↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/60

第6話 リオンドールの一目惚れ (リオンドール視点)

 ☆☆☆


 アリスと食事を終えて、戻ってきた私は、騎士団の残務を片づけながら、アリスのことを思い出していた。


 アリスのことを思うと、つい口元が緩んでしまう。


 私が騎士団に入った頃、まだ王都にいた頃のことだ。


 修練場の隅で可愛らしく表情を変えながら、ノワール伯爵家の長男に指導されながら、矢を射る練習している少女を見かけた。


 その少女はアリスティア・ノワール。


 華奢で、触れたら折れてしまいそうな細い体。


 可憐で儚げな外見とは裏腹に、アリスは弓を一直線に引き絞り、矢を放った。


 風を切る音と共に、矢は的に次々と命中していく。


 その流れるような所作が、美しすぎて息を飲んだ。


 まだ十歳ほどだったはずだ。


 力強く、迷いのない矢を射る姿から、目が離せなかった。


 その日はアリスが練習を終えるまで、ずっと影から見つめていた。


 時間すら忘れるほどに。


 それ以降も、機会があるたびに修練場に足を運んだ。


 話しかける勇気などなく、ただこっそりと、アリスの姿を盗み見るだけの日々が続いた。


 配置が変わり、王都を離れることになったときに、アリスに惚れているのだと、自覚した。


 ――叶わない恋だと思っていた。


 あの日までは。


 王命により、参加させられた夜会でノワール伯爵と長男が話している会話を聞いてしまった。


「父上、アリスティアのことですが、本当に家から追放するのですか?」


「情が湧いたか? 昔はお前もよく面倒を見ていたからな」


「⋯⋯いえ、昔のことですし、今はただの無能です。もう妹ではありません」


「もうすぐあれも十七歳だ。いつまでも家に置いておく必要もないだろ。役に立たぬ娘を置いておくぐらいなら追い出した方がマシだ」


「では、父上、アリスティアは十七歳になった日に追放するのですか?」


 その冷たいやり取りに、胸の奥で何かが弾けた。


 私はゆっくりノワール伯爵に近づき、割り込むように声を掛けた。


「ノワール伯爵、アリスティア嬢を家から追放するのなら、私が妻として貰おう」


 ノワール伯爵は一瞬目を見開き、卑下(ひげ)た笑みを浮かべた。


「フリューゲル公爵様、役に立たない娘ですが、支度金を頂けるのであれば⋯⋯婚姻関係を結びましょう」


「構わん。その代わり、アリスティアとの縁を完全に切り、今後一切アリスティアに関わらないと神殿で誓約書を交わして貰うぞ」


「喜んで、どのみち、無能の娘など⋯⋯」


 その日のうちに神殿にて誓約を済ませ、アリスは私の元へ嫁ぐことになった。


 数年ぶりに再会したアリスは、幼い頃よりもずっと美しくなっていた。


 雪のような髪と薄紫の瞳、怯まずに私を見つめ返してきた強い眼差し。


 第一印象を良くしようと思っていたのに、部下を叱責している最中でタイミングが最悪だった。


 ゆっくり関係を築いていくつもりが気持ちが昂り、つい一目惚れしたと告白してしまった。


 頬を赤らめて、照れる姿は思わず抱きしめてしまいたいぐらい、可愛かった。


 そして、愛おしくてたまらなかった。


 アリスの望みは可愛らしい。


 美味しいご飯を好きなだけ食べさせてやりたい。


 なんでも、アリスが喜ぶ物を与えてやりたい。


 ご飯を美味しそうに食べる姿は微笑ましかった。


 これからゆっくりとアリスを愛して、いつか本当の夫婦になれたなら――。


 私は残りの書類に視線を落としながら、静かに微笑んだ。


 北部への移動が、アリスとの新しい始まりになることを願って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。