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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) 1~絶望の未来を書き換えろ。地獄還りの少年が挑む、禁断のタイムリープ戦記!~  作者: たくみふじ
第五章 黎明の天秤

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神と人の共鳴、そして砕け散る空㈠

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

 世界において、これほど異質で、かつ完璧な「不協和音の調和」が存在しただろうか。

 崩壊しかけた大講堂の中心で、二色の光が螺旋を描いて天へと立ち昇っていた。一つは、全てを無に帰す漆黒の雷。荒ぶる神、スサノオの純粋なる破壊の力。もう一つは、世界を定義し直し、修復する黄金の波動。人の子、カイの創造の力。

 本来ならば、触れ合った瞬間に互いを消滅させ合うはずの対極の力が、今、共通の敵である異次元の捕食者「カオス」を前にして、奇跡的なシンクロを見せていた。それは信頼ではない。友情でもない。ただ、「生存」という一点のみで合致した、ギリギリの臨界点での共振だった。


「オオオオオオッ!」


 スサノオが獣のように咆哮し、天逆鉾(あまのさかほこ)を振るう。彼の一撃は、単なる物理攻撃ではない。空間ごと対象を削り取る、神速の斬撃(ざんげき)だ。その余波だけで、講堂の窓ガラスが全て粉砕され、壁に亀裂が走る。だが、対するカオスの肉塊は、物理法則を嘲笑(あざわら)うかのように変形した。刃が触れる直前に、自らの肉体を霧状に分散させ、衝撃を透過させる。そして、霧となった触手が、スサノオの死角から絡みつこうとする。


「チッ、ヌルヌルと小癪(こしゃく)な!」


 スサノオが舌打ちをする。彼の破壊力は宇宙最強クラスだが、相手に「当たる」という概念が希薄であれば、空を切るだけだ。神の暴力も、暖簾(のれん)に腕押しでは意味がない。

 そこへ、カイの声が割り込む。彼は、血走った目で戦況を見極め、喉が裂けよとばかりに叫んだ。


「そこだ! 実体化させる!」


 カイが右手を突き出す。言霊の力が、黄金の(くさび)となってカオスの不定形な肉体に突き刺さる。


(お前は流体ではない! そこに質量を持って存在する『固形物』だ!)


 カイの定義(コマンド)が、カオスの持つ「物理無効・回避」という(ルール)を、強制的に書き換える。この宇宙の物理法則に従え。質量を持て。硬度を持て。そして――傷つけ!


 ジュワッ! 


 カオスの肉体が、カイの干渉を受けて強制的に硬質化し、逃げ場を失う。黒い霧が、アスファルトのような固形物質へと変貌する。


「でかした、小僧!」


 その刹那の隙を、闘神が見逃すはずがない。スサノオの瞳が、残虐な歓喜に歪む。


 ズドン!! 


 黒い稲妻を纏った天逆鉾が、硬化したカオスの(コア)とおぼしき部分を、正確無比に貫いた。


「ギャアアアアッ!」


 カオスが、鼓膜をつんざくような、聞いたこともない不快な周波数の悲鳴を上げる。初めて、明確なダメージが通った。黒い体液が噴水のように撒き散らされる。


「……ハハッ! 悪くない! 悪くないぞ、カイ!」


 スサノオが、狂喜の笑みを浮かべて叫んだ。彼は、数万年の神としての生の中で、初めての感覚を味わっていた。これまでの彼は、己の力だけで全てをねじ伏せてきた。他者との連携など、弱者の群れる行為だと侮蔑してきた。だが、これはどうだ。自分が剣を振るう場所に、あらかじめ「道」ができている。自分が「斬りたい」と欲した瞬間に、敵が「斬れる状態」になっている。まるで、自分の半身がもう一つ増えたかのような、思考と行動のタイムラグがゼロになる全能感。


「貴様が『まな板』に乗せ、私が『包丁』で捌く! 単純明快! これほど効率的で、これほど愉快な殺戮(さつりく)があるか!」


 一方、カイは必死だった。額から脂汗が滝のように滴り、鼻血が止まらない。脳が焼き切れそうだ。スサノオの動きは速すぎる。神の速度(ゴッドスピード)に合わせて、瞬時に敵の状態を解析し、最適な「言霊」を選び、世界を書き換える。その処理能力は、スーパーコンピュータ数千台分に匹敵する負荷を、生身の脳に強いていた。一瞬でも気を抜けば、タイミングがずれ、スサノオの破壊エネルギーの余波に巻き込まれ、自分ごと消し飛んでしまう。綱渡りなどという生易しいものではない。爆発する火薬の上を、目隠しをして全速力で走っているようなものだ。


(……でも、いける! こいつとなら……カオスを倒せる!)


 カイは、敵であるはずのスサノオの背中に、奇妙な信頼感を覚えていた。その圧倒的な暴力性こそが、今は頼もしい。

 カオスは追い詰められていた。再生能力が追いつかない。捕食しようと触手を伸ばせば、カイに「脆弱な糸」と定義され、スサノオの雷撃に焼き切られる。逃げようとすれば、「壁」を作られ、退路を断たれる。神と人。最強の矛と、最強の盾が手を組んだ今、この宇宙に斬れないものなどなかった。


『……許サナイ……! オ前タチ……食ベチャウ……! 全ブ、食ベチャウ……!』


 カオスの無数の目が一斉に見開き、赤く、禍々(まがまが)しく発光した。ブォン……ブォン……。空間が振動する。肉塊(にくかい)が収縮し、限界までエネルギーを圧縮し始めた。まるで、爆発寸前の恒星のように。


「自爆か!? いや、広範囲への捕食攻撃か!」


 後方で指揮を執っていたひかりが、通信機越しに叫ぶ。


『エネルギー反応、測定不能! カイくん、逃げて! その距離じゃ蒸発するわ!』


 講堂全体が、吸い込まれるような黒い光に包まれる。重力が反転し、瓦礫が浮き上がる。


「来るぞ、カイ! 防げるか!?」


 スサノオが叫ぶ。彼もまた、天逆鉾を構え、迎撃の態勢をとる。


「防がない!」


 カイが叫び返した。


「なに?」


 スサノオが怪訝(けげん)な顔をする。


「防ぎきれない! あのエネルギー量は、僕の言霊の許容量(キャパシティ)を超えている! 守ろうとすれば、守りきれずに押し潰される!」


 カイの瞳に、狂気に似た覚悟の光が宿る。


「なら……撃ち抜くしかない! 一点突破だ! 攻撃こそが最大の防御だ!」


 カイは、防御のための障壁を捨て、一歩前に出た。無防備な背中を敵に晒し、ただ攻撃のためだけに精神を研ぎ澄ませる。スサノオは一瞬目を見開いたが、すぐに口角を吊り上げ、ニヤリと笑った。


「……イカレておる。人間風情が、神に『攻めろ』と命じるか。……だが、嫌いではない!」


 カイが、残る全ての精神力、生命力、そして未来への希望を、右の掌に集約させる。イメージするのは、絶対的な「終焉」。不滅の存在に、死を与えるための概念武装。


「スサノオ! 僕が奴の(コア)を露出させ、そこに『死の概念』を付与する! その一点に、君の最大最強の一撃を叩き込め! 外せば、僕たちは終わりだ!」


「誰にモノを言っている! この私が、狙いを外すことなどあり得ん!」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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