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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) 1~絶望の未来を書き換えろ。地獄還りの少年が挑む、禁断のタイムリープ戦記!~  作者: たくみふじ
第五章 黎明の天秤

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既視感の攻略戦と、混ざり込む異物㈠

千年の地獄を耐え抜いた魂が、神々に抗い『陽だまり』の日常を守る!

 ひかりの部屋は、即席の作戦司令室と化していた。テーブルの上には、カイの記憶を元に書き起こされた大学の構内図と、複雑なタイムスケジュール表が広げられている。


「……なるほど。状況は把握したわ」


 ひかりが、眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら言った。その表情は真剣そのもので、先ほどまでの涙の跡はもうない。


「敵の狙いは、今日の午後一時から行われる『新学長就任式』。そこで鬼塚(スサノオ)が集団催眠を行い、同時に校舎の四隅に設置された『結界石』を起動させて、大学を隔離空間にする。……これが、悲劇の始まり(スタートライン)ね」


 カイは頷いた。


「前回、僕たちは後手に回った。結界が張られてから動き出し、情報を遮断され、分断され、精神的に追い詰められた。……でも、今回は違う」


 カイの瞳に、鋭い光が宿る。


「結界が張られる『前』に、結界石を破壊する。そして、就任式の最中に鬼塚の正体を暴き、生徒たちの洗脳を未然に防ぐ。これが今回のミッションだ」


 それは、未来を知る者だけが可能な、完全なる「先読み(カンニング)」攻略。一度目の人生で味わった屈辱と痛み。それら全てを、逆転のための燃料に変えるのだ。


「ソラ、クロ。君たちの任務は、結界石の破壊だ」


 カイが地図上の四点を指差す。


「北の体育館裏、南の薬草園、東の部室棟、そして西の焼却炉。この四箇所に、霊的な(くさび)が打ち込まれているはずだ。これを同時に破壊すれば、結界は発動しない」


「任せて!」


 ソラが拳を鳴らす。


「一度目はあんなに苦労した相手だけど……手の内が分かっていれば、怖くないわ」


「わん! (奇襲で瞬殺してやる)」


 クロも鼻息荒く同意する。彼らにとって、これはただの任務ではない。傷つけられた誇りを取り戻すための、復讐戦でもあるのだ。


「そして、私とカイくんは……」


 ひかりが、カイを見上げる。


「放送室を制圧し、鬼塚のスピーチに『ノイズ』を混ぜる。私の作った対洗脳プログラムを校内放送に割り込ませて、彼の催眠音波を無効化するわ」


「頼むよ、ひかり」


 時計の針は、午前十時を回ろうとしていた。決戦まで、あと三時間。カイは立ち上がり、三人を見渡した。


「行こう。……今度こそ、僕たちの日常を守り抜くんだ」


 大学のキャンパスは、新学期の浮き足立った空気に包まれていた。サークルの勧誘、新しい友人との談笑。平和な光景。だが、カイには見えていた。その平穏の皮一枚下に、どす黒い悪意が脈打っているのが。あちこちに配置された、黒いスーツの警備員たち。彼らは人間ではない。ヤミが率いる死神部隊の下級兵が、人間に擬態しているのだ。前回は気づかなかったが、今のカイの目には、彼らの正体が透けて見える。


「……作戦開始」


 カイの合図と共に、四人は二手に分かれた。

 ソラとクロは、人目を避けて校舎の裏手へと回る。最初のターゲットは、体育館裏。そこには、清掃用具入れに見せかけた、奇妙な石柱が置かれていた。周囲には、目立たないように「人避けの結界」が張られている。


「いた」


 ソラが茂みの陰から指差す。石柱の前には、一人の警備員が立っていた。前回の記憶が正しければ、あれは「剛力」を自慢する下級死神だ。正面から戦えば怪力で押し切られるが、動きは鈍い。


「クロ、あいつの視界は右側が死角よ。前回、右目を怪我してた癖があった」


「わん(了解)」


 未来の知識(アドバンテージ)。クロが、音もなく疾走する。変身はしない。豆柴の姿のまま、低い弾道で死神の右側から飛び込んだ。


「ぬ?」


 死神が気づいた時には、もう遅い。ガブッ! クロの牙が、死神のアキレス腱を正確に捉えた。


「ぐああっ!?」


 死神が体勢を崩した瞬間、ソラの念動力が炸裂する。


「そこどいてっ!」


 不可視の砲弾が死神の鳩尾(みぞおち)に直撃し、数メートル後方の壁まで吹き飛ばした。ドォン! 死神は気絶し、ピクリとも動かない。


「よし! 結界石、破壊!」


 ソラが手をかざすと、石柱は内側からひしゃげ、砕け散った。


「……楽勝ね」


 ソラは、自分の手のひらを見つめた。力が(みなぎ)っている。前回の戦いで経験した「極限状態」の記憶が、今の肉体にもフィードバックされているようだ。今の彼女は、一週間前の彼女よりも遥かに強い。


「次、行くよ!」


 一方、カイとひかりは、放送室のある本部棟へと向かっていた。廊下ですれ違う警備員たち(死神)を、カイは視線一つ合わせずにやり過ごす。彼らには「認識阻害」の言霊をかけてある。


(……君たちは、僕たちが見えない。ただの風景だ)


 すれ違っても、彼らはカイたちに気づかない。まるで石ころの横を通るように、素通りしていく。


「すごい……魔法みたい」


 ひかりが小声で感嘆する。


「魔法じゃないよ。ただ、彼らの脳内の優先順位を書き換えただけさ」


 カイは淡々と答えたが、内心では冷や汗をかいていた。言霊の力は強力だが、精神力の消耗も激しい。スサノオとの決戦に備えて、今は極力温存しなければならない。

 放送室の前。ここには、中級クラスの死神が二人、見張りに立っていた。


「……どうする? 強行突破?」


 ひかりが聞く。


「いや、スマートにいこう」


 カイは、ポケットからスマートフォンを取り出した。


「もしもし、ピザ屋ですか? ……ええ、大量注文で。届け先は、大学の本部棟放送室前」


 数分後。デリバリーのアルバイト(に見せかけた幻影)が、大量のピザの箱を抱えて現れた。


「お届けものですー!」


「あ? 頼んでねえぞ」


「えっ、でも代金は支払い済みで……」


 死神たちが困惑し、注意が逸れた一瞬。「眠れ」カイの囁きと共に、二人の死神は糸が切れたように崩れ落ちた。幻影のピザ屋も消える。


「……カイくん、今のピザ屋、本物に見えたよ」


「イメージを具現化したんだ。さあ、中へ」


 放送室を制圧した二人は、すぐに機材のセッティングに入った。ひかりの指が、キーボードの上を舞う。


「音声回線、ジャック完了。鬼塚のマイク入力に、逆位相の波形をぶつける準備、OKよ。これで、彼の声はただの『お経』みたいに聞こえるはず」


「ありがとう、ひかり」


 準備は整った。あとは、開演を待つだけだ。

 その時。カイの胸ポケットに入れた通信機から、ソラの切迫した声が響いた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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