第38話 一緒に料理 ②
「よかった。今度は私に、アリスが作ったものを食べさせてくれ」
リオン様の瞳が甘く細められ、声も低くなる。
私は小さく頷いて、パンを手に取り、レタスを敷いて、ふわふわの卵焼きをのせる。
そして少し多めにマヨネーズを絞った。
「ど、どうぞ」
「食べさせて?」
手渡しで渡そうとしたら、リオン様は素直に口を開けた。
指先が震えて、サンドイッチが少し傾いた。
「⋯⋯あ、あーん」
恥ずかしさで、顔が熱い。
リオン様は身を乗り出し、私の手を優しく支えてて一口でかぶりついた。
「ん、うまいな」
「ほ、本当ですか? 」
「ああ、卵焼き甘くて、ふわふわでいくらでも食べれる」
褒められて嬉しくて、つい顔がにやけてしまう。
「喜んでもらえるなら、毎日でも作りますよ」
「毎日!? それはすごく幸せだ」
「そ、そんなに喜ぶことですか?」
「毎日作ってくれるって事は、ずっとここにいてくれるってことだろ?」
「⋯⋯はい。他に行くあてもありませんし、ずっとここにいたいと思っていますよ」
リオン様は私の腰に軽く手を回し、背後から包み込むような体勢で囁いた。
「幸せすぎて、死にそうだ」
「⋯⋯え? 死なないでください」
耳元がくすぐったい。
嫌な感じはせず、むしろ安心する。
(大事なことを忘れているような⋯⋯?)
身を委ねるように力を抜いた瞬間、はっと気づいた。
「リオン様! 私たち、治癒の効果を確かめる為に料理してたのに、食べさせ合ってたら、意味ないじゃないですか!」
私は体を回転させて、リオン様と向き合う。
「アリスが作った料理にはちゃんと効果あるぞ。
私の魔力が回復しているし、力が湧いてくる」
「わ、わたしはなにも感じませんが? ただ、わたしのご飯をリオン様が食べたかったから、そう感じているのでは?」
「アリスの手料理を食べれて嬉しかったが、アリスは料理している時だけ、魔力が溢れていた」
「ま、魔力が溢れてる⋯⋯?」
「魔力は感情に作用されて溢れることがあるが⋯⋯アリスは楽しそうに料理していたし、想いを込めて作ってくれるから、元々持つ能力が発揮されるんだろう」
自分の手を見てみたが、なにか特別な力を感じることはできなかった。
「本当に⋯⋯?」
「ああ。本当だ。アリスの魔力は、料理をしている時、特に『美味しいご飯を食べたい、作りたい』と思っている時に強く反応するようだ」
「⋯⋯そう思うのは普通のことでは?」
命をいただいているのだから、粗末になんかできない。
だから私は、いつも感謝の気持ちを込めて、料理をしていた。
リオン様が私の頭を撫でる手が心地よくて、私はそっと目を細めた。




