エピローグ 特別な贈り物
バルコニーに出て見上げた夜空には無数の星々が静かに輝いていた。
星の輝きが地上の闇を優しく包み込むようだった。
時折、心地よい風が肌をそっと撫でる。
フリューゲル公爵家に来てからまだ、三ヶ月程しか経っていないのに、もうずっと昔からこの場所にいるような感じがする。
「アリス、ここにいたのか。探したぞ」
背後から聞こえた声に振り向くと、リオン様が柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
「眠れなくて、風に当たっていました」
「そうか⋯⋯その、アリス⋯⋯」
リオン様はまっすぐに私と向き合った。
その表情がわずかに緊張していることに気づいた瞬間、リオン様は片膝をつき、小さなケースを差し出して静かに開けた。
「正式な婚約指輪を、今日渡したかったんだ。受け取ってくれるか?」
ケースの中で、私たちの瞳と同じ色の宝石が星明かりを受けて、美しく輝いていた。
「も、もちろんです。リオン様」
「アリス、左手を」
私が左手を差し出すと、リオン様がそっと私の手を取って、指輪をはめた。
薬指にはめられた指輪を見て、リオン様の婚約者になったのだと実感がわく。
これまで感じたことのないほどの幸せが私を包み込む。
「⋯⋯っ、すごく、嬉しいです。ありがとう、ございます。大切にします。⋯⋯私もリオン様の指に指輪をはめてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
私はケースに入れられていたもう一つの指輪を手に取って、リオン様の左手の薬指に、震える指でそっとはめた。
「お揃い、です」
私は左手をリオン様の左手と絡めた。
繋いだ左手から伝わる温もりが、ゆっくりと混ざり合う。
どうしようもないほどの愛おしさが、胸の奥から溢れてきた。
「アリス」
甘えるように名前を呼ばれて、顔を上げると、リオン様のアクアマリンの瞳が熱を帯びて私を見つめていた。
「はい。リオン様」
「愛してる。これから先もずっと、一緒にいて欲しい」
リオン様に耳元で甘く囁かれ、私の心臓は騒がしくなる。
「⋯⋯私もずっと一緒にいたいです。リオン様⋯⋯愛しています」
リオン様の顔が近づいてきて、私はそっと目を閉じた。
――リオン様に出逢えたことが……私の人生で一番の祝福だ。
私たちは互いの愛を確かめるように、煌めく星空の下で、甘く蕩けるような口付けを交わしたのだった。
完
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