41 私とレイブンさんと……え? レ、レイブンさんちょっと!?
さてさて魔境続きの絶壁の登山道であるが、第四層はまたまたこれまでに無いほどぶっ飛んだ罠満載だった。
まず目に入るのがとてつもなく広い大容量な空間に敷き詰められた赤や青のカラフルなタイルだ。
あれは『カラーパネル』なるもので、踏むとパネルの色が変わり、同じ色のパネルを繋げると道になって進めるようになるのだが、違う色のパネルに飛び乗ると問答無用で一層下の階に叩き落とされるという仕掛けになっている。
これまた頭を使う大胆なトラップになっているのだが、正規ルートを丸暗記している私にとってはこんなもの時間稼ぎにもならない。
まずは右端から青to赤に変化させる。
そして前のパネルに進めるようになり、乗ると今度はこの赤だったパネルが緑に転身する。
順番として右端、前、左、左、前、右下、左上、右下、前、前、右、前だったような気がする。
実際に踏むのもゲームで踏むのも手汗的な意味ではそう大差はない。
コントローラーでのボタン操作が無い分、踏み間違える心配がないのでこっちの方が気持ち的には楽かも。
私に踏まれたパネルたちが色鮮やかな道に変わっていく。
その後ろをなぞるようにレイブンさんがついてくる。
なおこのパズルは先頭参加者しか認識していないため、私が通った道であれば、後列の人間も着いてこれる。
ゲームでもそうだったし。
そんなこんなで踏み間違える事もなく、記憶に思い違いもなく安全かつ迅速にドキドキカラーパネル渡りが終了した。
「ミランダさん、すごいね……まるでこのパズルの答えを知ってたみたいじゃない」
「ははは、まっさかぁ〜たまたまですよ〜たまたま」
「へぇ……たまたまですよね。たまたま」
疑いの募る彼の目線が今は痛い。
そろそろ誤魔化しも効かなくなってきたか。
いやでもこんなの早く解けるに越した事はないし。
第四層これにて攻略!……と言いたいところなのだが、もう一つこの後に越えなければならないボス戦がある。
広大なパネルエリアを超えた先にある扉を開くと、複数の松明に行く手を照らされた空間にたどり着いた。
その先で暗がりの洞窟からじっとこちらを見つめているものがいる。
絶壁の登山道に配置された第二のガーディアンだ。
「グオオオオ!」
黄金の鱗を持つ翼竜――ゴルドワイバーンだ。
売れば高値がつきそうなキンラキンの鱗を見せつけながら、こんな狭い空間では宝の持ち腐れな翼をはためかせ、彼は牙を向けてきた。
いかにも強そうなドラゴン系モンスターだが、暴君にヒドラやその前の隠しエリアマシーンなどと比べると、こいつは一応正規ルートで待ち受けるボスなので、2人パーティーでも倒せるように設定されている。
よって敵では無い。
適正レベル「26」だろうか。
ラッキーダイスではいはい圧殺乙しても良いんだろうけど、せっかくここまで待機してくれているガーディアンくんにも悪いし、鱗剥ぎ取るためにも私は刀で切り刻むことにした。
とか油断してたら開幕黄金竜の火炎攻撃が飛んできた。
一応お守り効果で軽減できているが、熱いものは熱かった。
ぷすぷす頭を実験失敗した科学者みたいにアフロにして、私はカウンターの刀一閃を繰り出した。
暴君さえ切り裂いた攻撃に、今度は日本刀のドラゴン特攻が加わるのだ。
黄金竜はその身を真っ二つに切り裂かれ、即座に絶命した。
「鱗取れるかな……」
なんかすっかり目が金になってそうな金の亡者と化した私は、ひたすらドラゴンさんの死骸から金の鱗を剥ぎ取ろうとした。
しかし何度やっても剥がれそうにないので、丸ごと持って帰る事にした。
肉を切らして鱗を守る、というやつか。
なんか違う気がするがまぁいい。
かくしてガーディアンの消えた広々とした空間で、私たちは少し休憩していくことにした。
今日のランチ、ランチ……? は黄金竜のステーキだ。
レイブンさんがまたいつものように調味料マシマシ、芳醇なステーキソースたっぷりで余った肉を美味しい料理にしてくれた。
「う〜ん美味しいです〜」
肉厚ジューシーなステーキは、噛めば噛むほど濃厚な脂の味がしてきて、舌の上をとろけ落ちていった。
スパイスの良い香りが口に運ぶ手を止められなくなっていた。
流石ボスドラゴンさん。超高級ステーキ顔負けの美味だ。
ガーディアンさんを血肉の糧として、全身からエネルギッシュな活力が湧き上がるような感覚がしてきた。
レイブンさんも自分で作ったステーキを食べていたのだが、私よりもリアクションは薄めだった。
というかむしろ私のリアクションを頬杖して眺めているような……?
なんだろう。まさかまた何かゲテモノを混入させたわけではなかろうな。
道中そんな飯にできそうなやつは…………モグラ?
あんな硬そうなモグラが異物混入してようものなら、すぐに違和感に気づくはずだが。
「なっ、なんですか。レイブンさん……」
私はもう気になって仕方ないので、思い切って聞いてみることにした。
しかしレイブンさんは私の疑問には答えず、突然勢いよく迫ってきて、圧された私が壁を背にすると、その壁に手をついて顔を近づけてきた。
俗に言う『壁ドン』とかいううら若き乙女たちに大人気のプレイなのだが、これは一体どういう意図だろうか……?
唐突な予想外の事態に私があたふたとしていると、彼がゆっくりその口を開いた。
「動くんじゃねぇよ」
いつものほんわかショタボなど微塵も感じさせないほどのイケヴォだった。
徐に差し出された彼の色黒な指が、私の頬を覆い唇を拭った。
「その口、塞ぐぞ……」
えっ? えっ? えっ⁇
えーっ⁉︎
な、何このイベントぉ⁉︎
こんな乙女ゲーみたいな展開、ありましたっけ⁈
なんかレイブンさん、出るゲーム間違えてるんですけど‼︎
童顔イケメンキャラクターになっちゃってますけど!
抵抗もする事ができず、私は彼の言うままなすがままに、目を閉じて身体を預けていった……。




