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虐げられた無能令嬢ですが、公爵様に甘やかされて溺愛されています。~もふもふと美味しいご飯付きで~  作者: 桜ましろ


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第19話 お弁当作り ①

 夜が明けよるように東の空が、薄く明るくなってきた頃、私はベッドからそっと起き上がった。


 枕元でシルフィは丸くなって、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。


 起こさないようにそっとドレスルームに向かい、薄い青のドレスを手に取った。


 軽量で動きやすく、何よりもリオン様の青い瞳の色に近いこの色が好きだ。


 リオン様に喜んでもらいたいから。


 私は料理に支障がない程度に着飾って、髪の毛を1つにまとめた。


 部屋を出る前に一度シルフィの方を振り返る。


 相変わらず気持ち良さそうに眠っていた。


 (いってくるね)


 心の中でそっと呟き、部屋をあとにした。


「おはようございます。アリスティア様」


 厨房を借りる許可は昨日のうちにこっそりと済ましておいた。


 驚く顔がみたくて、リオン様には内緒にしている。


「クロエ、おはよう。夜明け前から手伝ってもらってごめんね」


 一人でなんでもやってきたから、人を使うことには未だに慣れていない。


 それでも、メイドや騎士たちの優しさに触れて、少しずつだけどその温かさを受け入れられるようになってきた。


 きっと私が痛みを我慢して治癒の力を使えば、大勢の人の役に立てる。


 でも私は血を流すのが怖くて、体に傷をつけれない。


 前線で国の民を守る為に、魔物と戦うリオン様や騎士団の皆は血を流すことに躊躇いなんてないだろうに。


 (私はずるくて、卑怯者ね⋯⋯リオン様に公爵家に、貴族としても相応しくないのに)


「これぐらいはお手伝いして当然です!  アリスティア様は閣下の婚約者なんですから、私たちに遠慮なんてしなくていいんですよ!  遠征に行かれる騎士団全員分を作るのでしょう?」


 クロエの明るい声が、私の胸の奥に引っかかっていた想いを、するりと溶かしていく。


 (そうね⋯⋯今は料理を作ることに集中しないと)


 戦う彼らの役に立ちたい。


 ご飯を作ることしか出来ないけど。


 こんな気持ちのまま、下手な料理を作ったらそれこそいい迷惑だ。


 私は大きく深呼吸して気持ちを切り替えた。


「うん。せっかくなら皆さんのお役に立ちたいから」


「それじゃあ、驚くぐらい美味しいご飯作りましょう!!」


 クロエがてきぱきと道具と材料を揃えてくれる。


 今日は遠征初日のお昼用に、鶏のからあげと卵焼きを作ることにした。


 ご飯は現地で調達すると聞いていたが、副団長のシリルにも「むしろ嬉しい」と言われたので、思い切って作ることにした。


 手を洗って、下処理がされている鶏もも肉を手分けして一口大に切る。


 だいたい五センチ角程度の大きさにしていく。


 切り終わった鶏もも肉に下味で醤油、料理酒、みりん、すりおろしたニンニクと生姜、塩を少々いれてよく揉み込んだ。


 (いい感じね⋯⋯冷蔵庫で冷やしてその間に卵焼きを⋯⋯)


「クロエ、リオン様は卵焼き甘めとしょっぱいのどっちが好きだと思う?」


「閣下は今まで食事にあまり興味をお持ちではなかったので、どちらでも⋯⋯アリスティア様が好きな味で作るといいと思いますよ!」


「私が好きなほう?」


「はい!  アリスティア様の好きな味で染めちゃいましょう! 胃袋をしっかり掴みましょう!」


 胃袋を掴まれたのは、餌付けされている私では?


 私は甘めにするか、しょっぱいのにするか迷いながら、卵を手に取った。

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