「……ひぃぃ」


 商会の奴らが声を上げる。それを皮切りに、彼らは逃げ出そうとした。ルミはそちらへ目を向ける。


「逃さない」


 床を走った霜が彼らの足を捕らえる。悲鳴を上げる間もなく、氷は全身へと駆け上がった。

 次の瞬間、そこにはいくつもの氷像が並んでいた。


(規格外だな)


 彼は笑いをこぼす。ルミも微笑みを浮かべた。なのに、吹雪が収まらない。ルミの顔が驚きに染まっていく。


「……ルミ?」

「……フェル、どうしよう」

「……どう、した……?」


 ルミは青い顔で首を振った。


「……止まらない」


 吹雪は未だ部屋の中を叩きつけるように吹き荒れている。フェルナンドは口の中で「やべえな」と呟いた。


「……ルミ、こっち……これね?」

「何するの?」

「俺が……制御する」

「魔封じは?」

「……外してくれ」

「分かった。拘束も外しとくね」


 ルミはフェルナンドに近づき、彼の首にはまっている魔封じの首輪を外す。手足の枷も外した。


「……ん。ありがと。……制御、渡せるか?」

「……やってみる」

「……最悪、意識するだけでいい」


 フェルナンドは彼女の肩に手を乗せた。


「……どう?」

「……ちょっと集中させてくれ」

「うん」

「……ルミ、ゆっくり息を吐けるか?」

「分かった」


 彼は痛みに顔をしかめながらも、吹雪の制御を取り、少しずつ、少しずつ鎮めていく。やがて冷気が収まった。彼は肩から手を離す。


「……よし」

「ありがと」


 ルミは笑顔を浮かべてお礼を言う。そして気づいた。


「フェル、怪我してる」

「……なんとも……ねえよ」

「強がりはいいから。口から血が出てる」

「……どおりで。……まずいと思った」


 ルミは「もう」と呟きながら、傷口へ手をかざした。

読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。