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39 生物兵器・ミランダさん??!

「さーて第二層もゴリゴリ進んでいきますよー」


 困惑と懐疑に満ちた目線を背中に受けて、私はさくさくと穴道進行を続けていた。

 そこら中モグラの掘り進めた穴だらけなのだ。

 うっかりしてると落とし穴のようにずぼりとハマってしまう。

 そんな無防備なところを狙われでもしたら大変危険である。


 第二層はそれ以外でもデコボコとした岩場が歩き難い階層であり、全体的に狭苦しい雰囲気が漂っていた。


 ここ第二層には、実は今しか取れない宝箱が設置されてある隠しフロアが存在する。

 『ガルガンドラ』に到着した後、ここは龍人兵士たちによって封鎖されてしばらく入ってこれなくなるのだ。

 どうにか兵士たちが退いた後は、地殻変動が巻き起こって地盤が沈下し、どういうわけか隠しフロア〝だけ〟入れなくなるという嫌がらせに近い現象が起こる。

 入るならばまさに初回侵入の今この時を除いて他にない。


「えーとこの付近だったかな……?」


 ひたすら壁に向かって手を当てながら進む。

 不自然な出っ張りとかあれば、確かそれが隠しフロアに入るためのスイッチだ。

 やがてゴツゴツした岩壁の中にやたら滑らかな肌触りがするものに巡り合った。これだ。


 よく岩色に塗られてカモフラージュされているように見えるが、これは歴とした人工物(スイッチ)である。

 早速私は力強くそれを上から押さえつけてみる。


 そうするとどこからともなく音が響き、近くの壁が移動を始めた。

 その先には真っ赤な扉があり、これで隠しフロアへの入り口が開かれたのである。


「……よくこんなところ見つけたね」


 えへへ。

 ちなみにこれはゲームでも同じセリフを言われる。

 一度きりのワンチャンス。未開の宝物庫へと今、足を踏み入れていった。


 宝の中身は多分火属性ダメージを40%もカットしてくれるレアアイテム・『炎の勾玉』と、攻撃力95で氷属性ダメージを付与できる大剣『ブリザードバスター』だろう。

 まぁそれも魅力的っちゃ魅力的だが、今回私は宝欲しさに二度と入れないこのフロアに来たのではない。


『ピーピー……侵入者2名、確認シマシタ。戦闘ヲ開始シマスカ?』


『ピーピー。ガードプログラム作動――ガードプログラム作動。コレヨリ外敵カラ宝ヲ守ル為、殲滅システムニ切リ替ワリマス』


 そう。このいかにもファンタジーに似つかわしくないマシン感たっぷりのガードロボット君、『ミサイルマシン』2体だ。

 彼らは設定上では古代龍人族の科学者が、魔法と科学の粋を結集させて作った改造ゴーレムの一種だとかなんとか。

 宝物を欲深い者たちに悪用されぬため、侵入者を迎撃して長年の間宝を守り続けてきたガーディアンだ。


 彼らもこの時限定のエンカウントとなり、このフロアの埋め立てと同時に彼らとの戦闘機会も永久に失われる。

 この『ミサイルマシン』くんは彼らしか使わない特技『ミサイル』をぶっ放してくるので、今回はこれを『覚える』で習得してみたいと思う。


 まずは身の安全のために筋トレを積み、彼らの初撃に備えて『覚える』の体勢に入った。

 ちょっとレイブンさんにも被弾してしまうかもしれないが、そこはうまく避けるかなんとかしてもらおう。


 ミサイルマシンさんの初撃は必ず『ミサイル』ぶっぱだ。

 目の部分に当たると思わしき真っ赤なモノアイが光り、装甲が開くとそこから無数のミサイル爆撃がこちらに目掛けて飛んできた。


 どっかのロボットアニメみたいな光景だったが、これは対象を選ばず敵全体に及ぶ一種の魔法攻撃である。

 属性は恐らく火とか爆発だったように記憶している。

 辺り一面が木っ端微塵になりそうな程の爆撃が巻き起こり、レイブンさんがダメージを受けてしまった。

 が、身のこなしが軽いレイブンさんは、直撃を避けて僅かに被弾したのみであった。


 じっと爆撃を見つめた私が――『覚える』を完了する。

 そしてその『反撃』として、絶対零度の氷河地獄が傷ついた岩場を包み込んだ。


 マシンくんたちもカッチカチに固められてしまい、しばらくはミサイルも移動もできなくなっていた。

 機械系をショートさせるには手っ取り早く『雷魔法』をぶちかませばいいのだが、今回は敢えてそうしなかった。

 氷属性魔法最大の一撃を与えた方が、一気に体力を削れて安全や時間短縮にも繋がると思ったからだ。


 そして氷の淵より解き放つべく、私がついさっき覚えた『ミサイル』を真似してぶっ放す。

 いや普通に考えて私のどこにミサイルが充填されているのか気になるものもいるだろうが、魔法陣から再現して出しているので実際に私の肉体から飛び出しているわけではない。絵的にはそう見えるけども。


 特大氷結攻撃に無数のミサイル爆撃を受けたことで、機械仕掛けのガーディアンたちは瞬く間に沈黙していった。


 もうちょっとミサイルで色々試してみたかったが、倒してしまったのなら仕方ない。

 だがこれは今後も重宝させてもらおう。

 あばよ機械くん。きみたちの意志は私が継ぐ。


 なーんてふざけたことを考えている間に、私は本来はこっちが本命のはずの宝箱に手をかけていた。


 中身は予想通り『炎の勾玉』と『ブリザードバスター』だった。

 勾玉はともかくブリザードバスターは重い大剣なので、戦士マックスさんしか装備できないものだった。

 合流した時にでも渡しておこう。


「よーし。取り返しのつかない回収要素はこんなものかな」


 私たちが隠し部屋から出た時、またまたそこをつけ狙ってきたアイアンモールたちが複数現れた。

 ちょうどいい。次なる実験台は君たちだ。


 私は『アイアンモード』状態で硬くなって丸まる彼らに向けて、ミサイルによる一斉砲撃を開始した。

 属性が付与されている攻撃なのだが、この技に限っては少々事情が特殊で、魔法ではない特技に分類されるためアイアンモールの硬い装甲などなんのそのだった。

 割と苦戦したはずのちょい強敵たちは、最早見る影もなく嘘のように粉砕されていった。


 それでも微かに仕留めきれなかった残敵たちが攻撃してこようものなら、私は早速新特技『モードチェンジ』を試してみる。

 モードは最硬の『守備力重視』。

 全攻撃力を守備力に注ぎ込み、崩れることのないミランダさん牙城要塞が完成した。ミサイルのダメージには攻撃力が参照されないので、遠慮せずにガンガンと使っていける。

 

 そうして攻撃に転じた個体が隙だらけになったところに、今回学習したミサイル爆撃が飛んでくる。

 なんかもう人間じゃ無くて生物兵器か何かみたいだ。


 難攻不落の要塞に、強力な全体攻撃・絨毯爆撃が備わっているのだ。うら若き乙女の見た目をして。

 私だったらそんなの見つけなら絶対全速力で逃げるぞ。


 鬼のような硬さと私の肉体から飛び出る細長い弾で、ほとんど人間辞めかかっていた。

 1人で全部これこなしてるのが、とても信じられないくらいに。


 ようやく相性の良いスキルと特技が手に入った。

 これでボス戦でも雑魚戦でもなんでも来いだ。

 迫り来る敵たちもミサイルでなぎ倒していったことで、私たちは第二層を踏破し、第三層へと向かっていった。

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