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85 私、スロットで遊びまーす!!

「こんなのそもそもどうやって遊ぶですか」


「まあこういうのはですね……気長にやっていくもんなんですよ」


 スロット台の前に立ち、残る50枚のコインを投下していく。

 グルグルとリールの絵柄が回転していき、ボタンを押して停止させる。これの繰り返しだ。

 特に変わった操作は必要ない。

 これといって何かできることもない。単純に運のみ。

 しっかしこれで既に現金換算で25万Gも失ったかと思うと、このゲームの闇を感じざるを得ない。

 シンプルにして最凶最悪。当たれば天国外れば地獄だ。

 多分この追い課金50枚もすぐに底をつくだろうから新たに購入しにいかなくては。

 そう思ってずっと回し続けていると、ふと絵柄がゆっくりと動いていることに気がついた。

 あれ……?

 これ目押しできるんじゃね?

 試しにスイカ3つのところでボタンを押してみると、そのままスイカの絵柄で固定されていった。


「おおーっ! コインがジャラジャラ出てきたですよ! 何したですか!」


「あ、ああ。これはスイカの絵柄が揃ったから『勝った』んですよ」


「へー……殴る蹴るだけじゃない『勝負』もあるんでやがりますね」


 うん。ごめんねジーカちゃん。

 絶対きみには不必要な知識だったと思う。

 というか、この道に引き込んじゃダメなタイプだキミは。

 ようやく吸い尽くされた分の1割にも満たない額を吐き出したマシーンを見て、彼女は狂喜乱舞していた。

 スイカの倍率は3倍。

 1回1コインだから3枚の獲得になる。

 これが1/1025とか本当にお客様に勝たせる気がない。

 とんだブラックカジノ。現代なら確率操作してるくじ屋とかいって炎上の嵐に発展してるくらい。

 まあ誰に頼まれるわけでもなく、まして強制でもない自分の意思でコインを投入しているのだからどんな結果になろうと自己責任なのだ。

 ギャンブル系はとりわけここがいやらしい。

 気にせずジャンジャン追加投入していこう。


 一度にせよ連続にせよ、ここで味を占め勝ちに酔うと破滅に繋がりかねないのがカジノの怖いところ。

 ゲームならやる前セーブで電源リセットが常套手段なのだが、人生にリセットボタンなどついていない。

 ほどほどのところで切り上げて別のゲームに行きたいところだ。

 そうしてプレイ再開するとまたさっきのゆっくりとリールが回る現象が起きていた。

 あれ……なんだこれ。

 これまた好きなところで止めれば良いだけ……?

 バグか?

 離れて見ていた時は何もできなかったけど、いざこうして座ってプレイした時だけ見える特殊なシチュエーションだとでも言うのか。

 絵柄を自由に停止させられるのなら、もうここでチマチマとスイカなんぞ得ている場合ではない。

 ここは更なるビッグ・ドリーム、ビッグ・マネーに向けてスロット最大の役である『7』が揃ったタイミングで目押しする。

 スロットが虹色に光り輝き、「congratulations」の文字が表示された。

 ファンファーレが鳴り響くと同時に、大量のコインが流れ落ちる。


「うわーっ! すげーですよこれ! コインザクザクです!」


 ジーカちゃんがいつになく興奮するのもわかる。

 これを実際に当てられた時のプレイヤーの心境ときたら。

 それはもうガッツポーズで飛び上がりたいくらいだ。

 役としては100倍なので100コイン。

 そしてここから「777」を揃えたものだけのボーナスステージが一定時間開放されるのだ。


《フィーバータイムです》


 画面の文字と絵柄が一新し、よりゴージャスな雰囲気を出していた。

 フィーバータイムとは台と状況を問わず「777」を揃えた瞬間に発動する稼ぎ時間。

 フィーバータイム中はコイン消費が一切行われず、さらに全ての役の獲得率が本来の10倍に乗算される。

 あのスイカでさえ30倍に跳ね上がり、777なら1000倍にもなる。

 そんなにずっと続くわけじゃないが、ここで粗方稼ぎ尽くしておけばまた次なる777も拝みやすくなるというわけだ。

 今は何故か目押し時間が続いているしここは活用あるのみだ。

 再び狙うは1000倍の777。

 先程とはまるで異なり、コインを吐き出すマシーンとなったスロットに自然とみんなの頬が緩む。

 1000コインがすごい勢いで吐き出され続けていく。

 楽しい。なんだこれ。

 ついにいよいよ私にも神が舞い降りたか。スロットの神が。


 獲得総額20000コインを超えたあたりで、フィーバータイムが終了し、通常営業となった。

 とりあえずここの狩場はやり尽くした。

 次に向かうは10、いや100コインスロットだ。


「すげー数のコインでやがりますね。これで腹一杯コインが食えるでやがりますね!」


 おのれはスロットマシーンか。

 ずっとこのコインを食べ物だと思っていたのかこの子。

 あぶねー。もう少しで食べられるところだったよ。


「これはあそこの換金所で良いものと交換してもらえるもので、コイン自体は食べられないんですよー」


「良いもの? 美味いメシですか?」


 ジーカちゃんの頭にはもうご飯のことしかないみたいだ。

 カジノでコインを稼いでどうするのか、そんなことをしても1円の得にならないから他の稼ぎをしろ――と2人は両親か一般人のような目つきをしていた。

 それが普通なのだ。それでいい。

 この沼に浸かれば明日はない。

 しかし、もうちょっと稼がせてくれ。

 目標まであと6998万メダル(×人数分)必要なのだ。


「……うん、無理ゲーだね⁉︎」

 今更ながらちょっとコイン設定間違えてやしないか。

 まあいい。100コインといろんなゲームで稼いでいけばいい。

 夢と希望に見せかけた底無しの絶望――100コインスロットに腰をかけ、私は戦いを始めた。

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