↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/56

第24話 アリスティアの力 ② (リオンドール視点)

 後方支援部隊のテントに着いた瞬間、重く張りつめた異様な空気が肌を刺した。


 そして――圧倒的な魔力量にテント全体が包まれていた。


「閣下⋯⋯!  これは⋯⋯」


 シリルが慌てて私の隣に立ち、息を飲む。


 負傷していたはずの騎士の一人が震える声で言った。


「す、すみません、閣下⋯⋯、お弁当を食べた直後から、体が熱くなり⋯⋯魔力が勝手に暴走し始めて⋯⋯傷が、治りました」


 騎士の体が淡い金色の光に包まれていて、傷をすべて癒していた。


「それだけじゃありません!  魔力もすべて回復しました!」


 他の騎士も興奮した声で続ける。


 (一体何が起きたというんだ⋯⋯? )


「口にしたのは、アリスの作ったご飯だけか?  

 他に回復薬を口にしたとかではないのか?」


「⋯⋯口にしたのは、お嬢様に作って頂いた、料理だけです」


 アリスは「治癒の力を使えない」と言っていたのに、料理をする事で魔力が混ざり、治癒の力を使えたのか?


 それなのに、こんな素晴らしい力を持つアリスを、ノワール伯爵家は「無能」だと決めつけて、虐げ、剣で背中を斬りつけ、記憶を失うほど傷つけたのか?


 どうしようもない怒りが、腹の底から煮えたぎるように湧き上がった。


 それは、魔力と共に溢れ出しそうなほど、強い衝動だった。


「アリスの料理で傷が治ることや、今日の出来事は決して外部に漏らすな。アリス本人にも、だ」


「はいっ!!  もちろんです!!」


 騎士たちの即答を聞きながら、私は静かに拳を握りしめた。


 この力をノワール伯爵家が知れば、縁を切る約束をした、誓約書など関係なく取り返そうとする可能性がある。


 傷が治るだけでなく、魔力まで回復させる――それは相当に強力な治癒能力だ。


 (私が必ず、アリスを守るんだ)


 もう二度とアリスを傷つけるようなことがあってはならない。


「シリル⋯⋯確認したいことがあるから共に来い」


 私はシリルを連れて、後方支援部隊のテントに残っていたアリスの弁当を持って、前足の骨を折った銀獣の元に向かった。


 (確かめなければ。本当にアリスの治癒の力なのか)


 銀獣が休んでるテントに入ると、銀獣の治癒師のエリーが静かに立ち上がり、胸元に手を当てて礼をした。


 銀獣は伏せの姿勢で顔だけ動かしてこちらをみた。


「怪我が治るかもしれないから、これを食べてみろ」


 私は銀獣の前に卵焼きを置いた。


 匂いを嗅ぐように、鼻先で突っついてからぱくっと食べた。


 もう一つ欲しいのか、銀獣はしっぽを激しめに振り回した。


 二切れ目を与えたら大喜びで食べて、銀獣の持つ体内魔力量が一気に増えて、巨大な体が震え、しっかりと立ち上がった。


 折れていた前足も淡い金色の光に包まれて、銀獣は驚いたように自分の足を何度も踏みならしていた。


「これは⋯⋯本当に、アリスティア様の治癒の力ですね」


 シリルが感嘆の声を漏らした。


「ああ、間違いないだろう。アリスは、ちゃんと治癒の力を使えてたんだ」


 目の当たりにした奇跡の力を疑うことなんて出来なかった。


 アリスが「私は治癒の力を使えません」と、不安そうな声で言った日のことを思い浮かべた。


 ノワール伯爵家がアリスに酷い仕打ちをしなければ、今頃アリスは治癒の力を自在に使い、誰もが認める治癒士になっていたのではないか。


 それと同時に醜い感情が胸の中で渦巻く。


 ――アリスが治癒の力を使えることを知ったのが、私で良かったと。


 アリスが治癒の力を自在に使えていたのなら、家族に愛されて、私の元には来なかっただろう。


 その事実に安堵してしまった自分が、情けなくて許せなかった。


「アリスティア様には、この力のことどうお伝えしますか?  伝えれば過去の記憶を思い出すきっかけとなり、また、苦しまれるかもしれません」


「そうだな⋯⋯ひとまず、騎士たちの口止めを徹底してくれ。アリスには、私が様子を見ながら伝える」


 アリスが作ってくれた温かい料理が、今、目の前で奇跡を起こしている。


 そして私は、改めて誓った。


 ――アリスを、絶対に守る。


 アリスが望むなら、この力のことも、過去のことも、全部受け止めて支える。


 アリスの傍にいるのは私でありたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。