第36話 新たな可能性
「もう、大丈夫だろう。ルカもアリスの料理を食べたんだ。それで、元気になったから、お礼がしたかったんだろう」
ルカに舐め回されて隠れた私に、ハンカチを渡してくれた。
顔を拭いて、大人しくしているルカを見た。
「ルカはどこか、怪我したんですか? 私、まだ自分の料理に治癒の効果があること、信じられないんですけど⋯⋯」
リオン様の言葉は信じるけど、実際に試して力がなかったらどうしよう。
やっぱり、まだ、不安は消えていない。
「アリスは自分で料理をして、生活していたんだろ?」
「⋯⋯はい。そうです⋯⋯?」
「出会った頃のアリスは、やせ細っていて、とても弓を扱って狩りをしているようには見えなかった。今は肉付きも良くなり、健康的にみえるが」
「⋯⋯え? 私、普通に狩りをして獲物を仕留めていましたよ?」
自分で仕留めた獲物を食べて生きてきたのに。
私、狩りができないと思われていたの?
「それが、アリスの料理に治癒の効果がある事の証明だ」
私は理解できなくて首を傾げた。
「自分で作ったご飯を食べ続けたことで、アリスの体は強化されていたのではないか? アリスの料理には、魔力を回復させる効果もあったから」
「⋯⋯なるほど? 私は魔力を持っているんですか?」
「皆が当たり前に持っているものだ。空気中にも、普通に存在している」
「そうなんですね。私も魔力を持っているんだ⋯⋯もしかして、私も魔法を使えたりするんですか? 」
私は期待を込めた瞳でリオン様を見上げた。
この前ルイスに「魔法の素質があるかもしれない」と言われたことを思い出した。
「アリスは魔法を使ってみたいのか?」
「はい! 使ってみたいです」
「魔法を使うのには精霊契約が必要だから、今すぐに魔法を使うのは難しいが、試してみるか? 」
リオン様は微笑みながら優しく私の頭を撫でた。
「それと、料理に治癒の効果があるかも、実際に作ればわかるから、先に料理を試してみないか?」
「両方試してみたいです!」
私は本当に治癒の能力を使えて、無能じゃないと、リオン様に認めてもらいたい。
そして、それがフリューゲル公爵領の役に立てることなら、私は挑戦したい。
「今日は料理を試そう。アリスが自信を持てるように、私がそばにいてやる」
「ありがとうございます」
リオン様は穏やかに微笑んで、私の手を取った。
その大きな手に包まれると、胸の奥がじんわりと温かくなる。
不安が少しだけ、溶けていくような気がした。
私はリオン様と手を繋いだまま、厨房に向かった。




