78 魔法適正ですか……ってええええ⁉︎
西大陸は暖かい風が吹き抜ける爽やかな空気が流れていた。
オーネスの雪道や山頂のガルガンドラは肌寒かった。
それも感じ方に影響しているのだろうか。
船着場に到着した時、一気に新しい世界が広がったような気がした。
ここは大都市マギアージュによって人の横断が激しい都会のようなものだ。
早速船着場の時点で幻想的な魔法陣が張り巡らされていた。
「あれはなんでやがりますか?」
「魔法陣って言ってな。魔法使いが呪文を唱える時に必要になるものなんだ。で、あれは転移魔法が施された半永久型の魔法陣だ。金を払えばこっちからあっちまでひとっ飛びできるって代物だ」
「……随分と詳しいんだなマックス」
「実はここの出身だからな。マギアージュにはお袋連れて何回か行ったことあるんだ」
「えーっ! 初耳ぃー!」
そう。こんなTHE・戦士オブ戦士、漢の中の漢みたいなマックスさんは、意外にも都会出身者だ。
都会とは言ってもマギアージュに近い小さな町なんだけど。
それでも流石にモノホンの田舎町であるところのミランダさんとは、同じ田舎出身でも天と地ほど差がある。
異様に寒がりなのも、西大陸の温暖気候に慣れ親しんでいたからだろう。
「懐かしいな。あれから結構変わったな」
8年も経てば当然か、とマックスさんは漏らしていた。
16歳にもなれば旅立ちを許されるというのがこの世界の一般常識みたいなものだった。
若き日の彼も勇者スラッシュくんと同じように、世界を夢見て旅した同士なのだ。
今じゃチーム1の年配者(ジーカちゃんを除く)になってしまったが、月日を重ねて蓄えた経験と知識はまだ未熟な若年パーティーの我々にとってはありがたいものである。
反対に年は食ったが、知らないことの多い生まれたての子供みたいなジーカちゃんはあれは何これは何と、目に映るもの全てに対してマックスさんに矢継ぎ早の質問を行っていた。
「あの変な玉は何でやがりますか?」
「あれは魔法球だな。魔法を扱う適正を測ってくれるもんだ。やってみるか?」
私たちは露天商の魔法球に順番に触れてみることにした。
お金は幸い60億もある。
1人500Gくらいなんて事ない出費だった。
まずはジーカちゃんが審査された。
「どーすりゃいいですか?」
「そこの球に手を触れてみなさい」
露天商のおじいさんが説明してくれた。
ジーカちゃんが球に触れると、そこから赤い光が点った。
「ふーむ……お前さんは『火属性』の傾向があるようじゃの。しかし魔法の才能は期待できんじゃろう」
思ったよりハッキリと言ってくるおじいさんだった。
魔法球の『色』で魔法の属性を。
『光』の加減で才能の有無を測っていると見て取れた。
「なんでやがりますか! これ壊れてるですよ」
案の定店主の歯に布着せぬ物言いにカチンときたジーカちゃんが、爪や牙を尖らせて激怒していた。
「ま、まぁまぁ抑えて……」
次に行ったのはマックスさんだった。
どうせ結果はわかってるから行きたくねえと言っていたが、ジーカちゃんが自分より下を見たくて「行け」と圧をかけていた。
そんなんでいいのか……。
戦士適正抜群なマックスさんは、予想されていた通り光は淡く、色も薄かった。
「ふーむ……お前さんは攻撃魔法ではなく、回復魔法に向いているようじゃな。しかし魔法の才能は期待できんじゃろう」
「じーさん。ジーカとどっちが上ですか?」
「んー……まだお前さんの方が才能はあるじゃろう」
それを聞くと「どうだ見たか」と思い切りマックスさんの前でふんぞりかえっていた。
「どんぐりの背比べだろ」
マックスさんの発言はまさしく正論だった。
不毛な争い。
そもそもみんながみんな魔法使いでなくてもいいんだ。
マックスさんにはマックスさんの、ジーカちゃんにはジーカちゃんにしか出来ないお互い個々の役割というのがあるのだ。
そしてチーム唯一の魔法使い職たるレイブンさんは、ご機嫌で手をかざしていた。
「おおお。お前さんは『火』だけでなく『水』や『氷』など複数の属性に適正をもっておるようじゃ。魔法の才能もずば抜けておる」
「やったー!」
辛口店主によるこれまでのボロクソ発言を覆す勢いで怒涛の絶賛コメントだった。
それも頷けるほどの変化であり、魔法球はこれまでになく色鮮やかに光り輝いていた。
ジーカちゃんはとても悔しそうにレイブンさんの頭に噛み付いていた。
いよいよ本命の勇者さんが触れていった。
すると魔法球がこれまでにない程、先刻のレイブンさんのをかき消す勢いで光り輝いていた。
「うおおおお! こ、これはすごい! も、もしやお前さんは世界に類を見ない『光』を操れる伝説の勇者では……?」
「……あぁ。そうだ」
流石は勇者様といったところだ。
余りの眩さに一同の目がちかちかしていた。
それを見て驚いていたレイブンさんに、ジーカちゃんが「どーだ」と言うようにえばっていた。
「ジーカちゃんの結果じゃないのに……」
露天商のおじいさんはとても驚いた様子で勇者くんを撫で回していた。
こんな客見たことないという感じだろう。
勇者なんて滅多に現れないだろうから。
これは露天商の歴史の1ページに刻まれる伝説的瞬間ではないか。
最後に私が魔法球に触れてみる。
どんな結果になるんだろう。楽しみわくわく!
パリィイイン
しかし魔法球は私が触れた瞬間凄まじい音を立ててあり得ない方向に歪んでいき、やがて破裂音と共に砕け散った。
「うわぉあああ‼︎ な、なんという魔力じゃ! これ以上は計測できん‼︎」
さらに余波としてその場で小さな竜巻を発生させていた。
えっ……えー⁉︎ えーっ⁉︎
一同は開いた口が塞がらない状態だった。
私含めて。




