第17話 銀獣にご飯あげ
完成した幼獣用のお肉を冷まして、ミルクと混ぜ合わせた。
「きゃんっ! きゃうっ!! 」
待ちきれなくなったシルフィは鳴きながら、高速でぐるぐる回りながら、しっぽを振る姿が必死でかわいい。
私は笑いながら、お皿に取り分けて目の前に置いてあげた。
シルフィはもふもふのしっぽを振りながら、パクパクとものすごい勢いで食べだした。
口の周りをミルクで濡らしながら、満足そうな顔をする姿に、思わず頬が緩む。
「おいしい?」
暗い気持ちがどこかに飛んでいくような気がした。
「ふふっ、顔拭いてあげるから、ちょっと待っててって⋯⋯そっちはダメでしょ!!」
シルフィは私の隙をついて他の幼獣用に用意していたご飯に手を出そうとする。
慌てて止めると、リオン様がくすりと笑った。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯飼い主に似るっていうからな」
「っ⋯⋯! 似てません!」
頬を膨らませると、リオン様はますます楽しそうに目を細めた。
「かわいいな⋯⋯」
「ほ、他の子たちもお腹を空かせてるかも知れないので、い、いきますよ! シルフィはゲージで待ってなさい」
私は照れを誤魔化すようにシルフィの顔を濡れたタオルで、丁寧に拭き、ゲージに戻した。
不満そうに「きゃう」と鳴く寂しげな声に、胸が痛むが、しょうがない。
幼獣用のご飯を持って獣舎に戻ると、リオン様も生肉の容器を持ってついてきてくれた。
作業を終えていた騎士たちが、私たちを見て揃って敬礼をした。
「お疲れ様です! 閣下、お嬢様。銀獣たちもご飯を待ちわびてますよ」
「ご苦労。今日も異常はないか?」
「はっ! 異常はございません」
「あとは私たちがやるから下がって良いぞ」
騎士たちは一礼して踵を返した。
騎士たちが退出した後、リオン様と二人で幼獣スペースに入った。
青い瞳をキラキラさせながら、柔らかい毛並みの幼獣たちが足元にまとわりついてくる。
鼻先を押し当てられたり、足をくすぐられたりする感触に、自然と笑みがこぼれた。
「くすぐったいよ⋯⋯ちゃんとご飯あるから、おとなしくしてね」
お皿を一列に並べ、丁寧にご飯を盛り付ける。
幼獣たちは我先にと顔を突っ込み、夢中で食べ始めた。
隣のお皿に手を伸ばそうとする子を優しく誘導したり、食べ終わった子の口周りをタオルで拭いたり、一頭ずつ成長と体調を確認しながら記録を取る。
じゃれついてきたり、顔をペロペロと舐めようとする子もいて、そのたびに胸が温かくなった。
――こんなにたくさんの命に囲まれて、ご飯を作ってあげられるなんて。
幸せな時間だった。
「ご飯はあげ終わったか? ⋯⋯かわいいだろ?」
成獣にご飯をあげ終わったリオン様が私の横に腰を下ろし、聞いてくる。
「はい。かわいくてずっと見ていたくなります」
「どうだ? フリューゲル公爵領もいいところだろ?」
「ええ、気に入りました」
それはよかったと私と同じように幼獣を撫でるリオン様をみて望んでしまう。
この先もここにいたいと。
それでもいつか捨てられてしまうのでは無いかと、不安になってしまう。
――きっと元の暮らしに戻ってしまったら私は耐えられない。




