第42話 お揃いの洋服
食べ歩きをしながら、連れられて来たのは、フリューゲル公爵領にある高級ブティックだった。
「ようこそいらっしゃいました。公爵様」
店に入るなり、店員が並び立ち、胸に手を当てて一礼した。
そして私の方に視線を向けて、ニコリと微笑み挨拶をした。
「当店のオーナーをしておりますフランチェスカと申します。ご来店頂き大変光栄です」
「ご丁寧にありがとうございます。アリスティア・ルノワールです」
私も挨拶を返した。
「フランチェスカ夫人、アリスの為に最高のドレスを仕立ててくれ」
「はい。お任せ下さい。さあ、おふたりともどうぞ、こちらに」
案内されるままに、店内に足を踏み入れた。
「うわぁ⋯⋯」
華美なドレスから、普段着用、外出用、夜のセクシーなドレスなどキラキラした物が並んでいた。
「こちらには、新作も取り揃えておりますので、よろしければご覧下さい。気になるものがございましたら、お気軽にお声かけください」
リオン様がオーナーと話をしている間に私もせっかくだから、見て回ることにした。
大きな宝石が取り付けられた華やかなドレスに、職人の技が感じられる刺繍が施されたもの。
「どれも、生地と材料を厳選して作られたドレスです。お気に召されたドレスはございますか?」
「いえ、私にはもったいないです」
(こんなに高そうなドレス私にはもったいない)
「そんな事はない。私がアリスに買ってあげたいんだ」
「わっ!? リオン様」
いつの間にか後ろにいたリオン様に声を掛けられる。
「既にドレスとか沢山頂いていますし⋯⋯」
「私を誰だと?」
「っ⋯⋯、公爵様です」
「そうだ。遠慮するのは無しだ。私にも得がある⋯⋯アリスが綺麗に着飾った姿を見ることができる」
「うぅ⋯⋯はい⋯⋯」
結局断ることが出来ずに、私は試着室に連れて行かれた。
「す、素晴らしいです。どれも、とても良くお似合いです」
試着室に連れて行かれて、五着ほど試着をした。
その度に「可愛い」「似合う」「素敵」とリオン様と店員に褒められて、私は恥ずかしかった。
「ああ、今着ている淡いラベンダーのドレスも⋯⋯レースが繊細で、アリスの白い肌によく映える」
「はい⋯⋯、わたしも気に入りました」
リオン様に褒めて貰えるならいいと思った。
「アリスが試着ものは全部買おう」
「えっ!? リオン様⋯⋯?」
「私が買いたくて買うんだ」
「まあ、アリスティア嬢のことを大切にされているのですね」
「当然だ。いずれは私と公爵家を支える公爵夫人となるのだから」
「うふふ。公爵様、せっかくなので、アリスティア嬢とお揃いのコーデなんてどうでしょうか?」
「お揃い?」
「はい。こちらになります」
フランチェスカ夫人は嬉しそうに奥から洋服を持って来て、黒い生地に銀の装飾を施した軍服風の礼装が二着並べられた。
「わあぁ! これすごく、素敵です」
私は感嘆の声を漏らした。
「試着してみますか?」
「はい! 是非、リオン様も着てみてください」
私たちは、フランチェスカ夫人に勧められた洋服に着替えた。
リオン様の姿は思わずため息がこぼれるほど素敵だった。
肩章と銀の刺繍が施された長めのコートは、彼の広い肩幅と引き締まった体躯を美しく強調し、金色のボタンと腰のベルトがそれを引き立てている。
公爵らしい威厳を感じられる。
「はわわ。す、素敵すぎます」
「ありがとう。アリスもよく似合っている。可愛いらしいさと気品を兼ね備えていて、お揃いの軍服も悪くないな」
「はい! 私もドレスよりこっちのほうが動き易くて、好きです」
「そうか。フランチェスカ夫人、似たような感じで数着アリスに合わせて作ってくれ」
「ありがとうございます。公爵様。アリスティア嬢にぴったりのものを作らせて頂きます」
リオン様は追加で数着オーダーして、私の腰をそっと抱き寄せた。
「こうゆうのも悪くないが、アリスのドレス姿も見たいから両方着てくれ」
私はこくこくとリオン様に抱き寄せられながら頷いた。
今日買ってもらった服は後日、城に届けてもらうことになった。
私たちは元の服に着替えて、ブティックをあとにした。




