↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/117

38 私、ドリル、モードチェンジ

「どうしたんですか、レイブンさん。そんなに顔色を変えて」


「い、いやいやいや。なんかヤバそうなヒドラ一撃で倒しちゃうし! 何なのあれ⁉︎」


「サイコロです!」


「そっかそっかサイコロかぁ〜いやぁそうだったのかぁてなるわけないでしょ⁉︎ ミランダさん本当どうしちゃったの……?」


 私の華麗なヒドラ退治とか色々聞きたいことはあったのだろうが、私はその一切に対して黙秘もしくはとぼけることを決行した。

 当面はこの切り札があればなんとかなりそうだが、あまりにもヌルゲーになってしまわないか心配だ。


 流石に闇の力相手には通用しそうにもないが。

 というかダイスで倒せたらそれはそれでシュール過ぎる。


 魔のモンスター沼をくぐり抜け、登った先は絶壁の登山道・第二層だった。

 第一層と比較すると、若干モンスター自体のレベルも上がっているほか、割と守備力が高めの硬いモンスターが増えるのも特徴的だ。


 第二層歓迎の合図か、早速盛り上がる土がこちらに向かって複数迫ってきた。

 「アイアンモール」だ。

 土の中を移動し、こちらをその鋭い鼻の部分で串刺しにしようとしてくる血気盛んなモグラさんだ。

 一層から続くグループ行動の洗礼だ。

 現れたアイアンモールは計8匹。そのうち全員が「防御モード」に入っている。


 このアイアンモールさんには面白い特性があり、攻撃時には鋭い鼻をドリル状に変化させて襲ってくる「ドリルモード」と、守備時にはそれらを全て頭に収めて硬くなる「アイアンモード」の2種類の形態を使い分けるのだ。


 形態変化に合わせて能力値もごそっと変化し、「ドリルモード」時は元々高い守備力が攻撃力に全て転換し、「アイアンモード」では攻撃力が低くなる。

 ダメージを与えられるチャンスは守備力が全て攻撃力に変わる「ドリルモード」時だが、一斉にドリルで攻撃された後での事なので若干厄介だ。

 先制攻撃されない限りデフォルトで「アイアンモード」なので、物理攻撃はもちろんのこと、魔法攻撃にも高い耐性を持っており、中々硬い装甲が破れない。

 そうして耐えに耐えた後で一転して素早い「ドリルモード」に変化するので、なかなかトリッキーな相手だ。


 守備時は全ての魔法攻撃に高い耐性を持つので、これといった弱点がない。

 それでも諦めずゴリ押しで倒すこともできるが、何度も魔法攻撃していてはMPがもったいない。

 というわけで私、斬りたいと思います。


「レイブンさん補助魔法で『攻撃力強化』ください!」


「えっ、あっ。うん」


 レイブンさんから『攻撃力強化魔法』を受けて、私は鋭い日本刀をモグラに向けて斬りつけた。

 硬いとは言っても所詮は鉄の域を出ない塊。

 私たちはかの負けイベ『暴君』の鎧を相手取ってきたのだ。

 アイアンだろーとドリルだろーとなんてことはない。

 こんなのプリンだプリン。


 そして追撃クリティカルが発動していたようで、更に2匹目のアイアンモールに斬撃が飛ぶ。

 なお対象が既に倒された場合もこの追撃は発動し、その際は生き残っている敵の誰かを狙うという優れた追尾性となっている。


 仲間が一瞬で蒸発していったというのに、相変わらず彼らの大部分は「アイアンモード」を崩さず、ただひたすら防御の姿勢を取っていた。

 彼らがいつ攻撃と防御にモードチェンジするかは分からない。

 気まぐれな生き物なのだ。

 その証拠に全員が防御一点張りの姿勢という訳でもなく、群れのうち1名だけはこちらにドリルを尖らせて襲ってきた。


「痛っ!」


 ダメージでいったら多分24ポイントくらい受けた。

 確信はないけどそんな感じの裂傷だったと思う。

 肩からどくどくと血が滲んでくる。

 そして再設定し直すのを忘れていた『反撃(カウンター)』は、またしても刀による一撃だった。

 無慈悲な刀の軌跡が、鉄のモグラをバッタバッタと斬り伏せていく。

 さらにカウンターにも追撃クリティカルが発生し、早くも合計4体のモグラが刀の錆となった。


 流石にこれはまずいと判断したのか、残された彼らは徐々にモードチェンジしていった。

 刀での切れ味はよくわかった。

 次は魔法攻撃の効きでも試してみるか。


「『絶対零度』」


 周囲に氷の渦が舞い上がり、床一面を白銀の世界に変化させていった。

 円形に広がる絶対零度の氷に触れていったモグラたちは、一瞬でその身を凍らせてしまった。

 しかし派手な演出の割に威力はそれほどでもなかったようで、微かに「アイアンモード」であった彼らには充分耐えられる一撃のなってしまった。


 続いて形態変化を完了させたドリル戦隊による一斉攻撃が、私の身を貫こうとする。

 ――が、4回のうち1回はスキル効果によって刀で弾き返すことに成功し、どうにか致命傷に至らずに済んだ。


 そして4回分の攻撃に合わせて『反撃』を1体1体に突き刺していった。


 今回は割と痛みを覚える展開だった。

 どうにか勝利できた私は、自身に『小回復魔法』でお疲れ様をした。

 モグラのドリルで受けた傷が塞がっていく感覚がする。

 痛みが引いて、私はまた元気よく歩き出すことができた。


 やっぱり集団で囲まれた時のために「絶対零度」を『反撃』として設定しておこう。

 というか魔法2回使えばもっと楽に倒せたかもしれない。

 あー……もう。こうなると剣での攻撃にもレパートリーが欲しくなるなぁ。

 後でマックスさんと合流した時にでも心得を聞いておくか。



 しばらくエンカウントもなく、穴だらけの二層を練り歩いていると、植えてから6時間も経たずしてようやく箱庭の中の防御力ドーピングアイテムが実をつけていった。


 5つしか植えてなかった「ガードメディスン」が一気に150個にも増えてやがる。

 こんな短時間で30倍も増殖してるとかこの畑大丈夫か?

 なにか人には言えないようなやばい農薬とか投与されてないだろうな。

 不安そうに庭を見つめる私に、妖精さんは「きちんと天然物ですよ」と自信たっぷりに答えてくれた。

 妖精さん自身のレベルアップも影響してると言っていたが、まさかこれほどとは。

 薬草の妖精恐るべし。


 とりあえず100個ほど回収し、残る50個を畑に埋めた。

 そんでこれ次増えるとしたら……1500個?

 ひええええっ!

 そんだけ食べたらもうなんか、全身メタル合金人間になりそうだ。


 まぁまずは大奮発で100個、いってみるぞー!

 わーい。絵面は完全に薬の暴飲してるやばい人だー!

 バラバラと白いお薬(※ドーピングアイテムです)をお口の中に放り込み、一気にそれらを噛み砕いた。

 なんか、この手のドーピングアイテムの中ではまあまあ食べやすい部類に入るのではないだろうか。

 ラムネとチョコミントに歯磨き粉の香りを付着させたような、不思議な爽やかさを口内に残す味わいだ。


 さてさて一気に100個も防御力の塊を摂取して、私はなんだか体全体が上部になってきたような感覚に襲われた。


 なんか防御力のステータスが「471」とかになってるし。

 ちなみに装備品効果で+35だから、裸で436もあるということになる。

 おいおい……。ストーリー後半でもまず見ないぞこの防御力。

 カッチカチになった私は、再びモグラの大群によるドリル攻撃をお見舞いされたが、さっきみたいな痛みは全然ない。

 ていうか硬くて鋭いもんぶっ刺されたはずなのに、なんの感覚もない。

 むしろ刺したモグラさんの方が怯んじゃってるし。

 これでとりあえず二層のモンスターからの攻撃は受け付けないぞ。


 何故ならこの二層で一番攻撃力の高いモンスターが、このアイアンモール・ドリルモードなのだから。

 ボコスカ土の中より現れる怪物を薙ぎ払っていると、なにやら新しい特技を習得したようだ。



【特技を習得しました】


モードチェンジ

効果:自身の守備力と攻撃力を合計させ、どちらか好きな方に全て振り切ることができる(要戦闘中のみ)


備考:再度モードチェンジを行えば、元のステータスに戻る。効果が発揮されるのは戦闘中のみであり、モードチェンジしたまま戦闘を終了しても、次の戦闘では元に戻っている。



 な、なにぃーっ‼︎

 私もついにミランダ・クロスフィールド・「日本刀モード」と「アイアンモード」とかできちゃうのか!


 しかしこの特技は諸刃の剣である。

 攻守移行のタイミングを見誤ると、自分が手痛いダメージを受けることになりかねない。

 とはいえ、守備力を攻撃力に変換するのではなく、攻守スイッチ可能というところに魅力を感じたい。

 耐えたい場合は全部守備力に振り切って防御でもしてればいいだけだから。

 おあつらえ向きにも今の私には毒のブレスもある。

 毒状態にした後守備モードにチェンジして耐える、なんて戦法もとうとう可能になったのだ。


 くー。だがこれを物理攻撃に活かせるポイントも捨てがたい……。


 一刻も早くマックスさんと合流したいものだ。

 逸る私の後ろ姿を、レイブンさんは何故かじっと見ていた。

 なんだろうと思って背中から下をさすってみると、先程のモグラが私の尻に突き刺ったままだったのだ。


 痛みや刺さってる感覚すらなかったため、全く気が付かなかった。

 これは恥ずかしい。

 そそくさと毛皮のコートを引っ張ってモグラさんの死体を床に落とす。



「……いや、痛く……ないんですか……?」


 

 なんだかレイブンさんからどんどん化け物扱いされてるような気がしてならないが、気にせずどぅんどぅん進んでいこうじゃないか。

 うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。