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虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


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第20話 お弁当作り ②

 ボウルに卵を割り入れ、砂糖・醤油・みりん・塩を加えてよく溶きほぐす。


 泡立てないように、切るように混ぜながら、私は甘めの味で作ることにした。


 フライパンを中火で熱して、油を薄く引いて、卵液を少し流し入れて全体に広げる。


 フライパンに溶き卵を流した瞬間の「ジュワァ」という優しい音を聞き、表面が少し固まってきたら、奥から手前に丁寧に巻く。


 巻いた卵を奥に寄せ、空いたスペースにまた油を引いて残りの卵液を流し入れる。


 前の卵の下にも少し流し込んでくっつける。


 半熟のところでまた巻く。


 熱々のフライパンから立ち上る、甘く優しい卵の香りが食欲をそっとくすぐる。


 (これを何度か繰り返して形を整えたら完成ね)


 最後に火を止めた後の、静かにジュワジュワと余熱で仕上がっていく小さな音が心地いい。


「わぁ! アリスティア様お上手ですね」


「ありがとう、味見しようか」


「はい!」


 作っていたらお腹が空いてきた。


 目の前にあるふんわりと黄金色に輝き、表面はつやつやで、端の少し焦げた卵焼きを前に、ごくりと。


 クロエと顔を見合わせて頷き合い、少し冷ましてから一口パクっと口に運ぶ。


 優しい甘さと醤油の旨味が、卵のまろやかなコクと一緒に口いっぱいに広がる。


「ん、んっ。甘くてふわふわしてる」


「はい! 噛むととろけるような柔らかさと甘さが絶妙で、舌の上で溶けていくようです」


「よかった」


 私は安堵の息を漏らしながら、卵焼きを焼き続けた。


 卵焼きができたあとは、鶏のからあげ作り。


 冷蔵庫で冷ましておいた鶏肉と下味を混ぜ終えたものを取り出して、水分を軽く拭く。


 その間に油を温める。


 小麦粉と片栗粉を混ぜたものをまぶして、余計な粉を落としてから揚げる。


 鶏肉をそっと入れると、勢いよく油が活発に泡立つ音が響く。


 表面が固まるまでは触らないで待つと、いい感じのきつね色に揚がった。


 もう一度揚げるとさらにサクサクになる。


 一度取り出して油を切って、二度揚げをする。


 熱でパリッと張りつめ、焦げ目がついた美しい褐色のからあげが完成した。


 熱々の油の香ばしさと、鶏肉の旨味が凝縮された肉の匂い、そして、にんにく、生姜、醤油の風味がふわりと立ち上り、鼻の奥をくすぐる。


 揚げ油の良い香りと、ほのかに残る鶏の皮の脂の甘い匂いが混ざり合って、たまらない。


 (味見は大事よね⋯⋯)


 揚げたてをフォークで刺すとサクッと乾いた音が響く。


 歯を立てると、衣がパリパリッと音を立てて、中の肉汁がジュワッと噛むたびに肉汁が溢れ、にんにく醤油の深い味わいが染み渡る。


 味わいながら、ゆっくりと咀嚼して堪能していると、横から視線を感じた。


 クロエが目を輝かせながら私というか、揚げたてのからあげを見ていた。


「クロエもどうぞ」


「ありがとうございます!  アリスティア様」


 美味しそうに食べてくれる姿をみて私も嬉しかった。


 すべて揚げ終わり、冷ましておいた、からあげと卵焼きをお弁当箱に詰めた。


 ――リオン様に喜んでもらえたらいいな。


 怪我なく無事に帰ってきて欲しい。


 明るくなった空を見上げながら、私はお弁当を抱えて、クロエと一緒に城の外へ出た。


 遠征に出る騎士団を見送るために。

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