第32話 決意 (リオンドール視点)
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私は泣き疲れて眠ってしまったアリスを、自分の寝室のベッドにそっと寝かせた。
そばを離れたくなかった。
アリスは「ここにいたい」と言い、私も「そばにいて欲しい」とお願いした。
視界に入れておかないと不安になるのは、私のわがままかもしれない。
それでも今日だけは、傍に置いておきたかった。
アリスの穏やかな寝顔をみながら髪を撫でた。
私の指に絡まる白い髪が、陽光を受けて銀色に輝いている。
私はベッドの端に腰を下ろし、静かにその髪を撫で続けた。
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遠征中アリスが私のことを呼ぶ声を聞いた気がした。
胸騒ぎがして、急いで魔物討伐を終わらせて、帰って来た。
アリスの手料理のおかげで、騎士たちもいつもよりも、力が湧いて、魔物討伐は早く終わった。
私もアリスに早く会いたくて、普段よりも魔力を使い過ぎてしまったが。
屋敷に戻り、すぐにアリスの部屋に向かったが、部屋にはいなかった。
「閣下!? ⋯⋯アリスティア様は銀獣の放牧地にいますよ」
アリスの部屋で掃除をしていたメイドのクロエが、驚いた顔をしつつも、教えてくれた。
私は急いで放牧地に向かった。
アリスの姿はすぐにわかった。
銀獣たちに囲まれて、その中で眠っていた。
無事な姿に安堵したが、すぐに心配に変わった。
目元に涙の跡があり、遠征に行く前に会った時よりも、やつれている姿を見て、胸が締め付けられた。
私はそっとアリスを抱き上げ、膝の上に乗せ、髪を撫で続けた。
アリスが私の元にいる愛おしさから、ただ、触れたかった。
指通りのいい、柔らかな髪に触れていたらアリスが目を開けた。
その瞳は不安と安堵に揺れていた。
――私はアリスの心が壊れてしまうのではないかと不安がよぎった。
私はどうしていいのか、わからずにただ、アリスに触れた。
アリスは安心したのか、必死に耐えてきたものを吐き出すかのように、私に「好きです」と言った。
静かに涙を流しながら。
想いを伝えることすら、許されないと思っているのか、アリスは謝り続けた。
アリスが震える声で「好きです」と言った瞬間、私の胸の内で何かが熱く溶けた。
これほどまでに激しい鼓動は、魔物討伐ですら感じたことがなかった。
私はこれまで誰かをここまで想ったことなど一度もなかった。
アリスの言葉は私の、胸の奥深くに突き刺さり、熱い塊となって広がっていく。
声を震わせて泣くアリスを抱きしめていた。
(私が守り、幸せに⋯⋯いや、絶対に幸せにする)
アリスに能力があろうが、なかろうが、関係ない。
――私はただ、アリスティアという一人の女性を、深く愛している。
そして、アリスが望むなら、なんだって与えたい。
アリスが眠るベッドの端に腰掛けながら、私は静かに誓った。
「アリス⋯⋯君がずっと一人で抱えてきた傷や痛みを、これからは私が一緒に背負う。だから、もう、苦しまないでいい」
決意を込めて、そっとアリスの額に唇を落とした。
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「閣下、アリスティア様は大丈夫でしたか?」
静かに部屋に入って来たシリルに目線だけて、隣の部屋に行くように促し、向かい合って椅子に座った。
「ああ、ずっと抱え込んでいたものを吐き出して、落ち着いたように思える」
「それは⋯⋯よかったです。間に合ってよかったですね」
「⋯⋯本当に、よかった。ただ⋯⋯」
私は心を落ち着かせるように、息を吐く。
そうでもしなければ、怒りで腸が煮えくり返りそうだった。
「アリスは自分の血に傷を癒す力があると思い込んでいた」
「⋯⋯血、ですか? 」
「そうだ。アリスがそう言った。もしも、アリスが家族に打ち明けていたら、本当に殺されていたかもしれない」
静かに震える手で拳を握る。
「記憶を失っても⋯⋯心の奥深くに、与えられた痛みの恐怖が残っていて、話せなかったのだろう。⋯⋯アリスを痛め付けなければ、ノワール家は治癒の力を手にしていたかもしれなのに⋯⋯」
「むしろ⋯⋯結果としては良かったのかもしれませんね。ノワール家の所業は到底許されるものではありません。しかし、アリスティア様は今、閣下の傍で幸せになれるのですから」
「そうだな⋯⋯私が幸せにするし、これ以上、アリスを傷つける者など、誰一人として許さない」




