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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) 1~絶望の未来を書き換えろ。地獄還りの少年が挑む、禁断のタイムリープ戦記!~  作者: たくみふじ
第五章 黎明の天秤

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既視感の攻略戦と、混ざり込む異物㈡

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

『カイ! ちょっと、変なことが起きてる!』


「どうした? 失敗したのか?」


『ううん、結界石は三つまで壊した。でも……四つ目の、西の焼却炉。そこにいた警備員が……何か、変なの』


「変?」


『死神じゃない。……っていうか、死神が、食べられてる』


 カイの背筋に、冷たいものが走った。食べられている? 死神が?


「どういうことだ、詳しく教えてくれ」


『わからない。黒い……ノイズみたいなモヤが、死神にまとわりついてて。死神が『助けてくれ』って叫んでるの。……カイ、これ、前回にはなかったよね?』


 カイの脳裏に、月読命の警告が『カオス。混迷の海より来たる者たち』まさか。まだスサノオと戦ってもいないのに、もう現れたのか? いや、違う。


(時遡行の反動か……!)


 無理やり時間を巻き戻したことで、世界の「壁」が薄くなっているのだ。そこから、異物が漏れ出している。


「ソラ、近づくな! そいつは危険だ!」


 カイが叫んだ瞬間、通信機越しに、ギギギ……という不快な音が響いた。それは、金属を擦り合わせたような、あるいは虫の羽音のような、生理的嫌悪感を催す音。


『きゃあっ!』


『ウゥゥーッ! (来るな!)』


 ソラの悲鳴と、クロの唸り声。そして、通信が途絶えた。


「ソラ! クロ!」


 カイは叫んだ。


「カイくん、どうしたの!?」


「想定外の敵だ。……ひかり、ここは任せていいか?」


「えっ、でも……」


「ソラたちが危ない。行ってくる!」


 カイは、放送室を飛び出した。


 西の焼却炉。そこは、普段は学生も寄り付かない、キャンパスの吹き溜まりのような場所だ。だが今、そこは異様な空間に変貌していた。

 風景が、バグっている。焼却炉の煙突が、ピクセル画のように四角く分解され、空中に浮いている。地面のアスファルトは液状化し、虹色の波紋を広げている。そして、その中心に、それはいた。

 形は、定まらない。テレビの砂嵐(ノイズ)を集めて人の形にしたような、黒く、ざらついた影。その影が、警備員の死神を「捕食」していた。死神の体もまた、ノイズに侵食され、データが欠損するようにボロボロと崩れ落ちていく。


「ア……ガ……、タ、助ケ……」


 死神が手を伸ばすが、その手も霧散して消えた。


「……なんなの、あれ」


  ソラは、後ずさりながら震えていた。念動力で瓦礫をぶつけてみたが、すり抜けてしまった。物理的な干渉を受け付けないのだ。クロが、雷撃を放つ。


 バチッ! 


 雷は影に直撃したが、影は痛がる素振りもなく、むしろ雷のエネルギーを吸い込んで、一回り大きくなった。


「グルル……(攻撃が、通じない!?)」


 影が、ゆっくりとソラたちの方を向いた。顔はない。だが、そこにある虚無が、明確な「食欲」を持って二人を見ているのが分かった。ズズズッ……。影が、瞬間移動のように距離を詰める。速い。ソラの目の前に、ノイズの腕が迫る。(死ぬ!)


「消えろッ!!」


 横合いから、金色の閃光が走った。駆けつけたカイが放った、「言霊」の弾丸だ。弾丸は影に命中し、その右腕を消滅させた。


「カイ!」


「離れろ! そいつは、この世界の(ルール)で動いてない!」


 カイが、ソラとクロの前に立ちはだかる。影の右腕が、ノイズを集めて瞬時に再生する。再生ではない。「傷ついたという事実」が認識されていないのだ。


「……厄介だな」


 カイは冷や汗を流した。スサノオや死神は、強力だが、あくまで「この宇宙の住人」だ。同じ物理法則、霊的法則の中にいる。だから、言霊で干渉できる。だが、こいつは違う。OSの違うウイルスのようなものだ。こちらの攻撃(コマンド)が、エラーとして処理されてしまう。

 影が、不快な音を立てて膨張する。キキキキキ……。周囲の空間ごとめくり上がるように、襲いかかってくる。


「くっ……!」


 カイは、両手で防御壁(シールド)を展開する。だが、シールドが触れた端から、ノイズに侵食され、穴が開いていく。防げない。このままでは、飲み込まれる。

 その時。カイの脳裏に、前回の記憶――スサノオとの戦いでの「絶望」がよぎった。あの時、僕の力は暴走し、世界を消した。あの「消滅」の力なら、こいつにも通じるんじゃないか? だが、それを使えば、また僕は……。


「カイ、ダメ!」


 ソラが叫んだ。


「変なこと考えてるでしょ! また一人で背負い込むつもり!?」


 ハッとする。そうだ。僕はもう、一人じゃない。


「……ごめん。焦ってた」


 カイは深呼吸をした。相手が理の外にいるなら、こちらの理に引きずり込めばいい。「翻訳」するんだ。こいつの存在を、この世界で処理可能な形に。


「ソラ、クロ! あいつを『ただの影』だと思え!」


 カイが叫ぶ。


「え?」


「僕が、あいつに『影』という定義を与える。そうすれば、光で消せるはずだ!」


 カイは、全神経を集中させた。言霊の力。世界への強制書き込み。目の前の「わけのわからないもの」に、無理やりラベルを貼る。


(お前は、不可解な侵略者じゃない。お前は、ただの、実体を持った『黒い影』だ!)


 カイの言葉が、金色の鎖となってノイズに絡みつく。


 ギギギギギ……! 


 空間がきしむ。影が、激しく抵抗する。異界の理と、カイの言霊が衝突し、火花を散らす。だが、カイは引かない。千年の地獄で培った精神力が、混沌をねじ伏せる。シュゥ……。ノイズが収まり、怪物の輪郭が、くっきりとした黒いシルエットに固定された。


「今だ! 光を!」


「わかった!」


 ソラが、近くにあった工事用の投光器を念動力で引き寄せ、怪物に向ける。


「クロ、雷で明かりを!」


「ガウッ!」


 クロが投光器に雷撃を流し込む。


 カッ!! 


 強烈な閃光が、怪物を照らし出した。


 ジュワァァァァッ! 


「ただの影」と定義された怪物は、光を浴びて煙を上げ、悲鳴のような音と共に消滅した。


「……はあ、はあ……やった……」


 カイが膝をつく。たった一体を倒すのに、スサノオ戦に匹敵するほどの消耗だ。


「カイ、大丈夫?」


 ソラが背中をさする。


「ああ。でも……まずいな」


 カイは、消滅した跡を見つめた。そこには、小さな「穴」が残っていた。次元の裂け目。そこから、まだ微かにノイズが漏れ出している。


「こんなものが、これから増えるのか……」


 その時、校内放送のチャイムが鳴り響いた。キーンコーンカーンコーン。午後一時。新学長就任式が、始まる時間だ。


「……休んでる暇はないみたいだ」


 カイは立ち上がった。新たな脅威「カオス」の出現。だが、今は目の前の敵、スサノオを止めなければならない。


「行こう。ひかりが待ってる」


 三人は、傷ついた体を奮い立たせ、講堂へと走った。この世界には、二つの脅威が同時に迫っている。内なる神の暴走と、外なる混沌の侵略。二度目の人生は、前回よりも遥かに過酷な「無理ゲー」へと変貌していた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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