第9話 馬車での朝食
馬車にリオン様と一緒に乗り込み、私は朝食を受け取った。
朝食は揺れる馬車でも食べやすいように、配慮してくれたのか、新鮮な野菜がたっぷりと挟まれたサンドイッチだった。
ふわふわのパンに、みずみずしいレタス、トマト、キュウリを見るのも、食べるのも久しぶりで、思わず目が輝いてしまった。
「い、いただきます!」
勢いよくかぶりつきたいのを我慢して、ゆっくりと口元に運ぶ。
パンがふんわりと柔らかく、口の中でほどけるように溶ける。
レタスのシャキシャキした歯ごたえと、トマトのじゅわっとした甘みと酸味が絡み合う。
キュウリのパリパリした食感がいい、アクセントになって、噛むたびに新鮮な野菜の香りが口いっぱいに広がった。
(んっ⋯⋯、おいしい)
夢中で食べていると、目の前に座るリオン様と目が合った。
「美味しいか?」
「⋯⋯⋯⋯はい! 」
口の中の物を慌てて飲み込んで答えると、リオン様は柔らかく微笑んだ。
「喜んで貰えて良かった。私が作ったんだ」
「!?」
目を丸くしてリオン様を見つめてしまった。
「魔物討伐の遠征では基本自炊だからな、料理もするぞ。口にあったなら嬉しいが」
「こんなに美味しいサンドイッチ⋯⋯久しぶりに食べました!」
「そうか。またいつでも作ってやるよ」
リオン様は私が馬車に持ち込んだ弓に視線を向けてから、私に視線を戻した。
「アリスは狩りが好きなのか?」
どう答えるべきか、迷ってしまった。
狩りは生きるためにしていたこと。
好きかどうかは、自分でもよく分からない。
「答えたくないなら、無理に答えなくてもいい」
リオン様が少し寂しげに目を細めたのを見て、私は小さく息を吐いた。
「その⋯⋯食べて、生きていく為に、狩りをしていたんで、好きかどうかは⋯⋯正直、分かりません。すみません⋯⋯」
「謝らなくていい。ちゃんと自分の力で生きる手段を持っているアリスは、素晴らしいと思うよ。弓を扱えるようになるまで、相当努力したんだろ?」
「はい。ありがとうございます」
誰かに褒めて褒めてもらえるのも、優ししい言葉をかけてもらえるのも久しぶりだった。
少し頬が熱くなるのを感じながら、残りのサンドイッチも味わいながら食べ続けた。
「アリスは本当に美味しそうに食べてくれるね。北部までは十日程の旅になる。疲れたら遠慮なく言ってくれ。急ぐ必要はないから、途中で立ち寄る村や街でも美味しい物を食べさせてあげるぞ」
「それは⋯⋯楽しみです!」
私は頬を綻ばせながら答えた。
馬車の窓から見える景色も新鮮で、まだ行ったことのない場所や、美味しいご飯が食べられることにとてもわくわくした。




