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虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


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第50話 リオンドールとシャーロットの会話 (リオンドール視点)


☆☆☆


 安心しきった表情で眠るアリスを起こさないように、そっと頭と足の辺りを支えて、馬車から降りた。


「おかえり、リオン。アリスちゃんは寝ちゃったのね」


 アリスの部屋にゆっくり向かっていると、反対側から姉さんが微笑みながら近づいてきた。


「はしゃいで疲れたんだろう。なんでアリスの銀獣を抱いているんだ?」


「この子、アリスちゃんの子なの? 屋敷の中を歩き回ってたから、厩舎まで届けようと思ってたんだけど」


「その子はシルフィだ。一緒にアリスの部屋に連れて行く」


「一緒の部屋で過ごさせているの?」


「ああ。最近のアリスは自然に笑えるようになって来たが、精神的に不安定になる事があるんだ。常にそばに寄り添ってくれる銀獣がいれば心が落ちつくだろ?」


「それもそうね。あなたも子どもの頃は銀獣と一緒に寝ていて、部屋にいないって大騒ぎになってたもんね」


 その頃を懐かしむような表情で姉さんは目を細めた。


「私が出来る限り傍にいてやりたいが、一日中一緒にいられるわけじゃないかならな」


 アリスの部屋の前で足を止めると、姉さんが扉を開けてくれた。


 中に入りそっとベッドにアリスを横たえた。


 腕の中に大切そうにテディベアを抱きしめて、眠る寝顔は天使のようだった。


 そっと頬に触れると、小さく寝息を零しながら、擦り寄ってくる。


 その姿に心臓がどくんと、音を立てる。


「可愛いな⋯⋯おやすみ。アリス」


 姉さんが一緒にいなければ口付けをしていたかも知れない。


 シルフィが寄り添うように、アリスの布団に入り込むのを見守り、ゆっくり部屋の扉を閉めた。


 姉さんはニヤニヤしながらついてきた。


「なんだ?」


「微笑ましいなって、思ったのよ。好きな子を婚約者に迎え入れられてよかったわね」


「ああ。それで、姉さんはなんで来たんだ?」


 わざわざ会いに来たのは、アリスの顔を見るためだけじゃない気がしていた。


「アリスちゃんと婚約したなら、ちゃんと婚約発表しないと駄目じゃない」


「アリスがちゃんと私を好きになって、婚約を受け入れてくれるまで待つつもりだったんだ」


 婚約を発表してしまえば、アリスは社交界に出なければいけなくなる。


 公爵家の婚約者として、お茶会や夜会などに参加して人目に触れることになる。


 アリスを外に出せない訳じゃない。


 婚約者だって、堂々と連れ歩きたい。


 ただ、辛い思いはもうさせたくないのだ。


「でも、今は両想いなんでしょ? まぁ、今日の姿を見ていれば一目瞭然だったけどね」


「そうだ。アリスの想いも確認した」


 アリスは今日私に「愛してる」と言ってくれた。


 その言葉が、今も胸の奥で熱く響いている。


「アリスちゃんと話し合いをして、婚約発表をいつするのか決めないとね。アリスちゃんの事情は知ってるから、大規模なパーティーは開かないとしても、発表だけはするべきよ」


「ああ。そのつもりだ⋯⋯それと、頼み事をしてもいいか?」


「もちろんよ。アリスちゃん関連でしょ?」


 姉さんは楽しげに目を細めた。


「アリスにも魔法の才能があると思うんだ。魔法の指導と、治癒能力の効果をアリスと確かめて欲しい」


「わかったわ。でも私でいいの? リオンが見てあげた方が、アリスちゃんは喜ぶんじゃないの?」


「私も見てやるが、魔塔で二番目にすごい魔法使いに指導された方が、いいだろ。姉さんは一番信用出来るからな」


 姉さんは返事の代わりにくすくす笑った。


 この選択がアリスの自信回復と新たな希望になればいいと、心の底から思った。


 

 

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