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虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


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第37話 一緒に料理

「アリスは何を作りたい?」


 厨房に置いてある食材を確認しながらリオン様が聞いてきた。


「作りたいものですか⋯⋯?」


 急に料理を作ることになって、頭の中が真っ白になった。


 何を作ればいいのか、思いつかなかった。


「緊張しているのか?」


 リオン様に指摘されて、手が震えている事に気づいた。


「失敗しても構わない。落ちついて、ゆっくりでいいんだ。アリスのペースで作ろう」


 その言葉に勇気づけられて、私は深呼吸をした。


「⋯⋯はい。わたし、リオン様がはじめて作ってくれたサンドイッチを作りたいです」


「覚えていてくれたのか?」


「もちろんです。まさか公爵様みずから料理をされるとは思ってもいなかったので、覚えていますよ」


「それは⋯⋯嬉しいな」


「そこ、照れる所ですか?」


 私から顔を背けたリオン様の耳先が、赤く染まっている。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯天然か?  ⋯⋯いや、好きな人に、褒められるのは、嬉しいものなんだ。無自覚なら教えてやろうか?」


 頬と耳を赤く染めたまま、私に視線を戻したリオン様の表情をみて、なんとなく、これ以上はよくない気がした。


「それは、その、⋯⋯また今度で、お願いします。今はサンドイッチを作りたいです!」


「わかった。サンドイッチを作ろうか」


 リオン様は優しく微笑んで、サンドイッチ作りに必要な材料を準備してくれた。


「まずはパンを薄く切るところからだな。私が切ろうか?」


「い、いえ! わたしがやりますので、後ろでみていてください」


 私はパンを切る用の包丁を握り、薄く切っていく。


 リオン様が後ろから優しく見守ってくれているのを背中に、感じながらパンを切り終えた。


 パンの耳の部分はあとでシルフィとルカに持って行ってあげようと、別のお皿に移した。


「上手だ」


「まだ、パンを切っただけですよ?」


「手際がいいなと思ったんだ。それに、アリスが料理をする所をみるのは初めてだからな」


「わ、わたしも、誰かと一緒に料理をするのは、初めてです」


「そうか。私がアリスの初めての相手なんだな?」


「⋯⋯?  そうですね。リオン様に与えられるすべてが、わたしにとって初めての経験ですね。わたしの初めては全部リオン様にあげますね」


 そう言いながら私は、サンドイッチに挟む具のレタスとトマトと卵を魔法冷蔵庫から取り出した。


 背後から咽るような咳払いが聞こえて、振り返ったらリオン様は赤くなりながら、肩を小刻みに震わせていた。


 (⋯⋯また、照れてる? ⋯⋯なんで?)


「リオン様⋯⋯?  サンドイッチの具の卵はゆで卵と卵焼きどっちがいいですか?」


「ん? ⋯⋯た、たまごか⋯⋯卵焼きがいい。アリスが作ったふわふわのやつが、美味しかったから」


「わかりました。甘くてふわふわの卵焼き作りますね」


「ああ」


 私は手早く卵を割って、混ぜて砂糖を少し多めに入れてかき混ぜる。


 カシャカシャと卵をかき混ぜる音が厨房に響く。


 混ぜ終わった卵液を丁寧に巻きながら火を通し、表面にほんのり焦げ目がつく前にお皿に移す。


 その工程をみながら、リオン様も隣でトマトをスライスし始めた。


 公爵なのに厨房に立っている姿が意外で、思わず見惚れてしまった。


「⋯⋯アリス」


「は、はい!?」


「そんなに見つめられると、恥ずかしいんだが」


「えっ、あ⋯⋯す、すみません」


「いや、謝らせたかった訳じゃない。具は出来たか?」


「卵は完成しました。あとはパンに挟むだけです。私が治癒の効果を試す為に作っているのに、リオン様が作っていたら意味無いじゃないですか」


 リオン様は完成したサンドイッチを手にしていた。


「アリスが作るのをみていたら、私の作ったものを美味しそうに食べくれた姿を思い出して、食べさせたくなったんだ」


 リオン様が作ったサンドイッチを一口サイズに切ったものを私の口元に差し出してくる。


「ほら、あーん、だ」


「⋯⋯リ、リオン様!?」


「遠慮はいらない。昔は素直に食べてくれただろ?」


 (あの時は、食べさせてもらってないのに!?)


 顔が赤くなるのを感じながらも、こくりと頷いて⋯⋯そっと口を開けた。


「⋯⋯んっ、おいしい⋯⋯!!」


 初めて食べた時と同じ味なのに、今日の方が特別に美味しく感じた。


 リオン様は満足そうに目を細め、私の反応を温かく見つめていた。

 


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