40 私、謎解きですか!? ※ただし、謎は解かない。
モグラ多し第二層を戦車のようにして越え、やって来た次なるニューエリア・第三層はこれまでとは一風変わったエリアとなっていた。
まず床に砂が撒き散らされており、天井からも絶え間なく垂れ流されている。
この近辺では砂漠に登場するようなサソリ系モンスターを筆頭に、数多くの危険な魔物や冒険者を苦しめるテリトリーが存在する。
まずはこの麻痺地帯ともいえるバリア床だ。
こいつはそのまま越えるには厄介過ぎる特性を秘めたもので、上に乗るとビリビリと痺れるからか、強制的に『麻痺』状態となってしまう。
この床の設置された箇所を避けて通ることも勿論可能だが、その場合ひたすら狭い一本道を、第二層より強力な魔物に襲われながら進んでいくことになる。
誰がなんと言おうと、私はここを通って先へ進む。
バリアの上に足を置き、何回か身動きを取ってみせる。
パチパチっと電気が走ったような感覚が心地いい。
寝たり、座ったり、頬を寄せたりと色んなことができるが、私自身はちっとも麻痺になることはなかった。
それは何を隠そうこのヒドラさんの宝珠による『麻痺攻撃無効』によるものだった。
バリアの上がなんだか面白くて、スケートリンクのようにくるくると暇つぶしに回っていた。
「あのーすみませんー! ミランダさん!」
「えっ? どうかしたんですか?」
「どうかしたのは君の方だから! なんでこんなめちゃくちゃ痺れる罠が張ってあるところに飛び込んで無傷でいられるのさ!」
そうだった忘れてた。
私にとってはなんとも無くても、レイブンさんには痛いんだった。
うーむ。でもどうしよう。
バリアを避けて通るとなると、ここよりはかなり大回りになってしまうんだけど。
……まぁいいか。焦らずじっくり進んでいこう。
麻痺地帯の上で寝ていた私は、ゴロゴロと転がってレイブンさんの元に戻って行った。
「……なんともないんだよ……ね?」
「はい!」
元気よく答えた私に対して、ますます不信感を募らせているような顔つきのレイブンさんだった。
いやまあ装備品のお陰なんですけども。
さっきからのとんでも珍事のせいで私ことミランダさん、人間だと思われてない気がする。
仕方ない。ここまではレイブンさん1人にしか見られてないし大丈夫だろう。
砂漠のトラップ地帯を迂回して進むと、間も無く巨大な壁が聳える行き止まりにたどり着いた。
もちろんここは行き止まりなどではない。
『……ここを通りたくば我の問いかけに答えよ』
目の前の石の壁が突然語りかけてきた。
バリア地帯でダメージを受ける覚悟のなかったものは、ここで扉さんとの問答に付き合わなければならない。
これも設定によれば宝物庫のガーディアンを作ったのと同じ人であるらしい。
私たちがこの先を進む資格のあるものか、また正しい心を備えているものなのかを見極めるためにここに居るという。
えーと。記憶が正しければなんか『砂を集めてなんとせん』とか『一粒の勇気がどうのこうの』とか言ってたような気がする。
で回答が『人のために力を使う』だった。
ここだけは覚えている。そういや毎回バリア避けてたっけな。
壁さんとの長い話はだいぶ抜けてるけど、どの回答を選べばいいのかは分かっていた。
他は全部『自分のために力を使う』みたいな内容だったはずだ。
私は前に立って壁さんとの対話に臨んだ。
『ではゆくぞ。――我時を見つめる者なり。人とは砂を集めて己が力とし、束にして生命を紡ぐ存在である。砂の多くは人を虜にする欲望に満ちている。その中から一粒の勇気を掴み取り、先へ進む資格はあるか。ならば汝に問おう。「力」とはなんのために使うものであるか』
「はい! 『人のために力を使う』です」
私の自信満々な答えを聞いた後、扉は少し黙ってから唸った。
やがて不正解を表すようなブザー音が鳴り響いた。
「えっ? な、なんで⁉︎」
『残念ながら汝の答えは不正解である。罰として我の用意した魔物と戦え』
バカなありえん。
何度もやってきたゲームだぞ?
今更回答を間違えるはずもない。
しかし生きる扉さんの召喚したサンドガーゴイルによって、私たちは戦闘に入ることになった。
仕方ない。
私はモードチェンジで『攻撃力重視』に変化させ、砂の像を一撃で砕いた。
いかに像が硬くとも守備力「400」超えの力を込めた拳は守りきれなかっただろう。
ここに居てもしゃあないので私は近辺でヒントになりそうな物を探っていた。
うっすらと壁の中に文字が浮かび上がっていたので、手で砂埃を払うようにして見つめる。
初見では大抵これを頼りに回答を模索する。
内容は『人のために力を使う』――……うんまんま私が回答したやつだ。
まさか。
『ここを通りたくば我の問いに――』
「『人のために力を使う』です!」
すると今度は扉さんが開き、先へ進めるようになった。
「や、やったねミランダさん。なんとか解けたね」
「う、うん……」
私は確信した。この扉イベント、フラグ回収しないと正解でも通れない系のやつだ。
ぐわあああ面倒くせえええ。
この後まだ3つくらい扉さんいるんだけど……。
第一の扉を抜けた先で再び扉さんが立ちはだかっていた。
ここのフラグって確かめちゃくちゃ面倒だったような。
なんか隣に見える穴から進んで行って、転がる岩とかトゲまみれの床とか越えていった先にフラグヒントがあった気がする。
うぉえ。
久しぶりに面倒なダンジョン構造を思い出して吐き気がしてきた。
どうしよう。もういっそ壊すかこの壁。
『え――ちょっと待て。まだ我の問いかk』
私は罪なき壁さんに向かって渾身のグーパンをぶちまけた。
扉さんは音もなく砕け散って消滅した。
この壁さんとは戦って突破もできるが、なにせ人数の関係で2人でしかやって来れない都合上攻め手も足りず、硬すぎてまともにダメージが入らず、結局すぐに戦闘終了になってしまうのだが、それは通常プレイ時の話。
今の私は拳で世界目指せるミランダさんなのだ。
壁がなんだ。機械やドラゴンがなんだ。
すまんよ罪なき扉さん&製作者さん。
これが若者のダンジョン正攻法なんだ。
そうしてまた再び扉に巡り合ったものの、走る勢いを止めることなくまたまたグーパンの姿勢をとった。
『ここを通りたくばえちょ待――』
勢いに乗った私の無慈悲な鉄拳によってまた一つ、罪なき扉が砂と化していった。
その場で逃げることも敵わず、ただただそこで朽ちるのを棒立ちで待つしかない哀れなダンジョントラップよ。
恨むなら回答性ではなくフラグ性にした開発陣を恨むのだ。
進行中、何度か見るからにやばそうな毒と麻痺攻撃を持っていそうな尻尾のサソリにエンカウントしたが構わず粉砕していった。
「毒」? 「麻痺」?
はいはいワロスワロスですよ。今更。
そういえばこのフロアって正直状態異常と高めなステータスが手強いというだけで、そのうち「麻痺」とかクリアしていれば半減したも同然だったわ。
第三層も危なげなく踏破し、私たちはいよいよ第四層へと足を運んでいくのだった。




